Kingdom last heir第9話


その出来事があった任務とは、南側に出没する野盗を討伐だった。

しかしその野盗と戦闘中に彼はその時と同じ様に奇襲攻撃をされてしまい

その攻撃によって片目を塞がれてしまう事になったからである。

以来、そのトラウマもあって卑怯な手を使って挑んで来る人間を絶対に許す事が

出来ず、もし卑怯な手を使って来たらその王城での事件の様に滅多打ちにされて

しまうのは王国騎士団の中でも1つのタブーとして広く知られている事だった。


そんな3人が貧民街の酒場で食事を摂っていると、意外な来客が酒場に現れた。

「……あれっ?」

現れたのは何と第1騎士団団長のグラカス・リレデバルドともう1人……

本来彼とは一緒に居る筈が無い、紫色の髪の毛に大きな斧を背負った騎士団員の姿が。

「お、こんな所で会うとは奇遇だなぁ!」

そのままズカズカとレフナス達の居る丸テーブルまでやって来たグラカスともう1人の騎士団員は

どっかりと席に座る。


しかしそれをロクウィンが小さい声でなだめる。

「おい、勘弁してくれないか」

「え?」

「そっちも聞いているだろ。しかもメリラ団長から直に! 今日!」

「あっ……」

そこでようやく自分達の迂闊さを悟った様で、グラカスが非常に気まずい顔になる。

そんなグラカスに対して口を開いたのはもう1人の騎士だった。

「待て待て、今ここで俺達が慌てたら逆に怪しまれるだろう。俺達も食事して、

ここから一緒に出てその後別れれば良いだろ」

「あ、ああそうだな。ならバリスディの作戦で行くとするか」


そう言えばそうだった……と凄くしどろもどろになりかけているグラカスに

提案をしたこの騎士は、グラカスの最大のライバルである第2騎士団長エリフィルの

副官を勤めている第2騎士団副団長、バリスディ・ノーヴァダインだった。

この男も例に漏れず貴族出身だが、貴族らしからぬそのノリの良さで貧民や平民と言った

貴族以外からの人気がとても高い事で知られている。

どうやらこの性格は彼の両親譲りらしく、両親もまたノリの良い気さくな人物として貴族

連中の間では有名な存在になっていた。そんな両親に育てられた彼は長男として

家を継ぐのも継がないのも自由と言う両親の宣言もあって、家の事は1人いる弟に任せて

自分は気ままに騎士団の仕事を続けている。


あっけらかんとした所もあり、多少の失敗やミスや叱責等でへこたれる事は無く、どちらかと

言えば「まぁいっか」で済ませてしまう様なタイプの人間である。

良く言えばポジティブ、悪く言えば大雑把でその性格が彼の戦い方にも十分に出ている。

自分の武器である大斧を豪快に振り回し、向かって来る敵を力任せになぎ払う典型的な

パワースタイル。だから無闇に相手は突っ込む事が出来ず、タイミングを窺っている内に

やられてしまうのが良くある事らしい。

それからメリラと同じく魔法も使う事が出来るので、大斧を振り回しながら詠唱をして魔法で

隙を埋めると言うのが大得意パターンである。第1騎士団副騎士団長の副団長である

ヒーヴォリーが弓で後方支援をし、バリスディは前衛に回ると言うコンビネーションも戦場では

見る事が出来るらしい。


「な、何故お2人がここに……?」

ボソボソと小さな声で尋ねるレフナスに、グラカスが気まずそうに答える。

「あ、ええと……今日はちょっと巡回のルートを変えてみたんです……。

その時にバリスディとばったり会いまして。それで少し小腹が空いたのでここに立ち寄ったんですよ」

「……そうですか、分かりました。私達はまだ視察が残っていますから、王城へ帰るのは

もう少し遅くなるかと」

「はい。くれぐれもお気をつけ下さい、陛下」


そうしてレフナス達と一緒に食事を摂ったグラカスとバリスディは、なるべく自然に

レフナス達と別れて再び巡回へと戻る。

「ちっ、まずったな」

「まーいいさ、気にするこたーねぇよ」

ちなみに現在ヒーヴォリーは執務作業中で、エリフィルは見習い騎士達の馬術の

特別教官に行っているらしい。

と言う訳でそれぞれ巡回に回っていたグラカスとバリスディがばったり貧民街で出会った。

しかしこの後、この珍しいコンビの2人に思いもよらない展開が!!


Kingdom last heir第10話へ

HPGサイドへ戻る