Kingdom last heir第7話
最後にアーロスが総隊長、セフリスが副総隊長を勤める魔導師部隊は
この王国の象徴とも言える組織と言っても過言では無い。
先人の貴族達がこの国を興した時から重要視されて来た魔導と言う
この世界の生活から護身術まで幅広くカバーするその技術を使って
鉄道と言う新時代の乗り物を実現したのがこのシュア王国であった。
そのシュア王国から延びている鉄道は当然シュア王国内からスタートし、そのまま
バーレン皇国へと西へ伸びて行く。そこから今度は更に西のイディリークへと
線路が延びて行き、そこからヴィーンラディを通って北と西へ2つに分かれて曲がる。
最後に北へ曲がった線路がアーエリヴァを通ってファルスを経由し、シュア王国へと
戻って来るこの世界の主要な交通手段の1つになっているのだ。
この鉄道による恩恵は大きく、このテクノロジーを生み出したシュアの魔導師達は
一気に世界中にその名前が知られる事になっただけで無く大きくシュア王国の
経済の発展に貢献する事になった。
何故なら人間だけで無く様々な貨物を列車によって大量に輸出入する事が
出来る様になったし、線路や駅の拡大や整備等によって国内の事業に雇用を
増やす事が出来る様にもなったからである。それから他国からの物資の輸送や
人間の輸送等によって貿易も盛んに行われる様になったので一気に魔導によって
シュア王国がこうして発展したのであった。
今では最初に1本しか無かったそのレールが今では全ての国を合わせて合計で50本
以上になり、田舎町までレールが通っている所も出て来る様になった。
ただしデメリットも存在しており、山や川等を潰して新たにレールを敷く事がこれ以上
難しくなっている他に、そうした場所では山であれば馬や徒歩、川であれば船を使う方が
機動性が良い事もあって、その辺りの需要と供給のバランスは今の所上手く行っている様である。
それでもこの鉄道を利用する人間は多く、シュア王国に入ってくる人間も多いので駅の入り口で
騎士団が張り込んで検問を行う事が日常の光景になっている。
王都にも勿論駅があり、最初に出来たヘルヴァナール鉄道の駅と言うだけあって毎日多くの人間が
出入りしている為に警備も他の駅とは比較にならない程厳重な物だ。
第3騎士団の人間が厳重なチェックを行うだけあって、不振人物や不審な物等は即座に回収
されたり取り調べを厳しく受ける事になる。
こうして発展して来たシュア王国の人間にとって、魔法王国と言う別名がついている事からも
分かる通りこの国と魔法は切っても切れない関係になっている。
騎士団の人間も大抵は魔法が使える者で構成されているのだが、別に魔法が使えなくても
問題は無い。そもそもこの世界の人間の体内には元々魔力があり、その魔力を使って
自分の攻撃力をアップさせたりする事がまるで息をするかの様に出来る様に訓練を受けるので
それだけ出来れば後は試験に合格する事で騎士団員として活動が可能になる。
騎士団での配属に関しては本人の希望で第1騎士団に配属されるか第2騎士団に配属
されるかが決まるが、絶対にその希望が通る訳では無いので例えば第1騎士団への入団希望が
多ければその分定員オーバーになった人間が、ランダムに第2騎士団の各部隊へと振り分けられる。
この様に人々の生活が成り立っているシュア王国ではあるが、やはり人間が多ければ多い程治安が
悪化する可能性も高くなる。勿論騎士団でも必ず1日に朝、昼、夜と見回りを行っていたり
治安が悪くなりがちな貧民街にはなるべく多くの人員を配置したりと言う対策を取っている。
それでもどうしても犯罪は日々起きているので、その解決に奔走するのが騎士団の役目だ。
それを当然レフナスも耳にして入るので、今回お忍びで城下町を見て回る事にしたのである。
「それではまず貧民街から向かいましょう。民衆の不満を聞いて回りたい所です」
事前に打ち合わせをしてルートを決めているので、3人はまず貧民街へと向かった。