Kingdom last heir第6話


いよいよ準備が出来たレフナスは、フードを目深に被って余り顔を見られない様に

しながらメリラ、そして第2騎士団副騎士団長のロクウィンと一緒に城下町へと繰り出す事になった。

「なるべく私達の傍から離れません様に」

「ああ、分かってる」

メリラに念を押されつつ、レフナスはいよいよ城下へと繰り出す。ルートとしては

まず貧民街を回ってそのまま平民街へと行き、最後に貴族街へと回って

王城へと戻って来る。

城下町へとお忍びで出る事に関してはこれまでも何回かやって来ているのだが、

やはり王族なのでそうしたきな臭い事が無いとも限らないし命を狙われないとも限らない。

なので護衛はきちんとつける様にして、今回もいざ出発だ。


この王国の騎士団が特殊だと言われる所以(ゆえん)、それは騎士団員全員が

貴族出身者で構成されている事である。そもそもこの王国自体の成り立ちが、

隣国であるバーレン皇国から流れて来た貴族達によって興された物だからだ。

なので貴族達が実権を握る様になったのは当然と言えば当然の事であり、結果として

300年以上建国から経った今でも貴族が実権を握っている。

その中で決められたルールの1つが、騎士団には貴族出身の者しか入る事が

出来ないと言う物である。勿論貧民街や平民街がある様に、貴族出身以外の人間も

300年以上経った今では生活する様になっているが、その先祖を辿ってみると他国からの

移民ばかり。だからこそ、貴族達は全て生粋のシュア王国生まれシュア王国育ち。


そうなった経緯で騎士団を立ち上げたのも貴族ばかりなので自然とその貴族の子弟達が

代々騎士団を受け継いで行く存在になっているのだ。

当然グラカスもエリフィルもヒーヴォリーもメリラも、それから魔導師部隊も騎士団の一部隊と

して活動しているのでアーロスもセフリスも貴族出身。

それも見方を変えれば、貴族同士での小競り合い等はあるにしても貴族しか居ないが為に

上手く騎士団の中では調和が取れていると言う事になるのであろう。


そしてグラカスが団長を務める第1騎士団、エリフィルが団長の第2騎士団、最後に今回

レフナスに同行するメリラが団長、ロクウィンが副団長の第3騎士団と騎士団が3つに

分かれている理由もきちんとある。

その理由は騎士団によって管轄する地域が違うのだ。

まずグラカス率いる第1騎士団。これは地図上においてファルス方面である北側のユルルード地方を

管轄する騎士団であり、今回のグラカス達が殲滅した盗賊はそのユルルード地方で暴れ回っていたので

管轄担当の第1騎士団が討伐に向かったのである。


次にエリフィル率いる第2騎士団については、地図上の南側のマリストウィン地方を管轄する騎士団で

あるのだがどちらかと言えば南と言うよりも西の隣国であるバーレン皇国側から流れ込んで来る

不法入国者や盗賊等の監視や処罰を担当する組織だ。

貧しい者が多いバーレン皇国側からこのシュア王国に入国し、名前を挙げようとしたり出稼ぎに

来る人間は年々後を絶たないのでその入国管理が主な仕事ではあるが、グラカス達第1騎士団と

同じ様に犯罪を犯す様な連中から王国の治安を守る事も重要な任務の1つだ。


最後にメリラとロクウィンがそれぞれ団長と副団長と勤めている第3騎士団についてだが、

この騎士団は第1と第2からそれぞれ生え抜きのエリートを集めて構成されているいわば

花形部署と言って良い存在になる。

決して第1騎士団と第2騎士団のレベルが低い訳では無いのだが、それ等2つの騎士団から

エリートのみを選抜して引き抜かれたこの第3騎士団の任務は王都と王城、そして王族の

治安維持と護衛が主な任務となる。たまに第1騎士団や第2騎士団の任務に第3騎士団の

部隊が助っ人として行く事もあるが、基本的に王都に滞在している騎士団なので王都に

やって来る様々な人間達の入門の手続きをしたり、王都に居る人間も少なくは無いので

その人間達による争いを止めたりと言った事を日々行っている。


Kingdom last heir第7話へ

HPGサイドへ戻る