Kingdom last heir第5話


そんな会話が食堂でなされている頃、シュア王国の若き国王である

レフナス・ジェノドールは城下町へと向かう準備を進めていた。

前王である彼の父が病死してしまった事を切っ掛けに、一人っ子であった彼は

僅か15歳と言う若さで王位につく事になった。

勿論その時に彼には不安があったし、自分がこんな早くに王になって良いのかと言う

疑問がグルグルと頭の中を駆け巡っていた。

それでも、このシュアと言う300年以上続く王国をこれから先の時代で担って

行かなければならないのは自分しか居ない。それが王族の元に生まれた自分の

運命であると受け入れる覚悟をしたのが王位について1ヵ月後だった。


それからと言うもの、帝王学から始まる色々な勉学に励むと同時に

武術の腕も磨いて来た。しかしどうやら彼には武術の素質は無かった様で、未だに

簡単な体術しか出来ないのが悩みでもある。その代わり、体内に蓄積されている魔力が

多かったので魔導の勉強や成績に関しては御付きの教師も目を見張っていた。

なので武術は最低限に、その代わり良い所を伸ばすと言う方針で育てられた彼は即位してから

今年で9年。23歳になり、一国を引っ張る王としてなかなか頑張っている。

今では王としての貫禄も若いながらついて来たらしく、周りから彼を見る目が変わって来た。


「陛下、準備は宜しいですか?」

「ええ、私は大丈夫ですよ」

そんなレフナスに声をかけて来たのは、このシュア王国の宰相であるアルバス・エルクベルクだった。

「城下町を見て回るだけですから。すぐに戻って来ますよ」

「ええ、それで宜しくお願いします。城の事は私に任せて下さい」

宰相として活躍している彼は、何処かフランクな話し方が特徴的なのだが元々の性格が

そう言う性格であり、周囲のムードメーカー的存在として知られている。

勿論宰相としてレフナスを積極的にサポートしてはいるが、宰相としての威厳は余り

見られないのがマイナスポイントだとの周囲からの評価だった。


そんなマイナスポイントに関しては彼は全然気にしておらず、レフナスからの評価としては

何でも気軽に相談できる存在だとして高い物だった。

そのフランクな性格が逆に相談しやすさを生み、例えば政策に関して考え付いた物をレフナスが

アルバスに進言してみたり、余り回りに打ち明けられない様な悩みをアルバスに相談してみたりと

何だか兄弟の様な感じになってもいる。

実際の所、アルバスはレフナスよりも12歳年上の35歳だがレフナスが王位についた時から

宰相として活動している。言うなれば一緒に慣れないポジションの仕事を頑張って来た

戦友みたいな存在だ。


実はそれ以外にも、たまにレフナスの模擬戦の相手として鍛錬場で一緒に鍛錬する姿も

目撃される事がある。何故なら彼もまた武器術や体術を習得している。更に言えばその武器術に

関しては王国騎士団の物をベースにして自分流にアレンジしている半自己流のテクニックになっている為、

予想もしない所から反撃を食らったりする事もあるので対戦相手は気が気で無いと言うらしい。

逆に魔導に関しては全く使えないので、魔法国家の別名を持つシュア王国では浮いた存在になっている。

しかしその魔導が全く使えないと言うことを逆に利用し、レフナスの魔導に武器で対抗する術をアルバスが、

そして一方のレフナスがアルバスに対して武器相手の魔導の攻撃と防御のテクニックを磨くのに丁度良いと

言う結果オーライな事になっているので何だか皮肉な物である。


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