Kingdom last heir第4話


自室に戻ったグラカスは、そのまま制服を脱いで私服に着替える。

実際の所自分の家はあるのだが帰る事は滅多に無い。

と言うかこれは何も自分に限った事では無く、騎士団の人間なら

見習い騎士も含めて99パーセントの人間が城、もしくは城の近くに

ある騎士団の宿舎で生活している。グラカスも見習い時代からずっと

城で生活しており、実家に帰るのは年に2回か多くても3回位だった。

食事も城の中に存在している食堂で魚料理から肉料理、サラダに

飲み物まで色々なメニューが味わえる大きな場所があるし、城下町で

食事をする者の方が少なかったりする。


グラカスもまた、そんな食堂を愛する人間の1人であった。これは見習い

騎士時代から変わってはおらず、騎士団の人間が利用するとあって安くて

量も多い。味に関してはその分城下町のレストラン等より質が落ちるのは否めないが。

それでも食べられない味では全然無いので、翌日グラカスは騎士団の食堂へと向かう。

(今日は何にするかな……やっぱ肉かな)

そう思いながらワイワイガヤガヤと騎士団員や魔導師達でごった返す食堂へ向かい、

朝食を摂る為に食券を買う事に。


するとそこで2人の男と1人の女に出会う事が出来た。

「おや、グラカス将軍ではないか」

「おはようございます」

「あら、おはよう。今日は肉料理なのね」

まず1人目は白い髪の毛を肩位まで伸ばし、黄緑のローブを羽織っている魔導師部隊の

総隊長であるアーロス・リラレッツ。

2人目はアーロスと同じく魔導師部隊所属で、アーロスの副官でもある魔導師部隊

副総隊長のセフリス・ソディラー。オレンジ色の髪をうなじ辺りまで伸ばしている。

最後は眼鏡をかけている女で、若干きつそうな顔立ちとセミロングの緑の髪が

特徴的な第3騎士団団長のメリラ・サーリュヴェルだ。


「聞いたわよ、北の盗賊団を壊滅させたんだってね」

「あいつ等は本当にタチの悪い連中だったからな、俺達も行けば良かったかな」

「ともあれ、私達もこれで一安心だ」

それぞれが口を揃えて盗賊団を壊滅させた事についての話題を出す。

その話題を振られて、グラカスは自分のした事に誇りを持っているのか自信満々な顔つきになった。

「はっは、俺達第1騎士団があんな奴等に負ける訳ねーだろーがよ!! 余裕余裕!!」

自信たっぷりの顔つきで総宣言するグラカスに、ふとこんな事を思い出したアーロスが聞いてみる。

「なぁそう言えばさ、今日レフナス陛下はどちらにいらっしゃるんだ?」

「ああ、後でお忍びで城下町へ行くって言ってたわよ」


そのメリラの答えを聞いたグラカスの顔が変わる。

「へぇ、何でまた?」

「城下町の様子を見たいんですって。勿論私とロクウィンもついて行くけどね」

「でもそれってお忍びじゃなくねぇ?」

メリラにそう問い掛けたが、平然とした顔つきでグラカスにメリラはこう返した。

「外で活躍するあなた達とは違って、私やロクウィンはほとんど城の中に居て外に出ないから

城下町でも全くと言って良い程顔が知られていないわ。だから大丈夫」

「そう言えばそうだな」

それを聞いていたセフリスも頷いて安心した顔つきになる。


しかし、そんな中でグラカスは心のどこかで引っかかりを感じていた。

(確かにそうだ。だが……何なんだ、この不安感は!?)

メリラやロクウィンが居れば大丈夫だろうと言う根拠は確かにある。だがそれでも、今のグラカスに

とってはどうしても得体の知れない嫌な気配を拭い去る事が出来ない。

「分かったよ。だけど油断は禁物だぜ」

「任せておいてよ!! 私だって伊達に第3騎士団の団長を務めている訳じゃないわ!!」

胸を張って宣言するメリラを見て、今は何とかその不安を解消しようとするグラカスだった。


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