Kingdom last heir第3話


だが、そんなグラカスの事を快く思っていない人間はやはり多い。

そしてそんな人間は彼のすぐ身近な場所にも存在している。

「おや、グラカス団長では無いか」

「……何か用かよ?」

「いいや、ただ私もここを通り掛かっただけだ」

騎士団の同じ真っ赤な制服の上着を着込んで、腰にはロングソードを

ぶら下げている茶髪の優男風の男が前から歩いて来た。


「それはそうと、今回の活躍は見事だったな、いや、感心感心」

パチパチと拍手をするその男だったが、グラカスはキッと彼を強い眼差しで

睨み付けながら言葉を吐き出す。

「だったら、俺の剣術の方にも感心して貰いたいもんだなぁ?」

腰のロングソードの柄に手をかけつつグラカスはそう言うが、茶髪の男は

至って平然とした口調で返す。

「今は身体を休めておけ。疲労が取れたらまた勝負しようではないか」

「ちっ……」

何だかムカつくが、そう言われてみると最もであるとグラカスは舌打ちをしながら

ロングソードの柄から手を離して茶髪の男の横を通り過ぎる。


そんなグラカスを茶髪の男は何処か冷めた目つきで見ているが、これはいつもの事だ。

「その余裕綽々(しゃくしゃく)な態度が気にいらねぇんだよ、エリフィル」

「私も君のその振る舞いの粗暴さには頭を痛めているよ」

余裕ぶった口調でエリフィルと呼ばれた茶髪の騎士も歩き出し、お互いが背中を向けて

正反対の方向に歩き去って行く。このエリフィルという男もまた、この様にグラカスの

振る舞いには頭を痛めている1人であった。

エリフィルはこれからグラカスとは違い、丁度昼休みを終えて午後の執務へと向かう。


このエリフィル・エルフレッドと言う男は、実はグラカスとは騎士団の門を同時に叩いた同期である。

また家柄に関してもグラカスと同じくこの王国を建国した貴族の末裔の1人であり、その事から

騎士学校時代から何かと、家柄や武術の腕等で比べられる事が多々あった事から強烈な

ライバル意識が2人の間には存在している。

ただ、グラカスと決定的に違う所は振る舞いにも貴族らしさが見られると言う点であろうか。

たたずまいはもちろんの事、適度に伸ばした柔らかそうな茶髪に温和そうな顔立ち、そして

その顔立ちのイメージ通りに物腰が柔らかく、礼儀正しい事で評判が高い人柄だ。

彼が率いるのは第2騎士団であるが、別に団長同士でそりが余りあわないとは言え

グラカスが率いる第1騎士団とは対立状態にあると言う訳では無い。


しかし、何かと騎士学校時代から比べられて来た彼にも闘争心は確かに存在しており、

エリフィルもまたグラカスに負けじと様々な活躍をして来たり訓練で好成績を収めたりと

言う様に確実に実績を残して実力を上げ、5年前の27歳の時に騎士団長に昇進。

32歳になった今では第2騎士団を引っ張る存在として欠かせない。

性格もグラカスとは正反対なのだが、その性格からか武器の扱いも正反対の傾向がある。

彼の武器の扱い方は丁寧さが売りとなっており、荒っぽい使い方で武器を壊す確率が

高いグラカスとは違ってエリフィルの武器は長持ちするのが騎士団員達の間では知られている。


それから荒削りなグラカスの動きとはこれまた正反対で、武器の扱い方が丁寧ならばその

戦い方も基本に忠実で丁寧であり、結果的にその丁寧さが動きに優雅さと気品を生み出すと

言う効果に繋がっている。

そんな団長2人のそりの合わなさは騎士団員達だけでは無く、城下町の人間にも

知られている事もあって2人が一緒に行動する事を見た人間の方が圧倒的に少ない。

たまに合同訓練等を行ったりもする事がある以上一緒に行動せざるを得ない時もあったりするのだが、

裏を返せばそう言った場面でしか2人が一緒に居る所を見る事が出来ないと言う訳だ。


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