Kingdom last heir第2話


そうして1週間後、王都に帰還して来た第1騎士団員達を民衆が出迎える。

いわゆる凱旋と言う奴だった。多くの人々が出迎えており、口々に騎士団の

名前やグラカス、ヒーヴォリーの名前を叫ぶ姿があちらこちらで確認出来る。

グラカスはその先頭を進みながら、そのまま王城へと向けて今回の任務の

結果報告を自分の主君にする為に軽い足取りで馬を進めて行く。

シュア王国の首都コーニエルは王国のトレードカラーであるオレンジを基調としており、

なるべく目に優しい薄いオレンジ色で城も建設されていた。


そんなオレンジ色のブラハード城に帰還した第1騎士団長グラカスは馬を降り、

そのまま1人で謁見の間に向かった。

そうして一際大きくて豪華な扉の前で、右胸に手を当てて頭を垂れながら

扉の両側に立っている兵士2人に扉を開けて貰う。

「顔を上げてこちらへ」

「はっ」

若い男の声がその扉の先に広がっている謁見の間に響き渡り、その声に応じて

グラカスも短く返事を返して頭を上げて進み出す。


赤い絨毯の上を歩いて行き、貴族や他の騎士団員達が見守る中で

グラカスは自分の主君の前でもう1度右胸に手を当て、片膝を折って頭を垂れる。

「顔を上げて下さい」

その声に従って顔を上げたグラカスの視線の先には、紫色の頭をしている若い男が

玉座に姿勢良く座っていた。

「まずは任務お疲れ様でした、グラカス将軍」

「ありがとうございます」

「では、任務の報告をして下さい」

「はっ、それでは申し上げます。今回我が国のユルルード地方に潜伏しておりました

大規模な盗賊団の討伐につきましてですが、今回の遠征の結果無事に殲滅完了致しました。

盗賊団長につきましても俺が自ら討伐致しました」

「こちらの被害の方は?」

「1000人の軍勢の内、負傷者が144人。その誰もが軽傷でしたので被害としてはほぼ

無い物と考えて頂いて宜しいかと」


その報告を聞いて、自然と国王の顔に笑みが浮かんだ。

「そうですか、それは無事で何よりでした。それでは皆さんも御疲れの様ですからゆっくりと各自

身体を休める様に伝えて下さい」

「はっ、ありがとうございます」

国王の気遣いを受け取ったグラカスは頭をもう1度垂れた後にそのまま立ち上がって踵を返し、

謁見の間を後にする。そしてそのまま詰め所で待機させていた部下達に国王からのメッセージを

伝えて自分も国王の指示通りに休む事にした。

そんなグラカスはふあーと背伸びをしながら城の回廊を渡り、自分の執務室兼自室として

使用している部屋へと向かう。


グラカス・リレデバルドはシュア王国を建国した貴族達の1つの出身。その末裔として知られている

彼ではあるが、実に貴族らしくない振る舞いをする事でも有名な人物だ。

金髪を逆立たせてワイルドさをアピールしていると言えば聞こえは良いのだが、優雅では無いと

言う理由で余り貴族達からの評判は良くない。しかも問題なのは彼自身のその性格にもある。

一言で言えば熱血で直情的なのだが、その反面騎士としての礼儀作法を余り持ち合わせていないと

言う問題点があった。実際の所、国王と会話する時にも一人称が「俺」であったりする等その片鱗が

ちょこちょこ見え隠れするのが実状だ。

だが、そんな彼でもやはりこの30歳と言う若さで騎士団長を勤めているだけの事はあるので、

その活躍があって見逃されていると言う事である。


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