Kingdom last heir第18話


エリフィルが待っていたのは、木を隠すなら森の中と言う事で

人通りの多い駅の中の人が寄り付かなさそうな物陰であった。

「どうだった?」

「君の言う通りだった。あの男は人気の無い建物に入って行ったぞ」

「やっぱりか……」

合流したエリフィルの結果報告に納得するグラカスだったが、まだ説明

されていない他の2人は納得出来ない。

「こっちにも説明してくれ」

「何でその情報屋の情報が怪しいと分かったんだ?」


それに対してエリフィルはこう答えた。

「情報屋って言うのは常に最新の情報が命だろう? 色々な所を駆け巡って、

自分の足で情報を手に入れてそれを売って金に換える。だから陛下が誘拐

された事は情報屋にとっては大きな稼ぎ時だった筈なんだ。だが……」

「だが?」

一旦言葉を切ったエリフィルに、急かす様にセフリスがオウム返しをした。

「だが、それだったら腑に落ちない部分がある。その情報屋は犯人グループの場所を

突き止めたと言ってあの倉庫を場所に指定して来た。だけど私達がレフナス陛下の

捜索を進めた後に受けた報告は、この王都内で何処にもそんなアジトの形跡が

見当たらなかったと言う事だった。元々あの倉庫は廃墟になっていて身を隠すには

うってつけの場所だったろうが、もしアジトになっていた場合にはそれなりに生活感が

出ている筈だ。だけどまだレフナス陛下が誘拐されて昨日の今日の段階だし、それを

考えてみるとあそこをいきなりアジトにして身を隠すのには無理があるだろうと感じた」


そこで一旦言葉を切り、今度はグラカスが説明を引き継いだ。

「あの爆発事件があった倉庫で、それなりに生活観を出している様な跡があったんだが

何だか急ごしらえの様な気がした。そこで俺は思った。これは恐らく罠の一環として、俺達を

あそこの倉庫におびき寄せて全員爆殺する予定だったんじゃないかと」

そのグラカスの予想にロクウィンが手を挙げる。

「仮にそうだったとして、何故グラカスとエリフィルは巻き込まれなかったんだ?」

「それは分からないが……俺等はそいつと繋がっている訳じゃないからそこだけは安心してくれ。

何らかの手違いがあったのかもしれないな」


そこまで言うと、ふとグラカスがこんな質問をロクウィンとセフリスにぶつける。

「そう言えば、御前等2人が追いかけた上にいきなり襲い掛かって来たその2人……そいつ等は

倉庫のすぐ近くで怪しい行動をしていたんだってな?」

「ああ。そしてこっちの姿を見つけた瞬間に逃げ出した。生かしておけば良かったな、すまない」

謝るロクウィンにエリフィルがブンブンと手を振って気にするなとジェスチャーをした。

「いきなり襲われたならそれも想定内だろうし仕方無い。でもその話は私は初耳だからもっと聞かせてくれ」

「その2人なんだけど……」

ロクウィンとセフリスはその2人を路地の行き止まりまで追い詰めていきなりバトルになった事、

死体になった2人からは何も手がかりが見つからなかった事をエリフィルに話した。


そんな3人の会話を聞いていて、グラカスがポツリとこんな一言を。

「その内の1人は恐らく俺等が酒場で逃がしちまった奴だな。だけどその2人が倉庫の傍から逃げ出したと

ほぼ同時に爆発が起こったんだったら、その2人も爆発事件に関与している可能性が高いだろうな。

でも無ければ倉庫の近くでそんなあからさまに怪しい行動を取るなんて事もしねーだろうし、何より

御前等に襲い掛かって来たってーのが状況証拠として有力だ」

「成る程な。それとメリラ団長達が受けた爆発についての個人的な予想だが、火薬を固めて爆弾を

作るまでは良いんだが……その後に魔導式を組み込む事によって時限装置を作り出す事が出来る。

もしかすると……そう言った事が出来る奴も居るのかも知れない」

そこまでセフリスが言うと、腕組みを解いてグラカスがグルグルと肩を回しながらエリフィルに頼み出す。

「うっしゃ、それじゃあその情報屋の男が入って行ったって場所まで案内してくれ、エリフィル」

「行く気か?」

「そうだ。ここで話し込んでいても始まらない。一気に乗り込むぜ!」

エリフィルの問いかけにグラカスは元気良く応じ、3人はエリフィルに道案内を任せる事にした。


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