Kingdom last heir第17話


ロクウィンは素早い眼鏡の男の動きになかなかの苦戦を強いられていた。

短剣はリーチこそ圧倒的に槍にかなわないが、その分軽くて小さいので

そこを利用した戦い方を上手くして来る。

更にこの男の場合は二刀流なので片方を弾いてもすぐにもう片方の

短剣が追って来る。

(ちっ!!)

更に意外とこの眼鏡の男は体力もある様で、結構手数を出して来ているものの

余り息を切らせていない。このままじゃまずい……何とかしなければと思っていた

ロクウィンだったが、その劣勢はあっと言う間に次の瞬間覆される。


「うぐう!?」

いきなり眼鏡の男の後ろから何者かの腕がにゅっと伸びて来て彼の首を羽交い絞めにし、

その首に思いっ切り3回連続で短剣の刃を突き立てた。

「ぐふっ……」

男は奇妙な呻き声を漏らし、そのまま動かなくなって地面に崩れ落ちた。

「無事か、ロクウィン!」

「あっ、ああ……ありがとう」

先に赤毛の男を殺したセフリスが、劣勢に追い込まれているロクウィンを見つけてすぐさま

加勢に来たのだ。


「正々堂々も良いけど、今はそんな事も言ってられない。倉庫に戻る前にこの男達の

持ち物に何か手がかりが無いか探してみよう」

「ああ、だけど向こうも気になるから手短に済ませるぞ」

「勿論だ」

そうしてバトルも終了し、衣服を漁った結果は……。

「何も無しか! こんな事なら生かしておくべきだったな」

「そうだな……でも今更悔やんだってしょうがない。とにかく倉庫へ急ぐぞ!!」

「分かった!」

ロクウィンにセフリスも同意し、2人は一旦倉庫へと戻る事にした。


倉庫に戻った2人は、まずいの一番に2階へと行ったメリラ達の様子を確認しようと

急ぎ足で階段を上って行く。

しかしそんな階段を上り切った2人の目の前に現れたのは意外な人物だった。

「御前等何処行ってたんだ?」

「えっ、何でここに……?」

「メリラ団長とアーロスとバリスディならとっくに城へと部下が運んだぜ?」

「そ、そうか……なら良いんだが……何故ここに居るんだ、グラカス?」


目の前から腰に手を当てつつ歩いて来たのは、ここに居る筈の無い男である第1騎士団団長の

グラカス・リレデバルドだった。

「酒場に行ったんじゃなかったのか?」

「ああ、そうだったんだが色々あってな……。こっちに向かって来ていたら途中でここが爆発するのが

見えたんで、急いで駆けつけたんだ」

ロクウィンにそう言うグラカスに、今度はセフリスが1つの疑問をぶつける。

「そう言えばエリフィル団長は? 一緒じゃないのか?」

「それも含めてこれから歩きながら話す。俺について来てくれないか」

「……?」

歩きながらと言うフレーズに疑問を覚えたロクウィンとセフリスだったが、もうここでの問題は収束

した様なので素直にグラカスの後について行く事にした。


「……尾行?」

まさかの単語がグラカスの口から出て来た。

「ああ。その酒場での乱闘があって、その後に出会った奴が情報屋だったんだけど……」

あの後、2人に声をかけて来たのは顔に大きな傷を持っているオレンジ頭の中年の男だった。

その男は情報屋であると名乗り、レフナス達を誘拐したグループの情報を提供すると言う事に

ついて多額の料金を提示して来た。

それをグラカスとエリフィルはポケットからお互いに札束を出して、まずは手付金と言う事で

情報を教えて貰う事に。


「で、その時に教えて貰ったのがあの倉庫だったんだが……俺の直感が示していたんだ。

こいつは何か怪しい気がするってな」

「それでエリフィル団長が尾行を?」

「そう言う事だ」

倉庫をアジトにしているんだったらそれはおかしいぞ、とグラカスは思ったので情報の信憑性は薄くなる。

だったらきな臭い香りがプンプンするので、一旦素直に倉庫に向かったと見せかけてエリフィルに尾行を

して貰う事にし、自分だけがこうして倉庫までやって来てメリラ達が爆発に巻き込まれた所を遠くから

発見したと言う訳であった。


「エリフィルとは事前に待ち合わせ場所を決めてある。そこで待ち合わせして、そこからの行動を

みんなで決める事にしようぜ」

だけど、そんな提案をされている2人にはまだ疑問に思う事があった。

「それは良いんだけど……何でその情報屋が怪しいって思ったんだ? 多分勘だけじゃ無いだろう?」

そのロクウィンの疑問に、グラカスは若干言葉を濁す。

「あー、それもじゃあエリフィルから説明して貰うか。あいつはどっちかって言えば

俺と違って理屈で物事を考える頭脳派だからな」

グラカスがそうぼやきながら、3人は合流ポイントへと向かうのであった。


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