Kingdom last heir第15話


「あそこの廃墟はもう調べた筈だが?」

「それでも、私は何か怪しい臭いがしたわ。もう1度調べてみるべきよ」

もう1度同じ場所へと行くのを渋るセフリスに、力強い口調でメリラは進言する。

「だけど荒っぽい奴等が出入りしてるってだけじゃあ……」

第2騎士団副騎士団長のバリスディも乗り気では無さそうだ。

「それなんだけど、私が追いかけていたその赤毛の男って前に何処かで見た

気がするのよ。それも2,3日前とかそう言うレベルじゃなくて、ついさっき……の

様なそんな感じがしたわ」


「分かった、なら部隊を動かすとしよう。ただし余り人員も動かせないから最小限にな」

そのヒーヴォリーの一言で第1騎士団と第2騎士団、更には第3騎士団に魔導師部隊の

全ての騎士団から最小限……と言っても4つ全てを合わせて20人位の部隊が編成される。

その中にはメリラ、ロクウィン、アーロス、セフリス、バリスディ、ヒーヴォリーも含まれる。

「グラカス団長とエリフィル団長が戻って来ましたらお伝えしておきます」

「お願いします!」

捜索の指揮は自分が執ると言うのでアルバスに任せる事にして、メリラを筆頭にして

再びあの路地裏先の倉庫へと合同チームが向かって行った。


「……あそこだな?」

「ええ、間違い無いわ。行きましょう!」

事は急げとばかりにメリラを先頭に倉庫へと突入した集団は、なかなかこの広い倉庫を

なるべく音を立てずにしらみつぶしにもう1度調べ始める。

しかし先程の男は一体何処へ行ってしまったのだろう? と思う位に静けさが騎士団員達を襲う。

「そっちはどう?」

「駄目だ、誰も居ない」

「まだ2階を見てないから私が行ってみるわ!」

「それじゃあ一緒に行く」

メリラとバリスディとアーロスはそのまま2階へと上がって行き、ロクウィンとセフリスは下へと残る。


アーロス・リラレッツは今年34歳になった中堅魔導師。

彼は元々生まれつき魔力が周りの人間よりも約3倍位多かったのが特徴であり、まさに

魔導師になる為に生まれて来た様な男と言って差し支えは無いだろう。

本人もそれを自覚してからは魔導師になる事に人生の全てを捧げて来た。

自分の魔力が高ければ、それを仕事に活かせるかも知れないと考えひたすらに魔法の

勉強と実践を繰り返して来た彼は、そのまま17歳の時に魔導師部隊に入隊しその能力の

高さで数々の功績を打ち立てて来た。

しかし、それが彼をまたメリラと同じく傲慢な性格にしてしまった一因でもあった。

27歳の若さで魔導士部隊の総隊長に就任してからは、その名に恥じないべく部下の統率や

後進の育成等をしていたのだったが、無茶な試験等をさせる事も多く脱落して行くものも少なくは

無かった。この時点でリーダーとしての資質が無いとのレッテルを貼られそうになった彼だったが、

ある時部下が一斉にストライキを起こして彼が1人孤立する事件が起こってしまう。

それを身を持って知った彼は自分の傲慢さを抑えて部下を気遣う様になり、結果として

考えを改める切っ掛けになったと言う訳だった。


そんなアーロスと一緒にバリスディとメリラは2階の部屋を他の部下達と一緒に捜索していたが、

一番奥の広間にその3人が踏み込んだ時、突然入り口のドアがバタンと閉まった。

「えっ!?」

「な!?」

「誰だ、おい、開けろ!!」

しかし幾ら叫んでもドアを引っ張っても押してもびくともしない。

そして次の瞬間、3人の背後がカッと強い光に包まれるのであった。


「……ん?」

「どうした?」

「いや……ちょっと気になる事があるんだ」

メリラ達が2階へ上って行った少し後に、入り口付近に戻って来ていたセフリスは違和感を覚える。

そのセフリスの様子に気がついたロクウィンが、建物の外へと出て行くセフリスを追いかけて一緒に外へ。

「おい、どうしたんだ?」

「視線を感じたんだ。それもただの視線じゃない。不気味な気配と言うか、その……」

「お前がそう言う事を言うのも珍しいな」


基本的に自分から意見を言ったり何かを提案したりする事は少ないので、妙な事を言い出す事も

あるもんだとロクウィンは驚きながらもセフリスの後を追いかけて行く。

すると、倉庫のそばに人影が2つ隠れる様にして立っているのを発見した。

「おい、そこで何を……」

しかしそこまでセフリスが言いかけた瞬間、後ろの倉庫の2階が爆発した!!

「えっ!?」

「何っ!?」

思わずロクウィンとセフリスが後ろを振り向いた瞬間、その2つの人影が走り去って行くのが

人影の方に向き直ったセフリスの目に映った。


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