Kingdom last heir第14話
それを見つけたのは全くの偶然だった。
「……?」
城下町で引き続きレフナスの捜索に当たっていたメリラだったが、
その途中で1人の男とすれ違った時に背中がゾクッとしたのである。
(何かしら、あの人……)
それは長年活動して来た、いわば騎士団員としての直感で
半信半疑でもあったが凄く違和感を覚えた男が1人。後ろから見る限り
背はそこまで高くない。髪の色はちょっと長めの赤で、赤いコートを羽織って
赤いロングボウを背負っているので全身赤ずくめと言った方が良いだろう。
しかし、前に1度どこかで出会った気がしないでも無い。
(気になるわね)
メリラは多少間隔を取ってその男を尾行する事にした。
その男を尾行しながら、何処かで出会った事が無いか必死に記憶を
手繰り寄せていると突然誰かに肩を掴まれる。
「!?」
咄嗟に肩を掴まれた方向へ振り向くと、そこには見覚えのある人物達が。
「メリラ団長、何してるの?」
声をかけて来たのは魔導士部隊の隊長アーロスと副隊長セフリスだった。
肩を掴んでいるアーロスの手を掴み返しながら、小声で今尾行をしている事を
手短に告げる。
「分かった。だったら何か分かったら教えてくれ。部下達を動かせる手筈は整えておく」
「頼むわよ」
「気をつけてな」
アーロスとセフリスと別れて再び尾行を開始する。今のやり取りで多少距離が開いて
しまったがまだまだ後ろ姿を確認出来る位置だ。
そのまま男を追いかけて行くと、彼はすっと路地裏へと入って行く。
(きな臭いわ)
路地裏と言えば襲われる可能性が高い所なので、何時でも武器を抜ける様にして
用心しながら更に尾行を続ける。
だがそんなメリラの予想に反して特に襲われる事も無く、男は路地裏をスタスタと進んで行く。
(何処へ向かってるのかしら?)
この先には確か……とメリラが思っていると、予想通りと言うべきかその場所へと辿り着く。
そこは平民街の路地裏に存在している、荒くれ物達が溜まり場にしていると騎士団の中でも
摘発を繰り返しているがイタチごっこ状態の廃墟となっている比較的大きな倉庫だった。
(あそこの連中か……でも何だろう、この違和感は?)
また近い内に摘発をする予定ではいたのだが、今はレフナスを探す事が先だと言う事で
ここは後回しにする予定だった。事実、1度ここにも騎士団の部下達が捜索に訪れて
報告までしているのだがレフナスは見つかっていない。
それでもメリラは、何処か心の中で引っかかりを感じずには居られなかった。
(とにかく一旦戻ろう。部隊を連れてここの捜索をもう1度してみる事にしましょうか)
メリラは気付かれない様にそそくさと路地裏から退散し、一旦城へと戻る事にした。
メリラがそんな行動を取っている時、その倉庫の中では乾いた音が響いていた。
「おらっ!!」
思いっ切り平手打ちをかまして来た男に成す術も無く頬を張られ、地面へと倒れ込む
紫頭のこの国の国王、レフナスの姿があった。
「ぐあっ!!」
「やると言え! 言わなければ今度は目玉を抉り出してやっても良いんだぜ?」
大型のナイフをレフナスの顔の前にちらつかせながら、オレンジ色の髪の毛をした男が
凄みをきかせてレフナスに詰め寄る。
「私は……本当に知らないし知っていたとしても貴方達みたいな人間に教える気は無い!!」
「……そうか」
だったらこうしよう、とそのオレンジ頭の斜め後ろでその会話を聞いていた茶髪に茶色い目をした
若い男が床に転がったレフナスの左手の指を握り、全力で人差し指の骨をへし折った。
「ぐああああむぐぅぅぅぅう!?」
激痛にのた打ち回りながら叫び声を上げたレフナスだったが、余り叫ばれるとまずいのか
オレンジ頭の男が口を手で塞ぎながらニタァといやらしく笑う。
「ほらほら、素直にやるって言わないからこうなるんだぜ?」
「拒否する度に1本ずつ折ってやる。それが嫌なら協力して貰おう」
それでもレフナスは首を横に振った。
「だ、れが……やるもんか!!」
その答えを聞いたオレンジ頭の男は茶髪の男にアゴで指示を出し、指示を出された男が
今度はレフナスの右手の中指をへし折る。
「うぐぅぅぅううああああっぐむぅぅ!?」
「なかなか頑張るな。何処まで耐えられるのか見てみるのも面白そうだけど」
レフナスが苦しむ様子を見ながら、心底楽しそうにオレンジ頭の男は呟くのであった。