Kingdom last heir第12話


「ここで間違い無いんだな?」

「ああ、部下の話によればここに情報屋がこの所出入りしているらしい」

グラカスとエリフィルの2人は平民街寄りの貧民街の外れにある、寂れて

目立たなさ過ぎる1件の酒場の前に立っていた。

一体どうやって経営を保っているのかと言うのが不思議な所だが、今は

それよりもその情報屋の事を尋ねてここまでわざわざやって来たのだ。

しかし、エリフィルは1つだけ不安な事があった。

(私達、この格好のままで良いんだろうか?)

事は急げとこうして酒場まで足を運んで来てしまった訳だが、周りを

見渡してみても余りガラの良く無さそうな場所であるし、ここはやっぱり

私服に着替えてから来た方が……。


そうグラカスに進言しようとしたエリフィルだったが、気がついてみれば

彼はすでに酒場の入り口のドアに手をかけていた。

「お、おいグラカス!?」

慌てて彼を止めようとしたがすでに遅かった様で、グラカスは派手に酒場の

ドアを半ば突き破る様な勢いで押し開けていた。

その後ろからエリフィルも入ってみると、酒場の中にはいかにもガラの悪そうな

連中が一斉にこちらに良くない視線を向けてテーブルに座っていたり壁に

もたれかかったりしていた。


「何だぁ、御前等?」

中央の大きなテーブルに据わっている1人の男が2人の騎士団員に問い掛ける。

炎の様に燃えていそうな赤毛、更にその瞳も赤な上に赤を基調とした服を身に

纏っている事から凄く赤と言うカラーがイメージに残りやすい男であった。

どうやらこの男がこの酒場の中でたむろしている連中のリーダー格の様だ。

そして、その男の横に座っている眼鏡をかけた黄色い髪の毛に黄色を基調とした

上着と言う、まさに黄色がトレードカラーの痩せ身の男が口を開いた。

「この人達って騎士団の人間じゃないのか? その制服……」

「そう言えばそうだな。騎士団がこんな場所に何の様だよ?」


眼鏡の男も赤毛の男もあからさまに敵意を剥き出しにするが、そんな視線を何とも

思わずにいけしゃあしゃあとグラカスは口を開いた。

「この酒場に来てるって言う情報屋に会いたい。居るんなら出して貰うぜ?」

「情報屋? 知らねぇよ」

すっごく不機嫌そうに赤毛の男は答えるが、グラカスは動物的な直感でその男の

言っている事が違うと感じていた。

「そうか、なら質問を変えるぞ。城下町で俺達の主君であるレフナス陛下が誘拐

されちまった。誰か不審な人物を見かけたとか、そう言う事があれば教えてくれ」

「何、僕達を疑ってるの?」


眼鏡の男も不機嫌に聞き返し、いよいよ酒場の雰囲気が悪くなって行く。

「そうは言ってねーだろーが。だが、何かを知ってて隠しているんなら話は別だぜ?

俺達だって酒を呑みにここに来てる訳じゃねーんだよ」

「おいグラカス、余り挑発するな!」

我慢出来ずにエリフィルがグラカスの肩を掴んで止めるが、その前に赤毛の男が

ますます不機嫌そうな口調で椅子から立ち上がって来た。

「はっ、その言い方だと俺達が疑われているみたいだな。わりーけど話す事なんか

これっぽっちもねぇんだ、とっとと失せろよ」

その言葉を皮切りに1人の酒場の男が短剣をちらつかせながら2人を追い出そうと

グラカスの肩に手を掛けたが、グラカスはその男の顔面を思いっ切り殴り飛ばした。


殴り飛ばされた男は少し宙に浮いて吹っ飛びながら、派手にテーブルの1つを

破壊して気を失った。

「な、何してんだよあんた!!」

眼鏡の男がいきり立つが、そんな態度にもグラカスは平然と答えた。

「何って正当防衛だぜ? あんな物騒な物をちらつかせて来られたら……なぁ?」

「てめぇ……騎士団だからって何やっても良いとか思ってんじゃねーぞぉ!?」

髪や服だけで無く顔まで真っ赤にして怒鳴る赤毛の男の声と同時に、今度は

手斧を持って1人の男が襲い掛かって来た。

だがその男に反応したのはグラカスでは無く、彼の後ろに控えていたエリフィルであった!!


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