Kingdom last heir第11話


「とにかく、陛下が見つかるまでは絶対に城門を開放してはなりません。

少しでも不自然な点を見つけたら各自で情報を共有して行きましょう」

うなだれるそれぞれの騎士団長と副騎士団長、そして魔導士部隊の

総隊長と副総隊長を前にして、執務室の椅子に座っている宰相の

アルバスは最大限の冷静な口調でそう指示を出す。

「メリラ団長、ロクウィン副長、その誘拐した犯人達の顔や服装を見ましたか?」

とにかく何か手掛かりを集めようと、少しでも新たな情報を求めてアルバスは

護衛としてついていった2人の騎士団員に尋ねる。


しかし2人の答えは芳しく無かった。

「いいえ……服装は全く……顔も見る前にもう馬車の中に居ましたから無理でした」

「犯人達の人数も正確な所までは分かっていません」

「では、その時にぶつかって来たその引ったくりとの関係が犯人達にある、と言うのは?」

質問を変えて来たアルバスだったが、またしても2人の表情は曇ったままであった。

「本人は関係無いと言い張っておりますが、あのタイミングの良さからするとどうしても

関係が無いとは言い切れないと思います。恐らく計画的な犯行かと」

「ふむ……」


椅子に座ったまま考え込むアルバスに、ある1つの疑問が浮かぶ。

「そう言えば、犯人達からの要求みたいな物は?」

「それも今の所は全く。犯人達が何故陛下を誘拐したのか目的も不明です」

「ふうむ、となれば誰が何の目的で陛下を連れ去ったのかと言う事全てが一切

今の所不明か……」

あの後逃げた馬車を追いかけて行った騎士団員達だったが、目撃情報を辿って

行ってみると王都の外れで馬車が消し炭になって発見された。馬が繋がれて

居なかったのを見ると恐らく犯人達は馬に乗って逃走を図った物と推測される。


「馬車を燃やしたのは恐らく証拠隠滅を図る為か。ならば後は地道に聞き込みですね。

馬を借りた人間が居ないかどうか、馬を連れてもしくは馬に乗ってこの王都に入って来た

人間がここ数日居なかったかどうか。それから馬車が燃やされていた辺りでの不審人物の

目撃情報等があれば良いのですが」

とにもかくにも、まずは犯人グループに繋がる手掛かりを探さなければレフナスに近付く事が

出来ないだろうと考えて騎士団員達はアルバス指導の元に行動を開始する。


だがその捜査に関しても困難を極めていた。

馬に乗って王都に出入りする人間は日々何十人、何十頭と居る為にここから絞り込んで

行くのは時間がかなり掛かりそうである。それから不審人物の目撃情報に関しても

不気味な程何も無いのが気になる所でだった。

「くそっ、これじゃあお手上げだぜ!!」

会議室に集まったそれぞれの騎士団長と副騎士団長の中で、グラカスが心底悔しそうに

ダンッと拳でテーブルを叩いた。

だがその隣で腕を組んで何かを考え込んでいたエリフィルが、弾かれた様に顔を上げたかと

思うと突然こんな事を言い出した。

「そう言えば、酒場には情報屋が居るって話だったな。私達が尋ねた時は丁度留守だったけど

もう1度その情報屋の元を尋ねてみようと思う」


「情報屋?」

心底不思議そうに尋ねるメリラだったが、それに答えたのはエリフィルの副官のバリスディだった。

「あー、そう言えばそんな奴の噂なら聞いた事がある。滅多に人前に出て来ないって言う幻の情報屋で、

シュア王国だけじゃ無くて世界中を股にかけているって話だ。丁度酒場に居るんだったら今すぐにでも

会いに行った方が良いんじゃねえのかな? ただし、法外な料金を吹っ掛けられるって話だ」

「それでも行くぜ!!」

もしその情報屋に会う事が出来たら何かレフナスの居場所に繋がるヒントが手に入るかもしれない。

金なら騎士団には腐る程ある。幾らでも積んでやるから、レフナスに関する情報を1つでも手に

入れるのが今の自分達の任務だと考えて、反目しあっていたグラカスとエリフィルがコンビを組んで

酒場の情報屋の元へと向かうのであった。


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