Future World Battle第3部第28話
その情報屋の話が本当だとしたら、マドックやニコラスを始めとして移住して来た人間達にも
当然知らされていないトップシークレットの事実が、このヴェハールシティの地下に眠っているのだと言う事になる。
(と言う事は、爆薬を大量に保管している理由は……!!)
その核ミサイルの開発と保管に使っている施設に続くコンクリートを爆破し、そして核ミサイルを各国に
売り捌いてしまえばそれだけで巨万の富を得る事が出来る。
そこまでマドックが考えた時、遠くの方からサイレンの音が聞こえて来た。
「……来たか……」
サイレンが聞こえて来る方向に目を向けると、段々とそのサイレンの主が大きくなって来るのがマドックの目にも見えた。
だがそのサイレンの主……マスタングのパトカーは近くでサイレンを消してショッピングモールの近くで停車。
そのマスタングのドライバーズシートから、自分の相棒であるニコラスが降りて来て取りあえずマドックは一安心。
「結構早かったな、ニコラス」
「ああ、かなり飛ばして来たからな。応援のSWAT部隊はもう少し掛かるらしいから、それまではここでまだ待機だ」
「分かった」
頷いたマドックは、もう1度端末を使ってショッピングモールの廃墟となっている建物の中の様子を
ホログラムでスキャンしながらニコラスに見せる。
「……連絡は受けていたが、改めて見てみるとやはり多いな」
「ああ。だからこちらもSWAT部隊と一緒に突入して一気に叩き潰す作戦だ。だが……中に爆薬が
大量に保管されているとなれば銃撃戦はなるべく避ける様にした方が良いと思う」
「そうだな」
爆薬に銃弾が当たったりでもしたら、ショッピングモールの建物ごと自分達も吹っ飛んでしまう。
それだけは何としてでも避けたいので、SWAT部隊にも白兵戦を重視する作戦で行くぞと
事前にマドックが連絡しておいた。
こう言う所で早め早めの対応をしてくれるのは、冷静で頭の回転が早いマドックならではだと
ニコラスは自分の相棒に改めて感心した。
そしてSWAT部隊もサイレンを鳴らす事無く現場に辿り着き、いよいよ作戦開始。
「事前に俺が連絡した通り、この建物の中には爆薬が沢山だ。敵が撃って来る場所であれば安全な筈だから
撃ち返せ。だがそれ以外の所では白兵戦に徹しろ。ニコラスも突っ走り過ぎるなよ?」
「分かってるよ」
そうニコラスが返答して、ギルドの2人を先頭にヴェハールシティポリスはなるべく音を立てない様にして
ショッピングモール制圧に向けて建物の中へと進んで行く。
警察が踏み込んで来たのはすぐにショッピングモール全体に伝わり、警察と犯罪組織の間で
白兵戦や銃撃戦が勃発する。
それでも大勢のSWAT部隊で乗り込んで来ただけあり、順調に上のフロアへと進み敵達を
制圧して行くヴェハールシティポリスだったが、2階に設置されている吹き抜けのホールまで来た時に事件は起きた。
「……ニコラス」
「ああ、気配がするな」
長年の経験と勘、特にニコラスの動物的な野生の勘でここはヤバイと確信する。
だがそのヤバイと確信した次の瞬間、ニコラスとマドックの掛けているモノクルのゴーグルに
何十個もの熱反応が浮かび上がった。
「……皆、退避だ!!」
そのマドックの叫び声と共に、叫んだ本人も含めて一斉に安全な場所へと逃げ込むヴェハールシティポリス。
でも吹き抜けのホールで廃墟となっている場所ともあり、壁や柱も解体途中で中途半端だった為に
隠れる場所が見当たらなかったのが運の尽き。
ギルドの2人は何とか近くの柱の影へと転がり込んだが、その後ろに控えていたSWAT部隊のおよそ
90パーセントが吹き抜けの中の暗闇に潜んでいた敵チームの一斉射撃で次々に倒されてしまった。
「くっそ、冗談じゃねえ!!」
柱の影からニコラスは悪態をつきながらも、一斉射撃をする敵に向かって装備の1つとして
支給されている手榴弾を取り出す。こう言う場合には有効活用しなければ。
だがまともに正面からやり合うのは無理なので、近くに見つけた螺旋階段から上に上がり
敵の後ろへとこっそり回り込んで敵チームに手榴弾を投げ込み撃破。
「クリアだ!」
「行くぞ!」
ニコラスとマドックは敵兵士の排除を確認し、残ったSWAT部隊の警察官達と共に更に上へと進んで行く。
そこでは麻薬の精製をしている故に、保管されている爆薬の他にも火薬を使っているので
敵が銃火器を使えないこの状況はチャンスだった。
ギルドの2人は素手での接近格闘を得意としている他に、SWAT隊員達もナイフでの白兵戦を挑む。
敵も同じ状況だ。
「らっ、らあ!!」
手技、足技、投げ技、関節技、敵からナイフを奪い取ってメッタ刺し、更に椅子でぶん殴る、背中から
テーブルの角に叩き付ける、思いっ切りドロップキック、整理用の棚を相手に向かって倒す、
顔面にキック、ジャイアントスイングで顔面から柱にぶつける等、えぐい技も何でもありの状況で
必死に2人は敵を倒しながら先へと進んで行った。
そしてその先にある両開きの扉を開けて先へ進んだ2人とSWAT部隊は階段を上り、その先に現れた
銀色の重そうな扉を開けると、その先には広い部屋とギルドの2人の因縁の相手が待っていた。