Future World Battle第3部第29話


「ははっ、待ってたぜ……ヴェハールシティの刑事さん達よぉ?」

これだけのSWAT部隊の人間、それからニコラスとマドックにそれぞれ銃口を向けられながらも

黒髪の男シュテファンと銀髪の男ユルは余裕そうな表情を崩さない。

「麻薬密造、武器の横流し、公務執行妨害……その他も色々叩けばホコリが出て来そうだな。

御前達をここで逮捕する。両手を頭の後ろで組んで、地面に膝を着いてゆっくりとうつ伏せに寝転がるんだ!!」

ニコラスが男達に向かって叫ぶが、そんなニコラスの叫びに対しても男2人は余裕の表情である。

「おい、聞こえないのか!! 両手を頭の後ろで……」

再度大声で指示するニコラスだが、それよりも大きな声でマドックが叫ぶ。

「待てニコラス、伏兵だ!!」

「なっ……」


考えるよりも先に身体が反応したニコラスと、伏兵をゴーグルの熱反応で察知してさっきと同じ様に

ギルドの2人とSWAT部隊がそれぞれ一旦退避して、散乱している工事現場の機械や資材の陰に身を隠す。

どうやら吹き抜けのホールの他にも伏兵としてまだまだ増援が残っていた様で、この状況で

これ以上の助けは時間が掛かる為に期待出来ない。

シュテファンとユルの2人もそれぞれM4ショットガンとP90マシンガンを取り出して警察の部隊に銃撃を開始。

人数的にはSWAT部隊の方がやや優勢の様だが、薄暗い状況なのでナイトスコープを使って

SWAT部隊は応戦する。

「後は任せた」

銀髪のユルが、伏兵として襲い掛かる部下達にそう命じてシュテファンと一緒に部屋を出て行く。


「野郎、逃がさねえぞ!!」

ニコラスとマドックもその後ろを当然追跡。

結局ホールの場所までまた戻って来てしまい、大きなシャンデリアの下で彼等2人とバトルする事になる。

吹き抜けのホールの周囲には螺旋階段があり、マドックはその階段を使って下に逃げて行く

ユルを追い追い掛けて自分も下へ。

ニコラスは上に残って、同じく上のフロアで反撃して来るシュテファンを相手に銃撃戦がスタート。

ハンドガンだけの状況ではあるが、これしか武器が無い以上何とか立ち向かうしか無い2人。


しかし、やはりハンドガンと比べてマシンガンやショットガン相手ではなかなか分が悪い。

「刑事と言うのもその程度か?」

「くっ……」

柱の陰に隠れ、そしてタイミングを見て飛び出して撃つと言う戦法をマドックは繰り広げているのだが、

ユルはマシンガンの連射機能を利用してマドックが隠れている場所に向かって回り込んで来る。

その度にマドックは柱から柱の陰に移動しているものの、これでは埒が明かない。

(どうすれば良い……どうすれば!?)

冷静に状況を判断したい所だが、なかなか隙が見当たらないユル。


一先ずリロードの為にジャケットのポケットを探ってみると、マドックの手に弾薬とは違う物が当たった。

(……これは!)

そうだ、まだ「これ」が残っていた。

「それ」を使う事を通信機能でニコラスに連絡しつつマドックはユルが近づいて来るのを待ち、

柱の陰から飛び出すと同時に「それ」をユルの方に向かって投げつける。

「なっ……ぐおあああっ!?」

ユルの方に向かって投げつけた「それ」は、あの駐車場の時に使ったフラッシュバンの残りだった。

フラッシュバンの音と光が直撃したユルは、マシンガンを手から取り落としただけで無く

地面をのた打ち回って悶え苦しむ。


そして次の瞬間、上の方から何と人間が降って来た。

上の方で同じくフラッシュバンの影響を受けたシュテファンが動きを止めてしまった所で、

ニコラスの鋭いキックが的確に彼の身体を捉える。

吹き抜けのホールの穴に向かって蹴り飛ばされたシュテファンの身体は重力に従って

下のホールに落下したが、ニコラスはまだマドックの相手であるユルが残っていると判断して通信を入れる。

『おい、ホールから離れろ!!』

そう言いつつニコラスは、蹴り飛ばされた時にシュテファンが手から落としたショットガンを

拾い上げ、てシャンデリアの留め具に向かって連射。

ガシャン……と言う音と共に、このショッピングモールが栄えていた時の名残りであろう

豪華なシャンデリアが下に居るシュテファンとユルの上に落下してバトルは幕を閉じた。


シュテファンは落下した衝撃とシャンデリアが直撃した事で息絶えたが、ユルはまだ息があった。

「おい、御前達の計画はこれで終わりだな?」

何とかシャンデリアの下から這い出て来たユルに対し、ニコラスとマドックが銃口を突き付ける。

「あーあ、捕まっちまったか……まさか俺の立てたあの待ち伏せ作戦を切り抜けるとは。

あんた達は運が良かったな?」

諦めにも似た表情でニヤニヤと笑うユルの眉間に、ニコラスの銃口がゴリッと一際強く押し当てられる。

「そうか。ならここで死ぬか?」

しかし、どうやらこんな奴に構っている時間は無さそうだった。

「あー、それも良いかもな。けどもう遅い。俺達は足止め部隊だ」

「何だと?」

後ろ手に手錠をかけてユルを拘束するマドックは、ユルのその発言に疑問を持つ。

そんなマドックにユルは全てを喋り始めた。


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