Future World Battle第3部第14話


事前に解読したメモの内容を第5分署のマドックのデータに送ったニコラスは、

翌朝になってルイーゼを職場まで一緒に送り届けてから出勤。

普段は自分のチャージャーで署まで出勤しているニコラスは、昨日マドックからメモを貰って来た時に

そのまま署に置いていたチャージャーで帰って来たのである。

そして本来は夫婦別々に出勤しているのだが、何時もはニコラスを見送ってから遅く家を出るルイーゼが

今日は仕事の関係で早く出勤しなければならなくなってしまった。

その出勤時間がニコラスの出勤時間と近かったし、ルイーゼの職場まで多少回り道をして彼女を

送り届けてからでも十分に間に合う距離と時間でもあったので車で出勤。


その一緒の出勤時に、またもやルイーゼはあの人物を目撃する事に。

「……あれ?」

「どうした?」

「あれってティアナじゃ無いかしら?」

朝の通勤ラッシュで賑わうヴェハールシティの交差点で停車したチャージャーの中から、

ルイーゼがそう言いながら窓の外を指差す。この流れは確か3回目だが、今回は朝なので

自分にも見える筈だと思ってルイーゼの指差す方向にニコラスは目を向ける。

「何処だ?」

「ほら、あそこの自動販売機の横のベンチに座ってジュース飲んでる……」


ルイーゼが指し示す方向を見てみれば、そこには確かにベンチに腰掛けて片手で缶ジュースを飲みながら

片手でメモ帳を見つめているショートヘアーの女が1人。

それは紛れも無くティアナだったのだが、何でこんな所に居るのだろうかと疑問に思うイースデイル夫妻。

「ティアナだな。旅行かな……おっと」

後ろの車からクラクションを鳴らされてハッと我に返ったニコラスは、まだ出勤時間には余裕があるので

一旦交差点を右折してチャージャーを停車。

そして夫婦揃って車を降り、ベンチに座っているティアナに近付いて行く。


「久しぶりね、ティアナ」

「……んっ、あ、あれっ? ニコラスにルイーゼ!?」

自分が声を掛けられた事に気が付いたティアナは、その声を掛けて来た人物を見て驚きの表情を浮かべる。

「アメリカには旅行か?」

「ええ。今から何処に行くかを考えてた所。2人はこれから仕事?」

「うん。あたし達も働かなきゃね。貴女は何時アメリカに来て、何時までアメリカに居るの?」

「5日前からこの街に居るわ。とりあえずはその5日も入れて2週間の予定で考えてるけど」

「ふぅん……そうなんだ」


女同士の会話が続く横で、ニコラスが時間をチェックしてルイーゼに声を掛ける。

「話してる所すまないが、そろそろ行かないとルイーゼは仕事に遅れるんじゃ無いのか?」

「あ……ああ、そうね。それじゃアメリカ楽しんでってね!」

このままでは本当に仕事に間に合わなくなる可能性があるので、名残惜しい気持ちではあったものの

ルイーゼは話を切り上げてティアナと別れ、ニコラスと一緒に交差点に停めてあったチャージャーに戻る。

「元気そうだったわね、ティアナ」

「ああ。……それでどうだった? 何か気になる点はあったか?」

「そうねえ……」

交差点の信号待ちでティアナを発見し、そこから右折してチャージャーを停めるまでの間に

ニコラスとルイーゼはティアナの言動をチェックしてみる事を決めていた。

2回も……それも事件が起こったあのタワービルと、次の取り引き現場かも知れない改装中のバーで

ティアナらしき人物を見かけている以上、警察官とその妻である自分達が話し掛ければ何か挙動不審に

なったりしてボロを出すのでは? と言う目論見だった。


結果的にはニコラスもルイーゼもそう言うボロみたいな挙動を見つける事は出来なかったが、

やはりこれまで何回もティアナらしき人物を見かけていると状況だし、実際にヴェハールシティに来ている事が

こうして判明した以上やはり気になるのが本音だ。

そこまで考えて、ふとティアナが思った事を口にする。

「ティアナって確か、パリ警察の刑事よね?」

「そうだが、それがどうかしたのか?」

「これはあたしの考えなんだけど、国は違っても警察官の彼女が色々と怪しい行動をしているとなると、

余り彼女を見かけたって言う話はこっちの警察にもしない方が良いんじゃないかなって思ったの。

その……余りあたしもこう言う事は言いたくないんだけど、今さっきこうして彼女を見かけた上に、

あの取り引き現場になったタワーとか夜のバーでも彼女らしい人を見かけてるからね。

警察官である彼女がああやって人目を避ける様な行動を、それもわざわざフランスからこのアメリカまで

やって来てやっているってなると……ちょっと怪しいと思うのよね、あたし」


そう言われてみれば、ニコラスも何となくティアナからきな臭い感じを感じ取った。

「何だかそんな気がしないでも無い……か。一応マドックにだけは話しておくとしよう」

「それが良さそうね」

彼女がもし怪しい行動をしているとすれば、それは一体何なのか?

もしかしたらこっちの勘違いと言う事もあるかも知れないが、今の所は確実な情報が掴めない以上は

余りベラベラと口外するのは止めておこう、とニコラスもルイーゼも心に誓うのだった。


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