Future World Battle第3部第5話


とにかくルイーゼには確認しなければならない事があった。

「応援は呼んだか?」

『うん……今から行くって言ってたから、そっちは大丈夫』

「良し分かった。それじゃとにかく何処かの店に入ってそこを動くな。そいつ等の仲間がこの近くに

居るかも知れないからな。店に着いたら俺にメールを送れ。それから何か変わった事や気付いた事があったら連絡しろ」

『ええ。ニコラスもしっかりね!』

通話はそこで終了し、ニコラスはこのまま息を潜めてここで待ってみる事にする。

ルイーゼが無事に店まで辿り着いた報告メールを待ちつつ、後ろからやって来る連中を避けるにはこれしか無いからだ。

それまではニコラスの方でも、先程タワーの前でやっていた時と同じ様に端末を使って調査の為の応援を要請していた。

もし仮にこれが勘違いであり、武装集団の正体が工事の業者だったならそれで良い。

だけど本当に武装集団であり、このヴェハールシティで何かテロの様な事を起こそうとしているのなら?

そしてルイーゼのティアナらしき人間を見た、と言う証言もかなり心に引っかかる。

だったらそれを確かめる為に、自分1人では人手が足りないのでニコラスはこうして端末で応援を要請しているのだった。


その応援要請も終わり、ニコラスはさっき確かめておいたジャンパーの下のショルダーホルスターから

自分の愛用しているハンドガンを引き抜く。緊迫した状況になって来た以上、何時でも如何なる事態に

すぐさま対応出来る様にしておくのは当たり前の事だ。

(そんなに上の方までは俺も上がって来ていない。となればルイーゼの言っていた連中がここに

辿り着くまでは余り時間も掛からなさそうだ)

ニコラスは張り込みの経験も豊富なので、こうした場面では忍耐力と周りの気配を読む力と状況判断が

重要になると分かっている。ともかく今は待つしか無い。


ニコラスがタワーの中で息を潜めているその頃、ギルドのもう1人の刑事であるマドックを中心とした

応援部隊がタワーへと急行していた。

非番である筈の自分の相棒から連絡が来た事、それからその相棒妻であるルイーゼからも似た様な

通報をしてあると言う事が相棒のメッセージにあったので、マドックは他の警官隊のパトカーと一緒に

タワーに向かってマスタングのパトカーで急行する。

(勘違いであればそれに越した事は無い。しかし何かの事件の前触れならば、それは俺達警察官が

しっかりと対応しなければならないだろう)

相棒のニコラスと性格こそ違えど、考える事は似た様なものなのは長年彼と一緒に居たからだろうか。

それとも、同じく刑事だからだろうか。

理由はどうであれ、ひとまずそのタワーの中で事実確認をしなければならない。


そしてそのタワー関係で、マドックはふとこんな事を思い出した。

(俺達が向かっているタワーって、俺がヨーロッパに行ってた時にニコラスが手柄を上げた事件の場所じゃ無かったか?)

その事件に関する報告書を見つけてその上でニコラスから聞いた話では、確かヨーロッパからやって来た

犯罪グループがこのヴェハールシティに潜伏していたらしく、それを追いかけて同じくヴェハールシティまで

はるばるやって来たフランスの刑事と一緒にタワーに乗り込んで、そしてその犯罪グループを壊滅したと言う。

その時は何とルイーゼが誘拐されてしまったらしく、それも含めてニコラスには重大な事件として記憶に新しいと言っていた。

そのタワーでまた何か事件の前触れの様な出来事が起こっている。

余程ニコラスはそのタワーに因縁があるのだろうか、と不思議に思いつつもマドックはマスタングのパトカーを走らせ、

タワーへと向かっていた。


……のだが、その途中で新たな連絡がニコラスから入る。

『マドックか?』

「ニコラスか。どうした?」

電子モニターの役割も備え付けられている、防弾で防爆使用の強化フロントウィンドウにニコラスからの

映像連絡が入って来た。

その映像ではニコラスの周辺映像が映し出されている。

彼が持っている腕時計型の端末を使って、周りの状況をこうして映し出してリアルタイムで放送させる事も

可能なシステムだ。


しかし、そのシステムによって映し出された映像には信じられないものが映っていた。

『見えるか?』

「……ああ、見えるぞ。何かの取り引きを行っているみたいだな」

なるべく冷静な口調で運転に集中しながらも応答をするマドックだが、内心では焦りの色が自分に

浮かんで来ている事を理解する。

何故ならフロントウィンドウに映し出されていたその光景は、何かの取り引きを行っている武装集団の姿だったからである。

工事中なのを良い事に、人目につかないタワーの中のホールの様な場所で大々的に取り引きを

行っているのがニコラスの目に、そしてタワーに向かっているマドックの目にもしっかりと見える。

人数や風貌に関してはうっすらとしか見えないが、少なくとも10人以上居る事は確かみたいなので応援を

連れて来て正解だったとマドックは少しだけ安心する。

だが、油断は禁物だ。


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