Future World Battle第3部第6話


「ニコラスは今何処に居るんだ? それからルイーゼは?」

『俺は今、奴等の取り引き場所の近くにある使われていない倉庫の中から奴等の動きを見張ってる。

ルイーゼはタワーから離れて貰って近くの店の中で待機して貰ってる。ルイーゼの番号は分かるか?』

「ああ、分かる」

『なら、ルイーゼの居る店の情報をそっちに送るからそこに向かって彼女を保護してくれ。

俺はこのままここで張り込みと監視を続ける』

「分かった。応援部隊の奴等を迎えに向かわせる」


ニコラスに頼まれたマドックは、データが送られて来るとすぐにそのデータを自分のマスタングパトカーの

後ろに居る応援部隊のダッジ・チャージャーやシボレー・カプリスのパトカーに転送する。

ギルドが新規部署として立ち上がると言う事で、このマスタングパトカーにも今までの

指紋認証システムやホログラムキーボード等の他にフロントウィンドウのモニター化、それから備え付けの

タブレットの連絡方法からもう1歩進化した高性能のホログラムリアルタイム通信システム等が新たに増設されている。

これによって重量も少しだけ増えてしまったものの、そこは更なるエンジンのパワーアップによって

800馬力を絞り出し、加速力とトップスピードのダウンを相殺している。


市警察のパトカーとして支給されたとは言え、クーペモデルのパトカーとしてのテスト物件として

購入したのだから元々ヴェハールシティポリスに1台しか無いこのマスタング。

今では新規部署の立ち上げに伴って、ギルド専用のパトカーとして利用される事に

なったのだからこれはこれで良かったのだろう。

そんなハイテクシステム満載のマスタングから送られて来たメッセージとルイーゼの写真の

情報を基にして、応援のパトカー1台がその店へと急行する為に進路変更。

ルイーゼを保護次第連絡する様にと頼むのも忘れない。

ミラーでそのパトカーが保護の為に向かったのを見て、マドックもタワーに急ぐべくサイレンを

鳴らしながら走るマスタングのアクセルを更に踏み込んだ。


その頃ニコラスはまだ取り引きの様子を伺いつつその内容を記録しておく為に、普段の装備で自分の

アーマーについているポケットの中に入れているモノクルのゴーグルを取り出して着用する。

このゴーグルだけは何かあった時の為の緊急用の連絡手段として持ち出しが可能な装備に

なっているので、ニコラスはこうして持ち歩いているのだ。

そのゴーグルは連絡用のインカム機能付きのゴーグルなのだが、その他にも熱感知用のセンサーや、

もう片方の目の場所に小さいながらもマスタングのフロントモニターに備え付けられている物と同じモニターシステムが

ホログラム機能で映し出される様に設計され、通信も勿論可能になっている。

そして高性能小型カメラのシステムも搭載され、それ等は全て耳の部分にある小さなボタンで切り替えが可能だ。

なのでそのハイテクゴーグルを存分に駆使して、この取り引きの様子をじっと録画するニコラス。

本音を言えば取り引きの内容も知りたいので、ゴーグルについているマイクの感度を上げて何とか

取り引き中の声が聞こえないかチャレンジしてみたものの、今ニコラスが居る場所からは

音が拾えない結果となってしまったのでそこは断念。

もう少し近づけば少しは音が拾えるかも知れないが、これ以上近づくと取り引き中の連中に

見つかってしまう可能性が高いので結局録画するだけに留めるしか無かった。


あの隠れていた場所から随分上……恐らく10階分は上って来た。

結局あの物陰で待機していたニコラスは、その後にやはりと言うべきかガシャガシャと騒々しい音を立てながら

複数人の人間が彼の隠れている物陰の横を話をしながら通り過ぎて行った。

色々と話し声が混ざり合っていたので何を言っていたかまでの断定は出来ないものの、バレない様に

様子を伺っている限りでは明らかに武装している集団だったのでこれは何かある、と刑事の勘が働くニコラス。

そしてその勘がニコラスの足を動かし、結果的に見つからない様にしながら集団の後ろを尾行して

最終的にこの倉庫に隠れながら録画中、と言う訳だった。

(何か取り引きの証拠として、映像だけでは無く物的としても手に入ると良いのだがな……)

思わず先走りたくなるその気持ちを何とか抑えつつ、早く応援が来てくれるのを待つニコラス。

そんな彼にとって悪い出来事がこの後に襲い掛かって来る事になるとは、この時点ではまだ知る由も無かった。


録画を続けるニコラスがもっとその録画対象の集団に近づきたくてやきもきしている頃、タワーの下に

マドックの運転するマスタングパトカーを先頭にしたヴェハールシティポリスのパトカー集団が到着したのである。

そのパトカー集団から先陣を切るのは勿論ギルドの装備に身を包んだマドック。

その後ろからも武装した警官隊が続き、万全の体制での突入がスタート。

部隊を2つに分けてニコラスが単身で踏み込んで行った入り口と、前回ニコラスとティアナが乗り込んだ

入り口からギルドと警官隊が突入し、足音を極限まで忍ばせて見張りやトラップに警戒しながらタワーを上に上って行く。

その中で、マドックは心に何か引っ掛かるものを感じていた。

(あれ、何か忘れてる様な……?)


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