Future World Battle第6話


「帰った?」

だが現場検証等に付き合わなければいけなかったので、すぐに女の所へ

向かう訳にも行かなかった。

そうしてニコラスは30分位して銀行の中から出て来られたのであったが、

女を連れて行った警官に話を聞いてみると彼女は気分が優れなくなったと

言って帰ってしまったらしい。

あの死んでしまった人質との関係についてその警官も聞いてはいたのだが、

女の証言から得た情報によるとこのヴェハールシティに住んでいる知り合い

だったらしい。


知り合いなら確かに銀行の中まで戻って来て泣き崩れる気持ちも分かるが、

やっぱりあの右手の中の光り輝く物が気になっているニコラスは女が帰ったと

言う先をその警官から聞き出す。

しかしその警官にも詳しい行き先を告げる事は無く、9番アベニューの

メトロキャッスルホテルへ帰ると言っただけだったらしい。

「……こちらニコラス。少し気になる事が出来たので、帰還は後回しにする」

インカムでそう連絡をした後、彼はその女が向かったと言うメトロキャッスルホテルへと

マスタングに乗って向かった。


そのホテルが何故メトロキャッスルホテルと呼ばれているのかと言うと、文字通り

地下鉄の駅から上がって来た目の前に建てられているホテルであるからだった。

キャッスルと言っても別にヨーロッパの城をイメージしているとかそう言う訳では無く、

ただ単になかなかの大きさのビジネスホテルであるだけの事だ。

(ビジネスホテルと言う事は観光客なのか? だとしたら知り合いにこの街を案内して

貰っていたとかそう言う事になるのか?)

その疑問はあの女を捕まえてみれば分かる事なので、マスタングをそのホテルの前に停めて

ニコラスはホテルのロビーへと入って行く。


「ヴェハールシティ警察の者だ。ここにショートカットの金髪で黒色のコートを

着込んだ女が泊まっている筈なんだが、その女に聞きたい事があって来た。

何処の部屋に泊まっている?」

ニコラスはコートの下に着込んでいるジャケットの胸のバッジを見せながら、フロントの

ホテルマンに尋ねてその部屋まで案内して貰う事に。

女は10階建てのこのホテルの6階に3日前から泊まっていると言うので、どうやらこの

ヴェハールシティの住人では無い様だ。


そうしてその女が泊まっている部屋のドアをコンコンとノックしたが……返事が無い。

(……何処かに出かけたのか?)

まだチェックアウトもしていないとホテルマンは言うので、何処かに出かけてしまった可能性が高い。

しょうが無いのでここで待たせて貰おうとニコラスがホテルマンに言おうとした……その時だった。

「……!!」

「あっ、おい待て!!」

ニコラス達がやって来た方とは反対側の曲がり角から現れた女だったが、その女はニコラスの姿を

見ると目を見開いて驚いてそのまま踵を返して逃げ出した。明らかに怪しい。


「警備員を!!」

ニコラスはホテルマンにそう短く伝えて応援を要請し、自分は本日2度目の追いかけっこの鬼になる。

だがどうやらこの女も結構すばしっこいタイプの様で、同じくコートを着込んでいるニコラスでも

後れを取る程スピーディーだ。

(今日は何だか良く走る日だな!)

さっきの逃げ切られてしまった追いかけっこの事を思い出しながら、今度は絶対に、もうこれ以上

絶対に逃がさない様にニコラスは足を動かして女を追いかけて行く。

(2度も同じミスを繰り返してたまるか!!)


女はエレベーターでは無く階段を使って逃走する。だがその逃走する方がおかしい。

普通、逃げるのであれば出入り口がある下へと逃げて行くのがセオリーなのだが

女は上へと階段を使って逃げて行く。

(焦っているのか? それだったら都合が良い。このまま上へ行って追い詰めてやる!!)

屋上へ出る事の出来る非常階段ではあるが、その屋上へ向かったとしても逃げ場は

無い。近隣に飛び移る事の出来る様な高さのビル等も無い。

今度こそ逃げ場は無い。そう確信したニコラスは女を追い詰める為に屋上へと自分も

向かうのであった。


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