Future World Battle第2部第27話
背負い投げが上手く決まり、さくらが刀を手放した所ですぐに抑え込んで
手錠で拘束しよう……と思ったら、何とさくらは空中でそのまま回転してストっと地面に足から着地。
偶然決まったと言うよりも明らかに慣れている動きだったので、今度はニコラスの動きが止まってしまった。
そこをさくらは見逃さずにコークスクリューパンチをニコラスの頬にヒットさせる。
「ぐへっ!?」
パワーこそ余り無いものの、しっかりと腰の入ったそのパンチはニコラスにダメージを的確に与える。
でも、ダメージと言ってもニコラスも刑事故に耐えられない程鍛えていない訳でも無かったので、
再び刀を振って来た所で今度は素早く右に避けつつさくらのがら空きの腹目掛けて左ミドルキック。
「ぬぐっ!?」
キックでさくらが前屈みになった所で、思いっ切り足を振り上げて最上段からの踵落としをその背中に食らわせた。
「ぐえっ、がは……っ!!」
流石のさくらも、この連続コンボにはなかなか身体に力が入らずに立ち上がれない。
今度こそ、とばかりにニコラスはうつ伏せに地面に倒れ込んださくらの左手を後ろ手に手錠の片方で拘束し、
もう片方の手錠の輪っかを近くの手頃な大きさのパイプに繋いで身動きが取れない様にする。
おまけに刀も手の届かない所に投げ捨て、まだ戦っている2人の内で不利な状況に追い込まれている
レイジに加勢するべく駆け出した。
レイジは殆ど限界に近づいていた。
2人の連係プレイで苦戦するだけで無く、手を縛られているのもプラスして更に苦戦する。
2人の内、メガネの男の如月はやたら膝蹴りや肘打ちを多用して来るのでムエタイの使い手では無いかと予想する。
金髪の女の真理は関節技も投げ技もそれから打撃技もオールマイティに使って来るので、総合格闘家の
類なのかと思ったが詳細は不明だ。
だけど2人ともかなり強い事には変わりが無い。
レイジもカポエイラを28歳の時から習い始めて今年で24年目になるのだが、それでも年齢の増加による
体力や視力の衰えと2人同時相手はきついのだ。
このままだと確実に追い詰められて殺されてしまう。
そう考えていたレイジの元に、救世主が現れたのは次の瞬間だった。
突然レイジの視界の端から、青いコートに身を包んだ金髪の男が飛び込んで来てドロップキックで如月をぶっ飛ばす。
「げはっ!?」
視界の外から衝撃を食らってぶっ飛んだ如月は受け身を取る事が出来ず、そのままゴロゴロと床を転がった。
「ふん!」
更に体格差を活かして、真理もパワー任せに後ろから羽交い絞めにして拘束するニコラス。
それを見たレイジは歯を使って、ロープの結び目をシュルシュルと器用に解いて行く。
「離しなさいよ」
その一方で真理はニコラスの腹に肘打ちをかまし、若干拘束が緩んだ所で頭を思いっ切り振って
後頭部でニコラスの顔面に頭突き。
「ぐわ!?」
更に怯んだニコラスにショルダータックルを食らわせ、たたらを踏んだ彼に全力で金的蹴りをかます。
「ぬごおおおっ!?」
流石のニコラスでもこれには悲鳴を上げる。
そんなバトルの横では如月が向かって来たのでレイジが迎え撃つ。
レイジよりも背が低いものの、真理よりも回避行動が得意らしい如月はレイジをなかなか追い詰めて行く。
「ぐっ!!」
如月の前蹴りを食らってしまい、体勢を立て直すものの更に追い詰められる。
基本的にレイジは冷静に戦うので、その冷静さが相手を惑わすのだが如月には余り通用しないらしい。
(くっそ……どうする!?)
右のキックを繰り出されたのでそれを左の脇でレイジは挟み込み、お返しに如月の顔面に右の裏拳を入れる。
更に右の肘をそのまま挟み込んでいる如月の右太ももに落とし、如月がよろけた所で
右のストレートパンチを如月のみぞおちへ。
「ぐっ!」
後ろにたたらを踏んだ如月に追撃をかけるべく、今度は思いっ切り脳天に右の肘を落とす。
だが如月も反撃に前蹴りを繰り出して来て、一旦レイジと如月の距離が離れた。
そこから今度はパンチを繰り出し、更に回転しながら肘も繰り出して如月をだんだんと追い詰める。
更に如月のミドルキックをしゃがんで回避し、カポエイラの要領で如月の股を潜り抜けて
通り抜けざまに股間にかかとを入れる。
「おうふ!」
如月が変な声を上げている後ろで、レイジは素早く立ち上がって今度は左のミドルキック。
そして如月が再びそれでよろけた所に、今度は後ろに1回転しながらもしっかりと如月の側頭部に右足を蹴り入れる。
「ぐふっ!」
頭にレイジの足がクリーンヒットした如月は、そのまま受け身を取れずに地面に倒れ込んで頭を押さえて悶え苦しむ。
だが如月はそれでもまだ立ち上がって来ようとしたので、させるまいとレイジは側転からそのまま宙返りに持ち込み、
如月の頭にかかとを落とす事に成功した。
「がっ……」
如月はそのまま地面に仰向けに倒れ込み気絶してしまったので、このバトルはレイジが自分の愛車である
R34GT−Rを盗まれてしまった事から始まった、今までの全ての鬱憤を晴らす事になったのであった。
(はぁ、はぁ……やったぜ……)