Future World Battle第2部第26話


「うおっ……」

すまない、とニコラスに心の中で謝罪しつつマドックは床を横にローリングする。

(こうなったら容赦はしない!)

そのまま床を転がり、銃口を向けている先の躍人に発砲。

だが。

「ちっ!」

銃口を向けられているのが見えた躍人も、それを見て横っ飛びからの受け身で銃弾を回避。

伊達に柔道で全国大会に出場した過去を持っている訳では無いのだ。

そこに回復して来た京が襲い掛かって来るものの、マドックは京に対して立ち向かう……筈が……。


「おらあっ!!」

「っ!?」

ガシッと後ろから躍人がマドックを羽交い締めにし、そこに京のミドルキックが炸裂。

黒い靴がしっかりとマドックの腹に食い込む。

「ぐお……」

更に躍人がそのパワーを活かし、両脇をグイッと引っ張る羽交い締めでは無く腕で首を絞め上げて

絞殺してしまおうと言う魂胆らしい。

それでもマドックも必死に抵抗。

自分を羽交い絞めにしているその腕に思いっ切り噛み付いて、何とか躍人を振り解こうとする。

「ぬぐぉおお!?」

噛みつき攻撃で緩んだ躍人の右腕を両手で掴み、自分の右肩を使ってその右腕をベキッと一思いにへし折った。

「あがぁあっ、お、折れた!?」

自分で折れたと分かったらしいその躍人の声を背中に聞きながら、マドックは躍人の身体を地面へと叩き付ける。

これで1人は何とか倒す事に成功したが、まだ窃盗団のメンバーは残っているのだ。

「くっそぉ!!」

そこに今度は京がマドックに襲い掛かって来た。


そんな光景と同時にレイジは真理と如月、ニコラスはさくらを相手にする。

レイジは50を超えている年齢を感じさせないスピーディーな足技で2人を翻弄しながらも、

手を縛られているハンデがあるのでフルに実力を発揮出来ない。

クラヴマガのブラックベルト保持者である真理と、仕事上のトラブルが切っ掛けで命を狙われた事で

ムエタイを習得するに至った過去を持っている如月は、お互いの隙を上手くカバーする戦い方を見せる。

どうにかしてこのロープを解きたいレイジは手首に力を入れながらバトルを繰り広げるものの、

真理と如月の若者2人の連係プレイに次第に追い詰められて行くのをヒシヒシと感じていた。

(まずい……!!)

もう少し若かったらまだ余裕があったのかも知れないが、今こんな事になってしまっている以上は

何とか乗り切るしか無い。

そう考えても劣勢なのは変わらないので、レイジの顔に次第に焦りの顔が浮かび始めていた。


ニコラスの方はさくらの日本刀での猛攻で防戦一方だ。

銃があればまた話は変わって来るのだが、この倉庫の中でレイジが個人情報を探られていたのと

同じ様にニコラスも端末と銃を没収されてしまっていたのである。

(拉致が出来ないなら、俺達をここで始末する気かっ!?)

さくらが容赦無く日本刀を振り被って来るのを見て、隙が出来れば即座に反撃したいニコラス。

しかし、まだ20代そこそこの年齢と思われる彼女はその若い身体を存分に使って日本刀を振り回す。

体感する限りでは日本刀の扱いにもかなり慣れている様であり、女だと言って甘く見てると

斬り殺されてしまうだろうと思ってしまう程の腕前であると見えた。


でも、警察官にこう言う事をするのは明らかに公務執行妨害である。

それ以前にマドックを拉致した拉致罪、それから暴行罪に殺人未遂。

かなりの罪を重ねている目の前の凶悪犯に対して、ニコラスは容赦する気はもう無かった。

だけどこのまま逃げ続けていても勝機は掴めない。

何とかしなければ……と思った事で焦りが出たのか、足元に置かれている工具箱に踵からつまずいてしまった。

「うおっ……!?」

「ふんっ!!」

尻から地面に転がってしまい、隙だらけのニコラスの目前に気合いの掛け声と共に振り下ろされた

さくらの日本刀が、容赦の一切無いスピードで振り下ろされる。

せめて最後の抵抗をしようと思い、縛られたままの手首を頭の斜め上に突き出すニコラス。


だが、それがミラクルを呼んだ。

突き上げた両拳の間に上手く日本刀が入り込み、手首を縛っているロープに刀が食い込んでブチブチと切れて行く。

「……!」

「なっ……」

ニコラスとさくらが同時に目を見開く。

ロープを切り裂いていた日本刀は、そのままロープを切ってニコラスの元へと届く事は無かった。

何故ならそのロープは普通のロープより少し太かったのでギチギチに固く、そしてキツく縛られていた為に

かなりの強度があったのだ。

それによって切断される事は無かったロープだが、かなりの所まで日本刀の刃が食い込んでいる。


それを見たニコラスはこれ幸いとばかりに、黒手袋に包まれた両手を思いっ切り上へと押し上げる。

そのパワーで完全にロープが切れ、両手がようやく自由になった。

それと同時に素早く日本刀の下を潜り抜け、さくらの手首をがっちり掴んでマドック仕込みの背負い投げを繰り出すニコラス。

「ぬん!」

マドックと共にたまにトレーニングをしているのだが、その時にマドックが関節技や投げ技を得意としている事を知って

教えて貰っていたのだ。

反対にマドックにも、自分がフリースタイル空手で培ったパンチやキックと言ったありとあらゆる打撃技を教えていた事もあり、

ニコラスはその時のマドックのレクチャーを今実戦でこうして活かす時が来た、と言う訳だった。


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