Future World Battle第2部第25話


だけどこのまま拉致される訳には勿論行かない。

どうにかしてここから逃げ出さなければ命が危うい3人だが、この状況で満足に逃げ出せる様な気はしなかった。

どうすれば良い、どうすれば!?

3人のそんな気持ちが1つになった時、倉庫の扉がガンガンと叩かれる。

「……あれっ? もう来たのか?」

躍人が不思議そうな顔をして扉に歩み寄り、少しだけその扉を開けて外の様子を見てみる。

するとその瞬間、彼の目にとんでもないものが映った。

「……!?」

声には出さないものの、躍人は手招きをして残りのメンバーを呼び寄せる。

かと言って全員で向かうとその隙に3人が逃げ出す可能性もあるので、真理と如月が

何があったのかを聞きに躍人の元に歩み寄る。


「どうし……」

「サツだ!」

小さいが張りのある声でそう言う躍人に対して、真理と如月は顔を見合わせる。

そして残っている京とさくらの元に3人揃って戻って来た時には、倉庫の外からサイレンが聞こえて来た。

それに対して躍人は更に驚きの声を上げる。

「ちょっ……おい、どう言う事だ!?」

「何、どうしたの?」

さくらが説明を求めると躍人はややこしい事を言い出した。

「倉庫の外にパトカーが大量に待ち伏せているんだけど、サイレン鳴らさずに来たから俺達に

気付かれない様に集まれたらしいんだ。だけどこのサイレンの音は……!?」

躍人はそう言いながらマドック達を見やる。


そしてその他の4人も、つられる様にしてマドック達に視線を向けた。

「この中の誰かが警察を呼んで、そして殺されそうになったからもっと増援を呼んだって所かしらね?」

躍人の要領を得ない説明を分析した真理が、無表情だが怒りの色を含んだ声色で確かめる様に呟いた。

「そ、そうだそう言う事だよ!! この野郎……!!」

怒りに身体を震わせながら歩み寄ってくる躍人だが、それを如月と京が止める。

「待て、ここはもう逃げるぞ」

「けど!」

「こいつ等に鎌って仕事がこの先出来なくなったらどうするんですか!?」

京と如月のそのセリフに躍人は苛立ち気に床をバン、と靴の裏で蹴りつけて逃走準備に入る。


マドックのズボンのベルトの背中側には緊急用の発信ボタンがついている。

ニコラスが応援を呼んでくれたのは助かったが、この倉庫の中に拉致された時からもうなりふり

構ってられなくなったのでそのボタンを押して更なる増援を求めたのだ。

だからニコラスの呼んだ応援に続いてマドックの要請した応援がこんなにも早く到着したのだが、

それでもこの連中をここで逃がしてしまえば全てが水の泡だ。

「待て、貴様等!!」

「くそっ、逃がさん!!」

何とかロープを解こうとするマドックとニコラスだが、後ろに手を縛られているので抵抗しても

気休め程度にしかならない……筈だった。


「ふっ!」

「ぐえ!?」

奇妙な声がしたので、何事かと思いつつ音のした方をほぼ同時に振り向いたマドックとニコラスの目に映ったのは、

後ろ手に両手首を縛られた状態でありながらも自分の長い足を活かして、右のハイキックを真理の

側頭部にヒットさせたレイジの姿だった。

いきなりの出来事で真理とレイジ以外の全員が動けずに居たそのハイキックだったが、何と真理はそれに耐えた。

レイジのパワーが無いのか、あるいは真理の耐久力が常人とは比較にならないのか。

どちらにせよ、意外なその展開に一瞬この場の空気が止まったのは間違い無かった。

「……このっ!?」

それを見た如月がレイジに飛び掛かって行くが、レイジは後ろ手に縛られていた手を大きくジャンプしつつ、

脚を精一杯曲げて一瞬で後ろから前に腕を持って来る事に成功。

何かのアクロバティックな武術を習得している様であり、腕を縛られた状態でも真理と如月相手に

対して臆さないバトルを開始する。


それを見て京がハンドガンを構えるが、彼に対してはマドックがタックルをしてそのハンドガンを京の手から落とす事に成功。

手錠じゃ無くてロープだったのが幸いし、タックルで京が怯んだ所で同じ様にジャンプして腕を前に回し、

起き上がろうとして来た京の顔面に前蹴りを入れてもう1度怯ませる。

再び京が怯んだ隙に、傍の壁に手首を縛っているロープをゴシゴシと擦り付けて素早く解く事に成功。

これで手足が自由になったのだが、ニコラスの方に目を向けてみると彼に対しては躍人がパワーで攻めつつ

さくらが日本刀で援護する展開でかなり苦しそうだ。

なので京はひとまず放っておき、先程京が手から落っことしたハンドガンを床から拾い上げてレイジと

ニコラスを攻撃している4人に銃口を向ける。

「動くなっ!!」

これで動きが止まるかも知れない……と思ったマドックだったが、予想の斜め上を行く展開がこの後に待ち受けていた。

「ぬおりゃああ!!」

さくらの日本刀にニコラスが怯んだ隙に、躍人がニコラスの足元目掛けてタックルをかましつつ彼の身体を持ち上げる。

「う、うおおおっ!?」

そのまま銃口を向けているマドックに、柔道で鍛えた大柄な身体から繰り出されるパワーを活かして

躍人は力任せにニコラスをぶん投げた。


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