Future World Battle第2部第24話


「御前達は一体何者なんだ? 見た所全員アジア人……しかも喋っている言葉からすると

全員日本人の様だがな」

マドックがそう尋ねてみると、この倉庫の中に居る窃盗団メンバーの内で黒い制服に

身を包んでいる銀髪の男が口を開いた。

「ああ、その通りさ。それにしてもお前はこいつ等に1度拉致されたくせに、またここにこうして

乗り込んで来るなんてな。一体どうやってここを突き止めたのか知らないが、俺達の顔や

身なりを知ってしまった以上はここで消えて貰うぞ」

勝ち誇ったかの様に言う銀髪の男に、マドックはふと思い出した事がある。

「……お前、もしかして京とか言う奴か?」

「何故俺の名前を知っている?」


やっぱりどうやら当たりだったらしい。

最初にダウンタウンまで拉致されたマドックは、茶髪の女であるさくらの口から「京君」と

言う名前が出て来ていたのを覚えていたのである。

それを律儀にマドックが京に話してみると、京は顔をさくらの方に向けた。

「おいさくら、迂闊だぞお前は」

「そんな事言ったら今の京君だって迂闊じゃない!?」

「だからそこが迂闊だって言ってるんだ」

「何よぉ!?」

いきなり口喧嘩に発展した京とさくらに対し、残りの3人が割って入る。

「おいおい……止めろって、ここに来て仲間割れかよ?」

「そうよ。この人達をさっさと始末しましょう」

「警察関係者なんだから生かしておくとまずいですよ。さくらちゃんも京さんも落ち着いて」

「躍人さんも真理ちゃんも黙っててよ! 如月君も! これは私達の問題だからね!」


これによって全員の名前が分かってしまった。

拘束されながらもそれを見ていた3人は、それぞれ思い思いの言葉を心の中で呟く。

(アホだな……)

(殆どあのさくらって言う女のせいだろう)

(バカばっかだな)

ニコラスもマドックもレイジも、言葉は違えども思う事はどうやら一緒だった様である。

この喧嘩中にそれぞれの手首を縛っているロープを外せないかと画策する3人だが、その前に口喧嘩が終わってしまった。

「……まぁ良い。それよりもこいつ等さっさと始末して、この車全部船に積み込んで逃げるぞ」

京が部下の4人に指示を出した……までは良かったが、その後に続けて出て来た京のセリフで一同は唖然とする。

「警察が来るとなると厄介だ。このシティ中に居る奴等全員集めろ。今すぐに、ここにだ」

「は? 全員?」


真理がキョトンとした顔を見せるが、京は「当たり前だ」としか言わない。

「どうせこの街に俺等はもう来ないんだし、こいつ等はさっさと始末しちまえば良いんだし……

それとも拉致して何処かに売り飛ばすか?」

「そっちの方がまだ使い道はありそうですね」

「え、でもそれじゃ足つかないかしら?」

京の提案に如月は乗ったものの、さくらは反対の様である。

また口喧嘩が始まりそうなそんな光景の横で、真理は端末を使って何処かに連絡を取っている。

恐らくは「このシティ中に居る奴等」を集めているのだろう。

しかし、それを静めたのは茶髪の大男の躍人だった。

「とりあえず拉致しようぜ。使い物にならなかったらそこで始末すりゃ良いし、売れるんだったら売り飛ばしちまおうぜ」

「分かった」


躍人のセリフで意見は纏まった様だが、その対象となる3人にとっては色々と不審な会話が出て来た。

「売る……って、何処にだ?」

ニコラスがそう聞いてみると、拉致と人身売買の提案者である京が3人の目の前に歩み寄って来た。

「色々さ。発展途上国で奴隷として売っても良いし……それから御前達みたいなガタイの良い奴等を世の中には

性的な目で見る奴も居るんだからな。世の中って言うのは広いんだぜ? セオリー的によ」

かなりやばい状況にあるのはこの京のセリフで3人も理解出来た。

次はマドックからこんな質問が。

「……御前達にはまだ仲間が居るのか?」

それを聞いた真理が、相変わらずの冷たい声で3人の目の前に立って見下ろしながら言う。

「そうよ」

全く否定する事無く認めたその姿勢だけは刑事2人にとってはありがたいが、今までこの5人だけしか

居ないとばかり思っていた部分は気が気で無い。


そんな気が気でない心境を感じ取ったのか、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて京が歩いて来る。

「俺達がこの5人だけだって、何時、誰が言ったよ?」

京のセリフにマドックが頷く。

「……国外に運び出す為の人員にしては確かに少なすぎる気はしていた。港まで来たのはここから船で

運び出す予定だったんだろうから、その船の操縦者で他にメンバーが居ると言うのは理解出来たが……確かに、

この5人で車を盗んで移動させて運び出すには手間も時間も掛かり過ぎるだろう」

それを聞き、京は満足そうに頷く。

「へーえ、流石刑事って訳か。大体当たりだ。セオリー的に考えて人手が足りないからな。この街のギャングなんて

金を少し弾んでやればそれなりの動きはしてくれる。それ位、御前達にも分かるっしょ?」

この街の人間なんだからよ? と京が言うとレイジが一言だけ呟いた。

「人員は現地調達……だからその人員を逮捕してもそいつ等が口を割らない限りはあんた等の事はばれないって事だな」

「そう言う事よ。アジア系から欧米系、白人に黒人に私達みたいな黄色人までアメリカは色々居るからね。

ギャングも当然それなりの数が居るし、それ位の資金なんてこれから先の仕事で幾らでも稼げるから必要経費なのよ」

さくらも不敵な笑みを浮かべて、自分達とこの街のギャングが繋がっている事を認めた。


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