Future World Battle第2部第23話


「見つけた……あれだ!!」

マドックが聞き込みをしたストリートレーサーからの情報通り、そのストリートレーサー達が

集まる場所から少し離れた場所にある港の倉庫街の一角には確かにシルバーのRXー7が停車していた。

そしてその横にある倉庫の窓からは、同じくRXー7の証言をしてくれたストリートレーサーの

言う通り明かりが漏れていた。

倉庫の窓から中を窺ってみると、話し声と何かの金属をいじる様なカチャカチャとした音が

聞こえて来るのと同時に何人かの人影が見える。

「……っ!!」

思わずマドックが息を呑んでしまうのも無理は無かった。

何故ならその人影の大多数は、マドックが見覚えのある連中だったからだ……。


「間違い無い……俺の銃と端末を奪った連中だ」

倉庫の中では恐らく、盗んだ物であろう数台の車を数人の人間達が工具を使って解体しているのが見える。

「増援を呼んでくれ」

「もう呼んだ、心配するな。サイレンは鳴らさない様に言っておいたから」

「そうか、助かる」

相棒とも言うべき腐れ縁の関係であるニコラスの手際の良さにマドックも感心しながら、

倉庫の中の光景に視線を戻す。


その横ではレイジが小さく声を上げた。

「……俺のGTーRだ」

「あの水色に近い青いのがそうだな?」

マドックの確認にレイジは頷く。

1度目は最初にレイジと出会った時、そして2回目はこの港で見たレイジの愛車。

本人確認も終了し、倉庫の中にあるのも確認しつつ後は増援を待つだけである。

「……何人居る?」

「見る限りでは今の所で4人。俺が出会った連中だけだな」

ニコラスの場所からは見えない部分をマドックが覗き見て、倉庫の中の連続車両窃盗事件の

実行犯連中の人数を確認する。

だがその倉庫の中の様子に気を取られ過ぎていたせいで、3人はこの後にピンチを迎える事になってしまった!!


「……おい」

「っ!?」

いきなり掛けられた声に、3人は同時にビックリしてしまった。

それもその筈、後ろから何時のまにか近付いて来ていた男に全く気が付かなかったのだ。

声を掛けられた方を振り向いてみると、そこには何かの軍隊か警備員か良く分からない、

しかし制服だと言う事は3人とも何と無く分かった。

その男の手には不気味に輝くシルバーのハンドガンが握られており、銃口は間違い無く3人に向けられていた。

「両手を上げて俺と一緒にこの中に入れ」

「くっ……」

こっちは3人、相手は1人。

明らかに分はこっちにあるので自分かニコラスが隙を見て男に飛び掛かって押さえ付けてしまえば

勝ちは見えるとマドックは読んでいた。


……のだが。

「変な事は考えないでよね」

「……!!」

レイジとマドックの首筋に伝わる冷たい金属の感触。

そして、その金属の感触に負けない位に低くて冷たい声。

ホールドアップの体勢のまま、その感触を感じていないニコラスが後ろをゆっくり振り返ってみれば、

茶髪の女がレイジの首筋に日本刀の短い方を突き付けている。

マドックの方にもメガネを掛けた男が大型のサバイバルナイフを油断無く突きつけているのが目に入った。

「躍人、真理、こいつ等を拘束しろ」

3人から視線を外す事無く、全身黒尽くめの男は窓から武器を出してホールドアップをさせている

自分の部下に指示を出した。


こうして迂闊にも、3人は拘束された上で倉庫の中へと拉致されてしまったのである。

「へー、御前も俺達と同じ日本人か。山梨から来たんだな」

「私と同じね」

レイジのポケットから抜き取った財布から免許証やクレジットカードを漁り、個人情報を観察する窃盗団のメンバー。

真理はこのレイジと言う男と自分が生まれ育った都道府県が一緒だと言う事で、世界は狭いのねと思いながらポツリと呟いた。

「この際だからこいつ等全員ぶっ殺して、医者やってるみてえだしこいつのクレジットカードで500万位引っ張らねえか?」

レイジのクレジットカードを見てそう提案する躍人だが、それには如月が待ったを掛けた。

「いや、足が付く可能性が高いです。だから諦めましょう」

「えー、せっかくの名案だと思ったのによー」


ブーブー文句を言う躍人に冷ややかな目を向けながら、真理がボソッと呟く。

「大丈夫よ。こっちにはそう言う専門家も居る訳だし……貴方も組織の一員ならそれ位把握しておいてよね」

「うん、偽造カード作る位は朝飯前ね」

真理のキツいセリフだが正直な言い分にさくらも同意し、結局偽造カードは作られる事になるのだった。

「で、後は引っ張れる情報とかはねえか?」

「そうですねぇ……個人情報とか戸籍を売るのはどうせこの3人殺すんで意味無いですけど、

医者だったら病院の患者とかの情報とかからまた色々「ビジネス」が出来そうですねぇ」

ほくそ笑む如月に躍人は「策士家だな……」と呟きながら、まだ何か無いか荷物を漁ってみる。

だけど、荷物を漁られている方のレイジはこの一行の事を全くと言って良い程知らない。

それはヴェハールシティの刑事コンビも同じ事なので、この際だから……と色々聞けるだけ聞いてみる事にした。


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