Future World Battle第2部第15話


「一時的な接続障害?」

その倉庫の管理をしていた人間達の中には、丁度そのアジア人達の写真が撮られた時の

管理当番をしていたと言う者が居たのが幸いした。

その担当者から事情を色々と聞き出してみると、アジア人達の写真が撮影されていたその当日に

倉庫の監視カメラ全てに一時的な接続障害が発生していた事が分かった。

時間にしては夜の21時から21時15分まで。その写真が撮影されたのは夜の20時。

情報屋の話によれば、夜更けにはまだまだ早い時間ではあるものの何かがピーンと来るものがあったと言う事で、

その倉庫の近くに集まっていたアジア人達の写真を撮影したらしい。


一歩間違えば訴えられても仕方が無いんじゃ無いかと、その情報屋から写真を買った時のニコラスは思ったものだが、

今にしてみればその情報屋の直感には感謝した方が良いと思っていた。

そしてマドックの入手した、港湾作業員のスポーツカーの目撃情報と照らし合わせてみるとますます

キナ臭い感じがして来る。

「……ニコラス、その時間帯でこの近くで盗まれた車の情報は入っているか?」

マドックがそう聞くと、ニコラスは端末をクイクイと指で操作して車のデータと画像が映し出されるホログラムを

その端末から浮かび上がらせる。

「これがそうだな。その接続障害のあった日、しかも丁度その時間帯にこの車が盗まれている」

かなり派手なパーツが取り付けられている、日本製のスープラと言う丸っこいボディラインが特徴的な

グレーのスポーツカー。それもかなり古く、1990年代中盤に生産されていた物らしい。


そしてニコラスは今更ではあるが、車の車種や年式が偏りがちな事を見抜いてマドックに伝えた。

マドックも気が付いてはいたものの、あいにく車の事に関しては2人とも興味が無いので良く分からないレベルだ。

しかし、そこからはある程度の予想が幾つか付けられる。

「盗まれた車の内訳を見てみると日本車が約60パーセント、アメリカ車が30パーセント、

残りの10パーセントがヨーロッパ車か」

ホログラムと同時に、その盗まれた車のカタログに記載されている新車当時のグレードごとの価格表や

アメリカ国内での中古車の販売相場等も一緒に表示される。

日本車が多めに盗まれているのは分かったが、その車種にもそれなりの偏りが見受けられる。

「スポーツタイプの、それもマニュアルミッションのグレードが多いな。ヨーロッパやアメリカはオートマチックトランスミッションの

車が圧倒的に大多数を占めているが、欧米の車だと高級セダンや高級なクーペモデルが盗まれている……」


これが一体何を意味しているのか?

車の事は良く分からない2人でも、車の生産国だったり盗まれたメーカーの国だったりと言う事を考えれば、その車種や

車のメーカーに対しての需要が高いからと言うのは容易にイメージ出来た。

「もう少しこの盗まれた車の事について色々と調べる必要がありそうだが、アメリカ車はともかくヨーロッパ車や日本車は

このヴェハールシティでは余り見かける事が出来ない。となれば、シティのそう言う車を持っているオーナーのリストを

ピックアップして全て洗い出してみよう」

マドックの提案にニコラスも頷くが、その話を横で聞いていた倉庫の警備担当者が思わぬ情報提供をしてくれた。

「……なぁ刑事さん、その盗まれた車みたいなのを最近この辺りで良く見かける様になったんだけど、それって関係あるのかな?」

「え?」


警備担当者からの意外なその質問に、マドックとニコラスは顔を見合わせてから口を開く。

「それはどう言う事だ?」

「良く見かけるって言うのは気になる。詳しく聞かせてくれ」

2人の刑事から続きを聞きたいと言われた警備担当者は、最近のその状況を思い出しながら口を開いた。

「港の方で、改造車が集まって違法なレースをたまにやっているんだよ。それで文句を言いに行った事もあったし

警察に通報したりもしているんだが、奴等はこっちの文句に対しても聞く耳を持とうともしなければ警察からの逃げ足も

かなり速いんだ。それでその逃げて行く連中が乗ってる様な、派手なパーツとかマフラーとか付けててベタベタと車体とか

窓とかにシール貼ってる様な、そんな車がこっちにも逃げて来るんだよ。だから関係があるかも知れないぞ?」


その改造車による暴走行為に関しては刑事課の仕事では無く、交通課のパトロール部隊の仕事なので

そうした部門に関してはマドックもニコラスも専門外である。

しかしそう言った行為がこの近くで行われているのであれば、このヴェハールシティの治安を守っている警察官としては

2人とも見過ごす訳にはいかない。

「港の大体どの辺りで、そうした集会や暴走行為が行われているんだ?」

マドックの質問に警備担当者の男は腕を組んで思い出す。

「時間も場所も不定期だけど、この港湾区域でなら必ず集会をする奴らが現れる筈だ。市街の方から通勤してる同僚の

話だと、ハイウェイとかでもそうした連中が居るらしいぞ」


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