Future World Battle第2部第6話
とにかく今の所、このレイジと言う男にはその怪しいアジア人達との繋がりは無いとマドックが判断してその場で解放する。
ガソリンをそのレイジが車に入れている横で、マドックはそのレイジから聞いた右ハンドルのスポーツカーの情報を
警察のデータベースに転送した。これでシティ内の全ての署にデータが行き渡るので、街を巡回している警官が
そう言う車を見かけたらすぐにマドックの元に連絡を入れてくれる様になっている。
(こっちも色々と見回ってみるか……)
勿論他の人間に任せっきりにはせず、自分でもその右ハンドルのスポーツカーを探してシティ内を走り回る事を
決めてレイジより先にスタンドを出る。
「情報提供感謝する。それじゃ」
クイッとマスタングの窓から片手を上げて去って行くマドックを見て、レイジは一言呟いた。
「……キザな奴だ」
そんなキザな巡査部長の刑事は再びマスタングを走らせる。
と言ってもカーショップの聞き込みを行ったり、レイジから聞いたそれらしき車のデータベースをダッシュボードから
映し出されるホログラムの映像と確認しながら照らし合わせたりしてみるのと合わせて行っているため、ただガソリンの
無駄遣いで終わらせる気は無かった。
(……駄目だ、一向にそんな車の手掛かりが掴めんぞ)
例えば人目につきやすい昼間の時間帯はその右ハンドルの車を走らせる事を避けている連中だとしたら、
陽が沈んでからの時間帯の方で探した方が見つかるかも知れない。
余りにもまだまだ情報が少な過ぎる為、マドックは数件のカーショップでの聞き込みを終えてそのまま
自分の分署に戻る事にした。
「帰ったぞ」
「お疲れ。コーヒーでも飲むか?」
「ああ……頼む」
色々と聞き込みをした割には大した成果は得られなかったが、それでも車の車種や色が分かっただけでも
あのレイジと言う男には感謝したかった。
「そういや、データベースに色々と登録されていたが……車の車種の見当がどうやらついたらしいな」
コーヒーをデスクに置いたニコラスがマドックにそう問うと、マドックはコーヒーを一口すすってから頷いた。
「ああ。そう言う車を見かけたって言う人間がガソリンスタンドに居てな。ガソリンを入れていなかったのはお前の失態だが、
それが今回は情報を得る切っ掛けになったから複雑な気持ちだ」
「あ、ああ……」
ガソリンをマスタングに入れ忘れていた事を思い出し、ニコラスもマドックと同じく複雑な表情になった。
「しかし、これから先は一体どうすれば良いのだ?」
「車の車種や色が分かってもそれを実際に見てみなければ何とも言えない。それにその車が実際にその自動車窃盗団に
関与しているのかどうかすら分からないからな」
マドックが相変わらずこめかみに指を当てて考えれば、ニコラスはアゴに手を当てて考える。
「その車種のデータベースが警察のネットワークに入ったんだ。だったら今は焦らず待つべきだと思うが」
「それもそうか」
冷静な口調でマドックがそう諭せば、ニコラスもアゴから指を話して頷いた。
事件解決に固執してしまう執念深さを持っているニコラスは、暴走する……とまでは行かないもののなかなか周りが
見えにくくなる性格でもある。
そのブレーキ役として、たまにではあるがマドックが居る様なものだ。
昔は別の刑事達とコンビを組んでいた彼等だが、今はお互いに単独行動をする事が多い。
勿論コンビを組んで捜査する事はあるにしても、この2人でコンビを組む事は実は余り多くない。
ただ単に警察学校時代からの同期と言うだけで関わる事が多い上に、部署も一緒だと言うだけだ。
そんな警察学校時代の同期である関係のマドックに、それなら……とニコラスはこんな提案をする。
「それじゃあただ単にここで待っていても時間が過ぎて行くだけだし、新部署の設立の為に少し俺を手伝ってくれないか」
「捜査に支障の出ない範囲でなら構わんが」
「あー全然大丈夫だ。荷物の整理とか、新部署に運ぶ為の物品の選定とかそれ位だからここでやって貰うし」
ただでさえ1人でこの事件を担当しているのに、これ以上忙しくなるのはマドックも勘弁して欲しかったが何だかんだで
長い付き合いのあるニコラスの頼み、しかも新規部署の設立でこの今自分が居る部署の中での手伝いであれば
まぁ大丈夫か、とマドックも判断して手伝う事にした。
だけど、肝心の新規部署の内容はまだマドックには聞かされていない。
「さっきから新規部署、新規部署って言ってるが……お前が手伝いに借り出されているって事は、最終的にお前が
その新規部署に配属されるって事になるのか?」
だったら部署も異動になるんだよな? とマドックが聞いてみるが、ニコラスからの答えは……。
「いや、分からん」
「は?」
「俺も上からの命令で新規部署の設立を手伝えって言われて、色々と申請出したり荷物運んだりって事を
させられてるだけだから詳しくは知らん」
「何だ、それ……」
そもそもそう言うのは現場の刑事の仕事じゃなくて、もっと他のそれ専門の連中がやるべきなんじゃないのか? と
マドックは疑問を抱えるのだった。