Future World Battle第2部第7話


「そもそもその新規部署の役割って何なんだ? どう言う事件を担当するんだ?」

流石にそれ位は聞いているだろうと思ったマドックがそう聞いてみると、ニコラスからは曖昧な答えが。

「そこも俺は詳しくは聞いてない。上の人間が言うには例えばまず銀行強盗の対処に、それから潜入捜査……と

言うよりは偵察だったかな? 偵察ミッションにそれから今お前がやっている巨大犯罪組織の捜査……らしい」

「となればかなり危険性が高い事件ばかりの担当と言う事になるのか」

自動車窃盗団の捜査に当たっているマドックはその部署の設立にかなり親近感を覚えたが、かと言って別に自分が

その部署に将来配属されると決まった訳でも無いので他人事の様に聞いていた。

それを聞きながら飲み掛けのコーヒーも飲み干し、立ち上がったマドックは次の情報が入るまで新規部署設立の

手伝いをスタート。

「それで、俺は何をすれば良いんだ?」

「えっと、まずはだな……」


何か情報があれば、すぐにマドックがジャケットの下に携帯している警察ネットワーク専用の小型端末に連絡が入る様に

なっているのだが、結局その新規部署の手伝いが一区切り付くまで何も無かった。

時間はもうすでに夜の6時を回っている。

「もうこんな時間か。色々手伝って貰って悪いな」

「別に構わん。結局連絡も無かったし、俺はもう寮に戻る」

「ああ、お疲れ」

色々備品の手配をしたり、それから小物類を箱に沢山詰め込んだりと身体も頭も使ったので流石にマドックも

疲労を覚えてシティの中にある警察の独身寮に帰る事にした。

少し前まではニコラスもこの独身寮に住んでいたのだが、彼の場合はルイーゼと結婚した事を切っ掛けにして独身寮から

退去し現在は自分の勤務している分署からさほど離れていない場所にあるマンションの部屋を借りて住んでいるのだとか。


(結婚か……)

自分ももう今年で33歳になるから、そろそろ身の振り方を考えるべきだろうとマドックは考えながら自分の愛車である

ポンティアック・ソルスティスに乗ってシティへと繰り出した。

世界的な不況が続いているこの地球全体では晩婚化が世界各地で叫ばれているが、アメリカでも余りそれは変わらないらしい。

このままだと40になっても50になっても結婚なんか出来ないんじゃないかと思いながら寮への道を走っていると、

目の前にふとマドックの目を奪う光景が現れた。

(ん、あれは……?)

数台前の車が右へと曲がって行くのが見えたのだが、そのクルマの右のテールランプが切れてしまっている。

近くに巡回のパトカーも居ないみたいだし、このまま放置しておくのは危険だと言う事でマドックはその車を追い掛け始める。

しかし、その車を追い掛けて行った事から事態は急展開を見せる!!


その車に追い付きたいマドックだが、この時間帯は帰宅ラッシュの為に道が混んでおりなかなか追い付く事が出来ない。

仕方が無いので信号で停止した時を見計らい、端末を使って「危なっかしい車が居る」との情報を送っておきながら

そのままその車をストップさせる為にもう少し接近出来ないか試みる。

(もどかしい……)

捕まえたい奴が少し先にいるのに捕まえられないと言うのは、冷静なマドックですら身体がムズムズしてしまう。

それでもそこは彼の持ち前の冷静沈着な性格で押さえ込み、やがて大きな通りに入って車の数もなかなか

バラけて来たのでマドックはソルスティスを加速させた……のだが。

「……ん?」

その車はウインカーも点灯させずに右へと曲がり、そのままスピードを上げて何処かへと向かう。

刑事としてのカンが「あの車は怪しい」と自分自身に告げている以上、マドックはその車をもう少しだけ追い掛けてみる。


(この先は確か……郊外の住宅街区域?)

郊外では市街地の喧騒から離れて暮らしたい人間達が住んでいるエリアで、夜になれば不気味な程に静けさが漂って来る。

今の時間帯はそんな静かな空間を求めて帰宅する車が郊外へと向かっているのだが、それに紛れる様にしてその車は

郊外へと確実に向かうのをマドックは確かにこの目で見ている。

(……ドライブレコーダー、入れとくか)

ソルスティスを買った8年前から入れているドライブレコーダーは流石に旧型モデルだが、それでも何かあった時の

状況証拠を撮るのに便利である。

特にマドックは警察官である以上、車関係の事故や事件等がこうしてプライベートの自分の車に乗っている時に

見かけた場合、下手な嘘はつく事が出来ないからだ。

だからこそドライブレコーダーを起動してマドックはその車を付かず離れずの距離で尾行して行くのだが、

少しその車に近付いた時に妙な事に気がついた。

(あれ、あの車……ナンバープレートがアメリカのじゃ無いな)

遠目なのではっきりとは分からないが、少なくとも自分が見慣れているアメリカのナンバープレートでは無い

何処か別の国のナンバープレートが取り付けられているのが分かった。

そんなナンバープレートをつけていると言う事はますます怪しいので、マドックは勤務時間外ではあるが尾行を続ける事にした。


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