Future World Battle第11話


倉庫の3階に駆け上がったニコラスはそこの開いている窓から、こちらに向かってやって来る奇襲部隊を

次々にギリギリまで引き寄せて撃ち抜いて行く。

ショットガンが届く範囲は限られている上に、弾がこの倉庫街の照明が少ない中ではなかなか当たりにくいので

事前に暗視ゴーグルを装着して狙撃する。

(本当はスナイパーライフルが欲しいんだがな。真っ向から撃ち合っても……うおっと!?)

勝機は無い、と心の中で呟こうとした時に突然、リロードをして再び自分が身を乗り出そうとしていた窓枠に

銃弾が撃ち込まれた。

どうやら下から狙われたのか、と思っていたニコラスだったが実際はそうでは無いらしい。

(まさか、スナイパー……!?)


もしそうであればスナイパーに自分が狙われる可能性は非常に高くなる。

一旦ニコラスは自分の身体を倉庫の外に晒す事は止め、インカムで部下に指示を出し始める。

だが……。

「おい、チーム4!! 応答しろ、チーム4!!」

何と別同部隊として潜り込む筈だったチーム4からの返答は無い。

まさかこの状況はまずい事になっているのでは無いかとニコラスは思い、警戒しながら倉庫の外へ……。

「ぬっ!?」

出ようと思ったのだが、その瞬間銃弾が撃ち込まれて来る。相当厄介だ。

(まずい、これは墓穴を掘ったか!?)


どうやらこの倉庫の中に居ざるを得なくなったらしい。

敵の攻勢は止んで来た様だが、やっぱりスナイパーらしき人物が居る様なので

うかつに外へと出られなくなってしまった。

(くそっ、どうする……どうするっ!?)

だがそんな時に、1本の通信がインカムから聞こえて来た。

「……えっ!? 逃げた!?」

そのインカムの通信をして来たのはあの女を見張っていた隊員からであった。

何でも銃撃戦が始まってしばらくした時に、ちょっと武器のチェックで目を離した5秒程の間に

姿が見えなくなってしまっていたのだと言う。


(あーっ!! どいつもこいつも!!)

なかなか上手く行かない展開にニコラスもイライラして来ているが、それでは良くないと何とか

落ち着きを取り戻す為に深呼吸をする。

元々は自分が立てた作戦でこうなっているのだからイライラしたってしょうが無い訳で。

(と、とにかく……この状況をどう切り抜けるかだな。敵の攻勢は止んで来た。

そしてスナイパーらしき人間が狙って来ている方向は限られているみたいだ。

今俺が出ようとしていたドアと、それから俺が狙撃された窓のある方向は一緒。

となればその狙って来ている方角とは反対方向から出るしか無さそうだ)


幸いにもこの倉庫には窓が幾つもあり、当然出入り口のドアから見て奥側の壁にも窓が

備え付けられているのでそこからニコラスはまず抜け出す。

(良し……ここまでは順調だ。今度は暗視ゴーグルでどうにかしてその狙撃して来ている

奴の居場所を特定する事が先決だ。しかし下手に動くとまずいな……)

そう、下手に姿を見せればその瞬間狙撃されてしまう事はすぐに分かる。

ただでさえ今自分の部下達が港の中でそれぞれ戦っているので、その流れ弾にも当たらない様に

注意しなければいけない。

(さっきからインカムで通信を傍受している限りでは、何人かがスナイパーにやられてしまった

みたいだしな……急所を外れているみたいだが、それでもこの夜の視界で当てるとは大した物だ)


このままこの事態が長引くとすればそのスナイパーに全員がやられてしまう可能性も否定出来ない。

何としてでもこれ以上の被害が出る事は食い止めたい。

だけど下手に身動きが取れない以上、明らかに矛盾しているこの条件をどうにかして解決して

事件も解決に持ち込みたい所なので非常に難しい。

でもこのままどうしよう、どうしようとまごついているのが1番良くないので狙われる覚悟を決めて

飛び出して行こうとニコラスが踏み出しかけた……その時!!

『もう大丈夫、スナイパーは撤退させたわ』

「……えっ?」

インカムから聞き慣れない……いや、先程倉庫の中で聞いた事のある声が何故か今度は

ニコラスの耳につけられているインカムから聞こえて来た。


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