Future World Battle第12話
そのスナイパーが撤退した事で一気に戦況は警察チームが有利になり、
罠を仕掛けて来たあの強盗段の仲間達も全員逮捕されるか射殺された。
こちらの警官チームにも少し被害が出たが、被害にあった全員が何とか
軽傷で済み重傷者や死亡した者は居なかった。
「……さて、それじゃあ君の知っている事を全て教えて貰おうか」
あのまま港で聞く訳には行かなかったので、ひとまず自分の所属している
分署へと戻って任務完了の報告をしたニコラスは取調室であの時の女と
テーブル越しに向き合っていた。
「その前に、まずは君の正体からかな?」
もう逃げ場は無いからじっくり話して貰うよとニコラスが言うと、女はついに自分の
正体を明かし始めた。
しかしその正体は、ニコラスも驚くべき物であった。
「……パリ警視庁所属の刑事、ティアナ・クリューガーよ。貴方とは同業者」
それだけ言って、女は自分の持ち物であるハンドバッグから電子警察手帳と
バッジを取り出して来た。
「フランスの刑事、だと……?」
「ええそうよ。何故私みたいな女が刑事なのか、何故フランスの警官がこんな所に居るのか、
何故銀行であんな事をしたのか、何故貴方から逃げたのか、何故貴方達を助けたのか。
こうした事を聞きたくてしょうがないって顔をしているわね。良いわ、私ももうこれ以上
隠す必要も無いし、全部話すわよ。1つ1つね」
と言う訳で、彼女……ティアナが自分から言い出した順番にニコラスからの質問と言う形で
答えて行く事になった。
「じゃ、じゃあまずは……君の様な女性警官は珍しく無いし、女性刑事も大勢居る。
だけど見た感じまだ20代前半位だろう? 俺の彼女と年代が同じ位だ」
「へぇ。ちなみにその人は幾つなの?」
「20歳だ」
「そうなの。その手帳にも書いてある通り、私は今23歳。今年で24歳になるわ」
「だったら今年で33歳の俺の9つ年下か」
「結構離れてるわね。まぁ、私は警察学校を卒業してまだ時間がそんなに経っていないけど
今年も女性警官は私と同じ様にパリ警察にもそこそこ入って来たわ。まぁ、女で警察を
目指す人は私みたいに居るけど、フランス人は警察官が嫌いな人種でもあるからもし
フランスに来る事があったら気をつけた方が良いわよ。これで良い?」
「ああ、良いだろう。それじゃあ次の質問だ」
今度は何故フランスの刑事である彼女がこのアメリカに来たかと言う事。
普通、アメリカの事件はアメリカの警察官が担当するものであるから、フランスは元より他国の
警察官がむやみやたらに介入して来るものでは無い。
アクション映画等では他国の警察と協力して事件を解決すると言うシチュエーションが
良く見られる光景ではあるのだが、現実ではなかなか捜査権限等の問題でそうも簡単に行かない。
それでも彼女はこうしてアメリカのヴェハールシティにやって来た。その理由をニコラスが先に予想する。
「……次の質問なんだが、俺が先に当てて見せようか?」
「当てられるものなら別に良いわよ」
そう言われて、ニコラスは自分の予想を話し始める。
「なら当ててやろう。君はあの犯罪組織を追いかけてアメリカにやって来た。刑事となって
間も無いが、あの犯罪組織とは過去に何らかの因縁がある。だから強く頼み込んで君はこうして
あの犯罪組織を追いかけて、アメリカまでこうして海を渡ってはるばるやって来た。こんな所だろう?」
そのニコラスの予想にティアナの口元が僅かに緩む。
「へぇ、流石は同業者。なかなかの推理ね」
「君は年齢からしても新人刑事だろうからな。普通だったらまだまだ経験不足でいきなりこうして
アメリカに来られる筈も無いし、しかも1人で行動出来るだけの権限は無い筈だ。他に仲間が居る
様子も無いし、1人って言うのも俺の勝手な想像でしか無い訳だがな」
どうやらこのニコラスの予想も当たっている様だった。