Future World Battle第10話


「これは貴方達だけの問題じゃ無いわ。私にも大いに関係のある事なの」

クールな表情だが言葉は力強い響きを与えるその女。しかし、ニコラスには

まずどうしても聞かなければいけない事があった。

「その前に……君は一体何者だ? 何故こんな事を知っているんだ?」

だがその問い掛けに女は若干呆れた様な表情を見せる。

「今は時間が無いわ。私の事なら後で幾らでも話す。だから今は裏をかいて、

その待ち伏せしている部隊の元に乗り込みましょう。この人数だったら大丈夫だと思うわ」

「お、おいおい……」


未だに正体をはぐらかされながらも、女の言う事もあながち間違ってはいない。

この倉庫でもたもたして余り時間をかけ過ぎてなかなか港に警察が姿を現さないとなると、

もしかして待ち伏せに感づかれたのか? と思われてしまわれかねないからだ。

「よーし分かった。悪いが君には俺の部下を1人見張りとしてつけておく。また逃げられては

かなわないからな」

「別に私は逃げないけど」

「保険だよ、保険。俺達はこのディスプレイの画面で大体何処でどう言う感じで待ち伏せ

されているかが把握出来たから、これから逆に一網打尽にしてやる」


そう言って女を部下の1人に任せ、ニコラスは作戦通りに部下達を色々な方向の入り口から

港の中へと向かわせる事に。だが正面から突入するグループはあえて多めに残しておく。

そうする事で敵の注意を引き付けやすくなるからだ。

今現在ニコラスが引き連れている部下は30人。それ以外にも他の4つの入り口から5人ずつ、

合計で50人の部下が彼について来た事になる。

「良し、俺達がまず入って罠に引っかかり暴れ回る。その間に奇襲を仕掛けるんだ」


あのノートパソコンのディスプレイに描かれていた罠の内容は、正面入り口から侵入して来た

警察の部隊を取り囲み背後から襲い掛かると言う物であった。

だったら更にその裏をかかなければ生き残れない命がけのミッションでもある。わざわざ罠に

引っかかりに行くのだから、その罠を噛み破るしか助かる方法が無い。

「……行くぞ、全員必ず生きて会おう」

ニコラスの号令に配下の隊員達も小さく、しかし力強く返事を返した。


まずは正面ゲートから侵入し、なるべく音を立てずに港の内部をくまなく探し回る。

すると取り引き現場らしい場所がすぐに見つかった。何故ならその場所は1つの倉庫であり、

その倉庫の前には白のアストロバンや黒のベンツ等、いかにもな車が止まっている。

「あれだ。良し、手筈通りに」

ニコラスがバッと右腕を上げると、その合図に従って後ろに控えている部下達が散開して

倉庫の周りを取り囲んで行く。

それを見て、ニコラスが入り口の両開きの鉄製の扉の鍵を支給して貰ったM4ショットガンで

壊してドアを一気に開け放つ……が。

(か、空!?)


何と倉庫の中には誰も居なかった。誰かが居る筈だったのに、まさかの無人の倉庫と言う

その状況にニコラスが慌てる素振りを見せる。

そして更にそんなニコラスの背後から、沢山の足音と銃声が聞こえて来た。

「ちいいっ!!」

物凄い殺気を感じたニコラスは咄嗟に横っ飛びから転がって受け身を取り、倉庫の中へと

入り込む。だがこれは全てニコラスの作戦であった。

(どうやら上手くかかってくれた様だな!!)


この陽動作戦はただ単に敵陣の真ん中に飛び込むだけでは無い。上手くその待ち伏せに

引っかかったと見せかける為の演技力が必要になって来るのだ。

だからこそ、極限まで自然体で行く様にと部下には命令を出していたのだが上手くやってくれた様だ。

そう言うニコラス自身は演技の経験等は今まで無かった訳だが、命がけの任務であるが故に集中力が

高まって自然体に見えた演技が出来たのでは無いかと自画自賛していた。

と言っても自画自賛している余裕など今は無い。まだ敵の襲撃がこうして今現在進行形で

行われている為、ニコラスもまだまだ気が抜けない状況が続く。


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