Future World Battle第1話


時は2030年3月。アメリカの西海岸はロサンゼルスから、2400キロ東に行った所にある

15年前に現れた新興都市、ヴェハールシティ。テキサス州のコーパスクリスティから

少し離れた場所に出来た港湾都市として知られているこのシティは、当時から常に

最先端のテクノロジーを駆使した色々な生活システムがシティの売りになっている。

海岸沿いに位置しているこの街ではあるが、この15年間でロサンゼルスも舌を

巻く程の大都市に発展して来た。

しかしそれ程までの大都市になって来たのであれば、それこそ人口も増えて行く。

そうなれば必然的に善人ばかりでなく悪人もシティの中へと入って来るので、

警察組織も日夜小さな事件から大きな事件までの解決に大忙しだ。


そんなヴェハールシティ警察に所属している刑事として様々な事件の解決に

日々シティ内を奔走しているのが長い金髪を後ろで束ねたニコラス・イースデイルだ。

現在巡査部長で32歳。市警察ホープの中堅刑事として所属している彼は、

これまでに様々な事件を解決して来ている実力派だ。

そして今日もまた、彼はこの街で起こる事件を解決しに向かう。

この街の平和を守る事が出来るのは自分達警察が居るからだ、と言うプライドと共に。

しかし今回の事件は、彼が刑事になってから史上最悪の事件になると言う事を

この時のニコラスは知る由も無かったのであった。


『13番アベニューの銀行内で武装強盗団による立てこもり事件発生!! 付近の

全車両は至急現場に急行して下さい!! 繰り返します、13番アベニューの……』

(近いな……行くか)

この日も巡査部長のニコラスは、市警察のパトロールカーとして支給されている

フォードマスタングで聞いた無線を頼りに事件現場の銀行へと急行する。

13番アベニューの銀行と言えばこの街でも1,2を争う大きさの銀行として知られており、

狙われやすい場所であるのも頷ける場所であるが故に特に驚きはしなかった。

(全く、犯罪を起こしたって最後にはしっかり俺達警察に捕まるのにな。無駄な事を)

心の中でまだ見ぬ犯人達に呆れながら、ニコラスはマスタングのサイレンを鳴らしてアクセルを

踏み込んで行った。


現場は騒然としていた。数多くの警官達が辺りを右往左往し、正面玄関口においては

多数のパトカーがすでに玄関前を塞ぐ形で到着している。

特殊部隊の輸送車両のバンもある事から事態は深刻らしい。

そんな状況に、マスタングをドリフト気味に停めてから降りたニコラスも加わる事になる。

「状況を説明してくれ」

ニコラスは周りの先着部隊に状況の説明を求める。現在、この銀行には約50人の人質が

捕らわれており、その内7人は10歳以下の子供だと言う。

肝心の犯人グループの人数は防犯カメラが襲撃して来た犯人達によって壊されてしまい、

正確には分からないが多く見積もっても40人位の大部隊だと言う話だ。

「まずいな、結構な大人数か……」

ニコラスはまさかの大人数での強盗団に難しい顔をする。すでに特殊部隊の手配も済んでいるし、

突入の準備も着々と進んでいるが人質が居る以上うかつに手を出せないのもまた事実だ。


「少なくとも、子供だけでも解放して欲しいがな……くそっ」

時間帯はまだ昼時を過ぎたばかりの午後14時30分。この銀行には金以外に特に盗む物も無いので

やはり目的は金だろうと言う見方が強い。

憶測でしか要求を推測出来ないのは、その要求がそもそも犯人側から一切出ていないのだ。

犯人側からの要求が不明と言う事はこの強盗の目的が分からない。

でもやはり金しか奪える物が無いと考える以上は金目的の犯行の見方が強い。

「とにかく人質の救出が優先条件だ。何としてでも全員無事に人質を救出する事を

最優先に行動する様に伝えろ」

近くに居る警察官にそう伝えたニコラスだったが、この直後に衝撃的な展開を彼は

目の当たりにする事になってしまうのであった。


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