Run to the Another World第98話


(今の内だ!)

ロサヴェンが立ち直る前に弘樹はその部屋から出てさっさと逃げる事に。そうして逃げる途中で

弘樹はふとこんな事を考えた。

(今の奴、何かドロップキックとか柄で俺の腹をど突いたりとか変則的なテクニックも

持ってたな。この国の騎士団ってそうした体術とかテクニックも教えてるのかな? 何にせよハイレベルだったぜ)

そんなハイレベルな相手に良く勝てたなと弘樹は自分でもびっくり。基本的に自分は基本に忠実、堅実な

戦い方をレース活動でもテコンドーでも、そしてサッカーでもして来た弘樹だったが、これから先の戦いでは

さっきの様な変則的なテクニックを持っている相手にも対処出来る様にしなければいけないのかな、と考えつつ

真由美と合流する為に廊下を進んで行くのであった。


戦い始めたロサヴェンと弘樹の横を通り抜けて向かって来たロングソードのティラストに対し、真由美は

そのロングソードが振るわれる前に左ハイキックから入る。勿論ティラストもロングソードを持っている両手で

それをブロックするが、真由美はそれを見越した上で今度は右のハイキック。

だがこれは屈んで回避された。

しかしそれも真由美はうすうす予想はしていたので、今度はハイキックを空振った勢いで身体を横に

1回転させてティラストに向き直りつつ、振り下ろされるロングソードを持つ手を左手で掴んで空いている右手で

ティラストの顔面に右のパンチを入れる。

「ぐぅ!?」

一瞬怯むティラストだがまだまだこの程度では終わらない。それに真由美もそれだけの相手だと言う事を

今の動きで見抜いたので、30年以上の武術経験を持って本気で相手をする。


そのまま今度は追撃でミドルキックに持ち込みたかった真由美だったが、ティラストの方が7センチ位

背が高いのでリーチの差で負ける。その証拠にミドルキックを繰り出したもののカウンターで腹にキックを

食らわされ、真由美は廊下の地面を後ろに転がった。

「ぐっほ!」

チャンスとばかりにティラストは真由美に向かって来るが、真由美は立ち上がらずにその体勢を利用して

ブレイクダンスの要領でティラストに足払いをかける。


「ぬあ!」

ティラストは倒れ込むが真由美もまだ立ち上がっては居ない。素早くティラストは立ち上がり、真由美も

足を回しながら若干アクロバット気味に立ち上がる。そしてもう1度ロングソードを構えて真由美を

迎え撃とうとしたティラストだったが、そんなティラストの胸目掛けて真由美は全体重を乗せたドロップキックを

炸裂させるのであった。

「うぐぅっ!?」

物凄い衝撃がティラストの胸を襲うが、日々騎士団で鍛錬を積んでいる為にそこ迄のダメージも無くまた

立ち上がる事が出来た。一方の真由美は背中から落下してもきちんと受け身を取り、

跳ね起きで立ち上がりティラストに一気に接近。ロングソードはこの狭い廊下では満足に振るう事が出来ないのを

真由美はこれ迄の格闘技や映画等の知識で知っている為に、ティラストの懐に飛び込んで今度は得意分野では

無いが一応出来るパンチのラッシュでティラストに攻撃。


ティラストもそれを避けたりガードしたりするが、次に真由美はティラストの頭を掴んでムエタイやキックボクシングの

テクニックの首相撲を仕掛ける。てこの原理と背筋を利用して思いっ切りティラストの身体を下に引き下げ、

腹目掛けて右の膝をぶちかます。更にそれに続いてその叩き込んだ右足を振り上げつつ、右足の

くるぶしの部分を今度はティラストの顔面に勢いをつけてぶち当てた。

「ごはっ……」

それによって勢い良く背中から廊下の壁に叩きつけられたティラストは肩で息をしながらも何とか体勢を

立て直そうとするが、その視界に飛び込んで来た物は回し蹴りを自分に向かって繰り出す真由美の姿であった。

「ほりゃーっ!」

「ごっ!?」

左足をティラストの顔面にヒットさせ、それによってティラストを気絶させて真由美はこのバトルに幕を下ろしたのである。

その後は弘樹のバトルに加勢しようとしたが、後ろから弘樹が単独でやって来たのでどうやら弘樹のバトルも終了した様だ。

「真由美、行くぞ!」

真由美は弘樹と合流して、今度はシュヴィリスと合流をする為に窓の外に飛び出して走り出した。


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