Run to the Another World第97話


「うぐぅ!?」

「真由美っ!?」

真由美の悲鳴に振り返った弘樹が見た物は、ロサヴェンにあの時の矢の傷を

キックで攻撃されて動きを止めてしまった真由美の姿だった。

「くっ!!」

先にシュヴィリスの背中に乗った他の4人を尻目に、真由美を助けに弘樹は窓の中へ。

「お、おい弘樹と真由美が!!」

『えっ?』

しかもそれに気がつかないまま空に飛び上がってしまったシュヴィリスは、ハリドの声で

まさかのその事態に気づき顔をしかめながらも再び地上に降り立とうと一旦旋回体勢に入る。

だが、そんなシュヴィリスの背中に乗っている令次の長い髪の毛が仇となってしまう出来事が

この後に襲い掛かって来る!!


「見逃してはくれないらしいな」

「だったら如何するよ? 真由美」

「そりゃあ勿論立ち向かうだけだ」

弘樹は真由美の言葉に深く1度うなずいた。

「ああ、俺も全く同感だ。俺達も四天王の一員だぜ」

「そうだな、そのプライドは俺等にもある。だったらやるだけだ」

弘樹も足をほぐして、向かって来る2人の騎士団員を見据える。

「どっちをやる?」

「どっちでも良い」

「なら行くぞ!」

「俺等の……俺等の邪魔をするなぁぁあああああああああああっ!!」


弘樹はダッシュでロサヴェンに向かい、ティラストは真由美に任せて集中する。

しかし最初に攻撃を仕掛けて来たのはロサヴェンの方だった。

てっきり両手剣で攻撃して来るのかと思いきや、最初は右ハイキックから入り

その後に両手剣を振るう。弘樹もギリギリでかわしたが、更にロサヴェンの左回し蹴りが

襲い掛かって来て一旦弘樹も距離を取る。

だが引き下がってばかりも居られないので左回し蹴りを繰り出しながら接近し、そこから

パンチを2発繰り出すがロサヴェンは見切った後に何と柄で弘樹の腹をど突く。

「ぐお!」

しかしカウンター気味に弘樹も前蹴りを繰り出すとそれが同じ様にロサヴェンの腹に

ヒットして合い打ち状態になった。


「うぐ……」

弘樹は距離を取って一旦体勢を立て直そうとしたが、ロサヴェンは両手剣を構えて

一目散に向かって来る。思わず弘樹は立ち上がって手近な部屋に逃げ込もうとしたが

当然ロサヴェンも弘樹を追いかけてその部屋のドアの前で体当たりを

仕掛けて壁に両手剣を使って弘樹を押さえつける。

「ぬおが!」

弘樹は一瞬苦しむが、その瞬間弘樹がバーレンで体験したあの奇妙な光と音のショックが2人を襲う。

「うお!」

「うあ!?」

当然2人は驚くが、事前に体験していた弘樹の方が立ち直るのが早くてよろけたロサヴェンの腹に前蹴り。

だがロサヴェンもすぐに立ち直り弘樹に回し蹴り。


更にそこから両手剣を振るうが、咄嗟にドアを使って両手剣をガード。両開きのドアだったのが幸いして

しっかりガードする事に成功し、それにより大きな隙が出来たロサヴェンに左ハイキック。

「ぐお!」

側頭部に衝撃を受けたロサヴェンは一瞬よろめくが持ち堪え、その部屋の中央へ。

どうやらそこは研究室の1つらしかった。

「ぐっ……」

よろめきながらも体勢を立て直して両手剣を構えるロサヴェンに弘樹が近づき、ゆっくりと拳を構える。

「るりゃーっ!!」

声を出してバトル再開。出の速い手技も使い、更にテコンドー仕込みの足技も混ぜるが

ロサヴェンもかなりの猛者の様で見切っては反撃もしっかりする。


弘樹もサッカーで鍛えた動体視力やテコンドーの鍛錬を積んで来たが、今の所は五分五分だ。

「ほっ!」

左回し蹴りを繰り出した弘樹だったが、それをロサヴェンは後ろに身体を反らして回避。

その反らした上半身は後ろにあるテーブルの上に乗った。

「だりゃっ!」

そこを目掛けて弘樹は思いっ切り拳を叩き付けたが、叩き付けたのはロサヴェンの身体では無く

硬い木のテーブルだった。


「ぬあああ〜っ……!!」

素手で思いっ切り打ち付けたのでメチャクチャ痛く、ブンブンと拳を振って痛みを逃がす。

だがそれは隙にもなるので、そこにロサヴェンは回し蹴りを弘樹の顔面に叩き込み

続けて思いっ切りドロップキックをかまして来た。

「うおおあ!」

後ろへとその衝撃で弘樹は転がるが、ここで負ける訳には行かないのですぐに立ち上がって反撃。

立ち上がったばかりの弘樹にロサヴェンは追撃を掛けて来るが、それをかわしつつ弘樹は

今自分が痛い思いをしたテーブルに飛び乗る。その足元に両手剣が振るわれるものの小さく

ジャンプしてそれをかわし、高低差を利用してロサヴェンの頭目掛けてキックを放つがロサヴェンも

寸での所でガード。しかし弘樹は次にテーブルの上から側転の手を使わないバージョンの体勢で

アクロバティックに飛び降り、その動きについて来られなかったロサヴェンの顔面に右のハイキックをぶちかます。


「うごお!」

それによってぶっ飛んだロサヴェンに追撃を掛けるべく弘樹は再びテーブルの上へ。

もう1度高低差を利用して今度はテーブルの上からジャンプしつつ回し蹴りを仕掛けるがロサヴェンも

しゃがんでそれを回避。そこからロサヴェンは両手剣を振るって来たが、弘樹はその両手剣の柄を

持っている手をガードして反対にロサヴェンの腹目掛けて右のボディブロー。

「ぐお!」

そうしてフィニッシュはそのボディブローで怯んだロサヴェンの胸目掛けて右のハイキックを入れる。

それによってロサヴェンは後ろへと吹っ飛んでその後ろに存在している色々な本や薬品が仕舞い込まれている

ガラス棚に背中から突っ込んで、文字通り豪快に派手な音を立てて粉砕してしまった。

ガラスはぐちゃぐちゃ、棚はボロボロ、そして背中から突っ込んで行ったロサヴェンはうめき声を上げて

立ち上がれなくなってしまった。


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