Run to the Another World第96話


そうして調書も取り終わり、牢屋へと戻される事になってしまった一行だったが

その移動中に思いもよらない出来事が!!

「……何か、やけにうるさくないか?」

「本当だ。何かバタバタ慌ただしいな」

城内がバタバタ慌ただしくなって来ているのを見て、6人を連れていたロサヴェンと

ティラストが訝しげな表情になる。

「ティラスト、様子を見て来てくれ」

「了解」


ロサヴェンに指示を出されたティラストが様子を見に行ったが、次の瞬間

尋問室から牢屋までの間にある廊下の窓の1つから飛び込んで来た1つの影があった。

「……!?」

「えっ!?」

大きな窓を突き破って白昼堂々飛び込んで来たのは、ウェーブのかかった茶髪を

肩辺りまで伸ばして無精ヒゲを蓄えた男だった。

「何者だ、貴様っ!!」

男はそれには答えず、いきなり6人とロサヴェン目掛けて大剣を振りかざして

斬りかかって来たので咄嗟にロサヴェンも両手剣でガード。


だがその横から、両腕を縛られたままの真由美と弘樹が思いっ切り男の足と

後頭部目掛けて同時にローキックとハイキックを繰り出した事で男は前のめりに

勢い良く倒れてしまう。

「ぶぐわっ!!」

「えっ!?」

まさかの加勢に目を丸くするロサヴェンだったが、そこに様子を見に行っていたティラストが

大慌てで戻って来た。

「大変だ!! 賊と思われる侵入者がこの城に居るらしい!!」

「……それってこいつじゃないの?」

地面に倒れてハリドと岸と令次に背中に乗られている男を指差して尋ねる。

「そう……なのか?」

「しかしおかげで助かった。一体あんた達は……」


疑問を呈するティラストと感謝の意を述べるロサヴェンだったが、次の瞬間また思いも

よらない出来事が!!

「……あれ、この音は……」

岸が窓の外から聞こえて来る音に気がつき、続いて他のメンバーも気がついて行く。

「お、おいあれ!!」

「あれってまさか……!!」

岸と同じく男の上からどいたハリドと令次が窓の外に見た光景は、窓に向かって飛んで来る

青いドラゴンの姿だった。

『おおーい、無事かー!?』

「シュヴィリス!!」

そのシュヴィリスが窓の外に降り立って窓から顔を突っ込んで、上手くその牙でまずは窓の1番

近くに居る真由美と弘樹の腕のロープを切った。


自分達を裏切った訳じゃ無かったのか? と思いつつもシュヴィリスが1階の窓の外に降り立ったのを

見て、もうこの城に用は無いのでそそくさと腕を縛られたまま立ち去ろうとする6人の異世界人。

しかし、そこにロサヴェンが我に返って立ちふさがる。

「……待て、やっぱり俺の見込み違いだった様だ。御前達を逃がす訳には行かない」

抜き身の両手剣を6人の目の前にかざすロサヴェンと、倒れている男を増援の騎士団員に引き渡した

ティラストが同じくロングソードを目の前にかざして足止めする。

「ふぅん、どうやら俺達を見逃すって事はしてくれ無さそうだな」


だがその後に青いドラゴンは意味深な事を言い出す。

『まずいよ、増援がどんどん来てる! しかもまだ侵入者がいるらしいんだ!!』

「え……?」

「こいつだけじゃないの?」

明と岸はそのシュヴィリスの発言に先程のロサヴェンと同じく目を丸くする。

『うん、二刀流の剣士だった。黒い髪の毛を後ろで縛ってたよ』

「何だその侍チックな出で立ちは……」

そう呟くハリドだったが、この危機的状況は変わらない様だ。


「御前はあの時霧を起こしてくれたドラゴンだな」

「まさか人間の言葉を喋るドラゴンが居たとは。ますます貴方達を逃がす訳には

行かなくなった。大人しく観念しろ!!」

「悪いけど、俺達はまだやる事があるんだ」

「そうか、なら実力行使だ」

令次が否定の意を述べ、それならばとロサヴェンがロングソードを振り被るがそこに

弘樹が前蹴りで先制攻撃を仕掛ける。

「ぐお!」

「ちっ!」

舌打ちしてティラストも大剣を向けようとして来たが、今度は真由美がそんな彼に

超高速下段足払いを仕掛ける。

『今の内に!!』

2人が怯んでいる隙にシュヴィリスの背中に乗って脱出……しようと思ったが、その瞬間

矢で出来た真由美の傷に激痛が走った。


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