Run to the Another World第95話


「同じく昨日はお世話になりました。王国騎士団員のティラストです」

今度はあの遺跡で出会ったもう1人の騎士団員達のリーダー格的存在の、

ロングソードを腰にぶら下げた緑髪の男が6人の前に歩み出る。

「2人とも若いが腕は立つ奴だ。だが、この2人を易々と退けるとは一体

どれ程御前達が強いのか気になる所だ。……それとも、何か人に言えない様な

能力を持っているとか、あるいは協力者が居るとか……?」

ロサヴェンとティラストの紹介をしながら、凄く面白そうな物を見る顔つきでリルザが

6人に問い掛ける。


「まぁ、それは後でじっくりと聞く事にしましょうか。さて次は……副団長のお2人です」

ジェリバーに指示され、さっき牢屋から6人を連れて来た2人の男の内まずは茶髪の

若い男が前に出る。

「魔力が無い人間と出会えるとは、貴重な体験をさせて貰っているもんだ。

俺は王宮騎士団副団長のジェディスだ」

「近衛騎士団副団長のロイティン。特異体質の人間なんて初めて見る」

自己紹介をするジェディスの横からスーッと、いきなり現れたかの様なスムーズな移動を

して前に出て来たのは紹介されたもう1人の男で、ピンクっぽい赤毛が特徴だ。

「はぁー……見た感じは若いけど、それでも副団長ってだけの事はありそうだなぁ」

しげしげとそんな2人を見ている弘樹が率直な感想を漏らした。


そして最後は、自分達が潜伏していたあのシュヴィリスの別荘に乗り込んで来た黒髪のコンビだ。

「ヴィルトディン王国王宮騎士団長、エルガーだ。この男は相棒のクラデル」

「よろしく。近衛騎士団長のクラデルだ」

「まだ若いのに将軍か。良くやってるねー」

「……人材不足なんじゃね?」

そのハリドの感心した様子の言葉に対してぼそっと呟いた岸の言葉が、とんでもない事態を招いてしまう。

「おい、今何て言った?」

「え? いや別に」


いきなり態度を豹変させたクラデルに岸はしまったー……と思ったが、クラデルのテンションは下がらない。

「人材不足だと? それって俺達騎士団が弱いから俺達が抜擢されたってのか?」

「そ、そんな事……言って無いじゃん……」

「言ってるも同然なんだよ、謝れよ! 手をついて、今、ここで!!」

「まぁ落ち着け……」

「おめーもよけーな事言うなよ!」

エルガーにクラデルは抑えられ、明に岸はスパーンと平手で頭を叩かれ、一応事態は収束した様だった。

「では本題ですね。貴方達の調書をこれから取らせて貰いますよ」

ジェリバーがそう言い、6人は1人ずつ名前や年齢、何処から来たのかを言って行く羽目になった。


「地球って言う世界は聞いた事が無いですね」

「となれば、異世界の人間だと言う話はどうやら本当だった様だ」

調書を取り終わり、驚愕の表情を浮かべる国王と宰相。しかしそのやり取りには引っかかる物を感じたので

ハリドが口を出してみる。

「ちょっと良いですか?」

「はい?」

「俺達が異世界の人間だって事、知ってるんですか?」

そのハリドの疑問に、リルザはジェリバーにアゴで指示を出して彼の懐から1枚の紙を取り出して貰う。

「これがファルス帝国から伝書鳩で届いたんだ」


その手紙の内容は、ファルス帝国からの異世界人捜索の伝達であった。

「ドラゴン達と仲良くしている人間達がファルス帝国から飛び去ったから探して欲しいとな。

その飛び去ったドラゴンと一緒に居た人間達の容姿も詳細に書かれている。その内の3人は御前達だな。

岸、令次、そしてハリド!」

「ファルス帝国……って、まさか……」

「そうだ、皇帝セヴィストが軍を派遣してこちらに向かわせている筈だ。大人しくそれまではこの城に居て貰うぞ」

岸の呟きに、リルザは腕を組んでにやりといやらしい笑みを浮かべながらそう宣言した。


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