Run to the Another World第94話
真由美が怪我をしている事もあるし、何よりこの2人の男が只者では無いと
言う事は6人に想像が容易についたので大人しく捕まって城へと連行される。
もしあそこで無理に戦っても負けてしまえば同じ事だったからだ。
と言う訳で、今6人の異世界人達はヴィルトディン王国の王城ルチャード城の
地下に建設されている地下牢に纏めて収監されていた。
そこでハリドが、何故自分達がこんな事になったのかと言う予想を
スピードプロデュースの6人に聞かせていた。
「……だから、俺はシュヴィリスが裏切ったんじゃないかと思う。だって突然
画材を買うって居なくなった訳だし、俺達が捕まったタイミングが良過ぎるし」
そのハリドの予想はスピードプロデュースの5人も信じたくない物だったが、
説得力はやはりあり過ぎる。
「確かに、なぁ……」
「でももしシュヴィリスが俺達を裏切ったとしたら、何故奴はそんな事をしたんだ?」
「そこは俺にも分からない……」
納得する岸と疑問を呈する明にハリドは頭を振って答える。
「でも、俺達とシュヴィリスはこれで引き離されてしまった訳だしどうにかしてあのドラゴンと
合流しないとここでこのままの状況だぜ?」
弘樹の言う事も最もだ。シュヴィリスから渡されたアクセサリーはそれぞれ真由美が
身につけていたので没収されずに済んだのだが、このままここから出られないのは非常にまずい。
「どうにかしてここから出ないとな」
「ええ……最悪強行突破って事も考えておかないといけないですね」
真由美と令次が凄いローテンションで呟いていると、6人の耳に2つの足音が聞こえて来た。
「……誰か来る」
ハリドがいち早くその足音に気がつき、やって来る足音に対して6人は思わず身構える。
そうして牢屋の前にやって来たのは、あの遺跡で出会った騎士団員2人でも自分達を
連行して来たあの2人でも無い、また違う騎士団員2人だった。
「出ろ。御前達にはこれから尋問室へ移動して貰い、取り調べを受けて貰うぞ」
2人の内、赤髪の騎士団員が冷静な口調で6人に命じる。
「さぁ、早く出て下さい。妙な真似はしない事ですね」
その相棒と思わしき茶髪の騎士団員は何処か尊大な口調で6人を牢から出す。
こうして6人は後ろ手にロープで手を縛られ、尋問室へと連れて行かれる事になった。
その尋問室は6人全員が入れる広さの部屋であり、そこに待ち受けていたのは朝シュヴィリスの
別荘に乗り込んで来たあの2人の男達、それから自分達の邪魔をしようとして来たあの遺跡で
出会った騎士団員2人、そして……。
「ようこそ我がヴィルトディン王国へ。余が国王のリルザだ」
「私は宰相のジェリバーです。魔力を持たない人間達よ、初めまして」
その国のトップに立つ2人も、尋問室で特異体質の人間達を待っていたのであった。
「さて……大体の事情は聞いている。君たちはどうやら体内に魔力を持っていない人間の様だ。
そんな人間はこの世界中で何処を探しても見た事が無い。詳しく聞かせて貰おうか?」
一体何を詳しく聞かせれば良いんだろう、と6人が考えを一致させていると、その前にこんな話が
宰相のジェリバーから飛んで来た。
「その前にこの者達の身元をご紹介しておきましょう。まず彼がヴィルトディン王国騎士団員のロイティンです」
最初にそう紹介されたのが、あの最初の遺跡で出会った茶髪の男だった。
「昨日はどうも。おかげで霧と言う貴重な体験をさせて貰ったよ」
口は笑っているが目は全然笑っていないその表情に、明らかに怒りの色が見て取れた。
この6人をあの時逃がしてしまった事に責任を感じていたが故に、今こうしてもう1度
出会えた事に若干の嬉しさを感じているともその表情から読み取れなくは無かったが。