Run to the Another World第93話


翌朝、異世界人6人が起きてみるとシュヴィリスが居なくなっていた。

テーブルの上には彼が書いたメモが残されており、そこには

『ちょっと画材が足りなくなったので買いに行って来る。すぐ戻る』

と書かれていた。

なのでそのまま彼が帰って来るまで待つ事にしたのであったが、この

別荘の入り口のドアが開いて中に入って来た人物は彼では無かった。

「なっ、何だ御前等!?」

「そのまま全員動くなっ!!」


いきなりドカドカと荒々しく別荘に入って来たのは、このヴィルトディン王国の

騎士団の制服を着込んだ黒髪の男だった。その男はかなりの大柄な体躯で、

身長187センチの令次と比較してもまだ背が高い。190センチはあるだろう。

それに加えて胸板も厚いし、何よりもその背中に背負われているハルバードが

彼の使う武器であろう事はすぐに分かった。

しかも彼は1人でここにやって来たのでは無く、もう1人の黒髪の男とその部下であろう

兵士達を引き連れて総勢およそ30人位で押しかけて来た。

「おっ、おい何だよ!?」

「こりゃあ何の騒ぎだ!?」


ハリドの驚き様に続いて真由美も明もいきなりの出来事に呆然とするしか無い。

「……この人間達でどうやら間違い無い様だな」

そんな6人の驚き様を何処か冷めた目で見ながら、同じく黒い制服を着込んでいる

もう1人の黒髪の男が呟いた。

身長は令次程高くは無いが、それでも183センチ位はあると思う。プラスして

もう1人の黒髪の男はロングソードを腰に帯びており、2人とも軍服の胸元には

一目見ただけで分かる様な豪華な金色の大きな勲章がぶら下がっていた。

それ以外にも軍服には大小様々な光り輝く勲章が沢山取り付けられているし、仕立ての

良さそうな黒いマントからもこの2人がただの軍人では無さそうだと言う事が容易に分かる。


だけど自分達が何故こんな状況になっているのかと言う事だけは、きっちりとこの男達には

説明して貰わなければいけないので、まずはそれを問いただそうと令次が口を開く。

「あんた等は一体何だ、騒々しい。俺達に一体何の用で……」

しかし令次が最後までセリフを言い切る前に、容赦無くロングソードの男が腰から

白い閃光を走らせてそのロングソードを引き抜いて令次の首筋に寸分の狂いも無く突きつける。

「……!?」

「何の用だと? とぼけられては困る。御前達がここに潜伏しているとの密告があったのだ。

あの遺跡でドラゴンと仲良くしていた人間だな。それも、この世界では有り得ない魔力を

持たない人間だ。すでにファルス帝国からも幾らか軍が向かって来ている。御前達の身柄は

私達の監視の元、城で拘束させて貰う」

「それと、ここは狭いからドラゴンを呼び寄せようとしてもまともに戦えないだろうよ? さぁ、観念して

俺達と一緒に城まで来て貰うぜ!!」


ここで戦う事も出来ない訳では無さそうだが、戦ってもし勝つ事が出来たとしても

ヴィルトディン王国騎士団に追われる事は目に見えている。プラス、この情報を

垂れ込んだと言う人物の事を知る事も必要だし、シュヴィリスがまだ戻って来ていないので

どうにかして彼と合流しなければいけないのだ。

しかし、そこで刑事のハリドがある事に気がついた。

(でも、よくよく考えてみるとまだシュヴィリスが戻って来て無いと言う事は…まさか)

そのまさかであって欲しくは無いが、今の状況的にそう考えるのが自然だと言う結論に達するのが

最も早い考えであった。

(シュヴィリスが、俺達を裏切った……!!)


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