Run to the Another World第92話


「良し、これで俺等全員終了だ。あんたの事も教えてくれるんだろ?」

弘樹と真由美も自己紹介をして6人の異世界人達の自己紹介が

改めて終了し、ふと思い出したかの様に弘樹が言った。

『そう言えばそうだったね。でも本当、物好きだね?』

「実を言えばドラゴンの事は俺よりも、この2人が凄い気になってる筈だから」

そう言いつつ弘樹は明と岸を差した。

『……分かった。なら僕も改めて自己紹介させて貰うとしようかね。

僕の名前はシュヴィリス。3276歳。職業は前も言ったけど画家をやっている。

活動する拠点はバーレン皇国が中心だけど、こっちにこうして別荘も持っているから

ここを拠点にする事も多いよ。性格は余り外に出ないタイプ』

「あー、引きこもりだ」


何処か納得した様に呟く岸だったが、その呟きは他のメンバー達にも当人の

シュヴィリスにも華麗にスルーされる!

『で、余りにも外に出ない生活だから灰色のドラゴンが僕の事を心配する様に

なっちゃってさぁ。こっちはただ単に落ち着いて絵を描いていたいから集中する為に

部屋に篭っているだけの話なのに』

そう言いながら、シュヴィリスはそばのテーブルの上に置いてあった1本の絵筆を手に取った。

それを見た真由美がベッドに横たわりながら質問する。

「何で御前は画家になろうと思ったんだ?」


その質問に、シュヴィリスは『あー……』と呟きながら答える。

『一言で言えば、世の中の移り変わりを自分の目と脳で記憶するのには限界があるからさ。

でもそれを何か長く保存出来る方法で残す事が出来れば、世の中の移り変わって行く様を

後の世に伝える事も出来るだろ? だから僕が生きている間は世の中の移り変わりを絵で

残して行く事で、少しでも僕が死んだ後の時代の手助けになれば良いと思ったんだ』

絵筆を指でクルクルと回しながら自分が画家になった理由を伝えて行くシュヴィリスだが、

そこに弘樹が一言。

「でも、そうだとしたらよっぽど長い時代の絵を後世に残す事が出来るかも知れねぇな。

3200年以上も生きてるんだったらそれこそ長い時代を生き抜いて来たんだろ? あんた等

伝説のドラゴン達はどれ位の年月を生きるんだっけ? 5000年位か?」


その疑問にシュヴィリスは首を横に振る。

『違うよ、どんなに長くてもその2倍が限度かな。先代の青いのは確か7600歳位で

死んじゃったから僕がそこまで生きていられるかと言われればその保障は無いけど、それ位じゃ

無いのかな、僕等ドラゴンの平均寿命って。最も……僕等と違う普通のドラゴンはもうちょっと

短くて、3000年位しか生きられないけどね』

「それでも俺達人間から見てみれば途方も無い数字だな。俺達人間は向こうの世界だと大体

男が80歳位、女が75歳位だ。最も国や地域ごとにまた違って来る訳だから一概には言えないけど」

ハリドが心底ドラゴンの寿命に驚いている口調で、シュヴィリスに自分達地球人の平均寿命の話をする。


こうして異世界人6人の話も終わり、伝説の青いドラゴンの自己紹介も改めてして貰った所で

もう1つのアクセサリーである青いマントも渡して貰ってから今日はもう寝る事にする。

気がかりなのはあのもう1つの遺跡で出会ったあの騎士団の連中だが、シュヴィリス曰く

あそこからならどんなに馬を飛ばそうとも絶対に2日はここ王都までかかるらしい。

「と言う事は、あの騎士団員達はあそこの近くに居た部隊って事になるんですかね?」

「多分そうだろ。それじゃお休み」

余っている食料をそれぞれ腹に収め、令次のそんな予想に岸が答えてヘルヴァナールの夜は更けて行った。

まさか夜が明けた時に、自分達に思いもよらない展開が待ち受けている事をこの時は誰も知る事が無いままに。


Run to the Another World第93話へ

HPGサイドへ戻る