Run to the Another World第9話


「あー、何か色々あったな、バタバタしてたな、マジで」

「そうそう……目まぐるしい環境の変化に身体がついていかないぜ」

岸のぼやきに連が同意する。割り当てられた部屋は4つで、それぞれ岸と連と令次、

洋子と和美、グレイルと永治とハリド、哲と周二と流斗と言う事になった。

「ですが、あの声の目的は一体何なんでしょうね。どうして俺達をこの世界に

呼び寄せたのか……その目的は盾を届けさせる事だけとは到底思えないんですよ、俺は」


その令次の言葉に、2人もやっぱりかと言う様な目で彼を見る。

「やっぱり令次もそう思う? 僕も怪しいと感じてたんだ。だって狙われる可能性が高いって

言ってたし、何かこう……上手く言えないけど、もっと巨大な陰謀みたいな物がありそうな気がする」

「それに加えてドラゴンに会えだなんて。もしあの声の通りならこの状況はまずいんじゃないか?」

3人の間に沈黙が流れた。

「……どうする?」

「と言われてもな。まずはそのドラゴンの住処とやらを見つけないと、このミッションは達成出来ないぜ」

「ええ。それに波動が何とやらと言ってましたし、それも気になりますね」

「何だろうな、チームがどうのこうのって言ってなかったっけか……」

どうすればそのドラゴンに会えるんだろうか。リアンはドラゴンの事に関しては機密事項と言う事で

教えてくれなかったので、この帝国の連中を頼る事は出来なさそうだ。しかもドラゴン「達」と声は

言っていたので、出会わなければいけないのはどうやら1体だけでは無いと言う事になりそうだ。

そうしてしばし悩んだ末、3人はある行動を起こす事にした。


「私達も早くこのミッションを終わらせたいと思っていたから、その案自体には賛成なんだけど……」

3人は和美達やハリド達、それから流斗達も呼び寄せて

11人で見張りの兵士にばれない様に作戦会議をする事を提案。

そして3人が出した提案は、「ここを脱走してドラゴンを探そう」と言う物であった。

しかし、洋子は余り良い顔をしない。

「……けど?」

「脱走したのがばれたら、私達お尋ね者になっちゃうわよ? それでもし捕まった時の

リスクを考えたら、連れ戻されて結局大きなタイムロスになって取り返しがつかなくなる可能性だってあるわ」


それに続いて今度はハリドが口を開く。

「ああ。それに地の利は明らかに向こうが有利だ。俺達には地図があるとは言え、

馬も何も無いからな。移動手段も限られるだろう」

確かに洋子とハリドの言う事ももっともである。だけどここでまごまごしていたら、

そのドラゴンの手がかりは掴めないままいたずらに時間が過ぎてしまうだけだ。

このままここに居ても……と頭を悩ませる11人。

取り合えずこの世界に来てまだ1日目。時間はたっぷりあると言っても過言では無いが、

これからあの盾をこの城から取り戻してそれからドラゴンを探して……となると、意外と時間は

無いとも言える。しかもあの声の話し方によれば、どうやらドラゴンは他の国にも居るらしく

早々にドラゴンに会いに行かなければならないと言う事になる。それは異世界のメンバー全てが

同じ思いだったが、かと言って武器も使えない状況でいきなり放り出されるのはきつい。

「……俺だって、本当は岸さんや連さんと同じ気持ちですよ。元の世界に帰る事の出来る

可能性があるのならドラゴン探したり、あいつ等追いかけに行ってみたいです……」

令次が心底残念そうに10人に呟く。


そんな令次を見つつ、今度はグレイルが口を開く。

「そのドラゴンの事について機密事項なのはわからないでもないな。

国民の不安を煽る事にもなりかねないだろう。でも国の機密事項って

事になっているんだったら、この城の何処かにあってもおかしく無い」

「……でもここにあると言う保証も無い」

周二が冷静な意見を述べるが、まごまごしてても始まらない。


「取り合えず探せるだけ探してみるか。理由なんて幾らでも付けられる」

「へ? 如何言う事?」

周二の言葉に流斗が素っ頓狂な声を上げる。

「この世界の事をもっと知りたいとか、そんな理由でも良いだろう。

とにかくこの城の中を調べてみよう」

「すげー事言うね、御前さん。なら俺は図書館とかそう言う所が良いと思う」

文字が読めればの話だけどな、と最後に流斗は付け加えた。


「だけどやるなら絶対に見つからない様にしないと。それと怪しまれない様に」

「後は何の気無しに、この城の中にある建物の事を聞いてみるとかな」

岸の言葉に哲が付け加え、作戦開始となった。1日だけで色々な事があったが、

時間は止まってくれないし戻ってもくれない。今出来るのなら、今出来るだけの事をやる。

「今は襲撃事件があったばかりでピリピリしてるだろうから、警備も厳しそうだ。

明日起きてからの方が良いと思うけど、時間が無いな。朝飯食ったらすぐ行動しよう。

俺達は襲撃とは無関係だけど、見張られてる事に変わりも無い。そこで何人かずつにチームを分けようと思う」

ハリドが提案したのは分担作戦であった。

「なるべく自然体で、怪しまれない様にしないとな」

「それと、図書館とかの資料も集める事が出来れば良いから、そっちの方のチームも必要だと思うわ」

和美が1つのプランを提案し、分担したチームとしては3チーム。

まずはこの城からどうやって脱出するかと言う事を調べるチームでハリド、令次、岸、連。

資料を探すチームで和美、永治、流斗、洋子。

そして哲、周二、グレイルのチームは城の内部を調べるチームと言う事になった。


Run to the Another World第10話へ

HPGサイドへ戻る