Run to the Another World第10話


翌朝。このヘルヴァナールに来て初めての朝。まずは哲、周二、グレイルのチームで

城の内部を調べる事に。しかし、部屋から出て気分転換に歩いて来ると見張りの兵士に言うと、

どうやらルザロやシャラードから部屋で待機してて貰う様にとの通告らしく出す訳には行かないとの

事で足止めを食らってしまう。

「参ったぜ。これじゃあ全ての事が出来やしない」

とりあえずはリアンとラシェンが呼びに来るとの事なのでそれまで作戦をもう1度確認する事に。

「ここでしくじったらあいつ等の手がかりも、地球への手がかりも全て掴めなくなる」

そして最悪の事態に備えて実力行使を用意する事も話し合った。かなり危険な賭けの作戦でもある。

そして朝食の後にそれぞれの行動の許可を貰い、城の中は見学と言う目的で調べ、

それから図書館は勉強の目的で。最後に当事者として関係があるだろうと言う理由付けで事件の事を

出来る限り調べる事になったのであった。


朝食を終え、哲と周二とグレイルは城の中を見学する事に。

鍛錬場の他にも当然幾つもの施設があり、軽く1000人は入る事が

出来るであろう食堂、それから魔術の研究を行っている施設もあれば

だだっ広い中庭、治療の為の医務室、王族に近い地位を持つ貴族達が

住んでいる地区や地下の宝物庫、それから王城の敷地内には

騎士団の宿舎等も存在していた。

ただし、将軍や副将軍クラスである最初に自己紹介してもらった

ルザロやシャラード等は、基本的にはセヴィストやカルソンの警護もかねて

王城の中に執務室があり、そこで勤務しているのである。


「色々あるんだな……」

「ああ。何か新宿のビル街とかとはまた違ったもんだ」

「まぁ用途も違うからな」

3人はそれぞれ思い思いの感想を漏らす。と言っても余り見て回れる所も無かったのでこうして

この3人のミッションは終了した。だが、まだ他のチームのミッションは終わってない様なので、

3人は鍛錬場で基礎トレーニングをさせて貰う事になった。騎士団員は付き添いのリアンと

ラシェン以外誰も居ない。朝の訓練は終わったとの事で、3人が自由に使える状況だ。

「よっしゃ、まずはストレッチからだ」

グレイルの指示で3人はそれぞれ身体をほぐし始める。この3人の中で最も強いのは

格闘技経験が今年で全て合わせて37年になる41歳のグレイルである。

足を180度ゆっくり開いたり、2人1組で背中を伸ばしたりして黙々と身体を温める。


それを見ていた騎士団長の2人が哲に声をかける。

「昨日も私達の横で何かされていましたよね。毎日身体を鍛えてらっしゃるんですか?」

「え? ああ、はい。俺達は。仕事の都合で毎日は無理って奴もメンバーの中には居ますけど。

3人とも結構精神力を使う仕事をするから、精神鍛錬も兼ねてやってます。

後年取ると体力も落ちるから、体力維持も目的ですし」

元々格闘技に興味の無かった哲も、他のメンバーである恵や和人に感化されて格闘技を始めたクチである。

彼が格闘技を始めたのは13年前の2001年、30歳の時。世間一般で見れば十分に遅いスタートだ。

走り屋としての弟子である和人が合気道を、それから走り屋としての目標だった恵がキックボクシングを

やっているのを見て、2つの格闘技をいっぺんにやってみたいと思ったがこの2つの格闘技を同時に

教えているジムはなかなか見つからず、またレースチームでメカニックをしている事もあって2つのジムに

同時に通うのは無理だと判断。


そこで見つけたのが、キックボクシングに投げ技と極め技や絞め技等の立ち関節技を

プラスする形で生み出されたシュートボクシングのジムであった。

1985年に発足したまだ新しい部類のこの格闘技は、いっぺんに打撃と

間接、投げ技が習えると言う事で哲にはピッタリの格闘技だった。

そしてシュートボクシングを始めた事によって動体視力や体力の維持にも

役立つ様になり、未だに自分でもサーキットを走る時はその成果を実感している。


哲の階級は体重が68キロなのでスーパーウェルター級。

元々は4ドアセダンのチーム「CATZ」のリーダーだった哲は、格闘技を始める

3年前にメンバーから裏切られ、チームから追放されたのをきっかけに

その悔しさを全てバネにして走り屋人生に打ち込んで来た。その元々のチーム

「CATZ」は今はもう解散してしまったが、首都高以外でも

自分は活躍出来るんだぞと言う事を見せ付けチームメンバーを見返す為に、

首都高の走り屋を引退して今度はシュートボクシングに全てを打ち込んでいる。


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