Run to the Another World第11話


そんな3人の基礎トレーニングが鍛錬場で続いている頃、2つ目のチームである

和美、永治、流斗、洋子の4人はミアフィンとテトティスに案内してもらって城の図書館で

調べ物をしていた。調べ物をする際に肝心だったのが文字の問題だったのだが、いざ本を

読もうとすると最初は訳のわからない文字が書いてあったのにスッとその文字が日本語に

なって読める様になるのだ。

「何かいかにもご都合主義って奴よね」

そう洋子が呟いたのは言うまでも無い。


ともかく文字が読める様になっているのは異世界人チームとしては大助かりなので、主にこの

世界の地理に関係した文献を片っ端から調べてみる事にした。だが、一向に調べてもあの声が

言っていたドラゴンの手がかりになりそうな文献を見つける事は出来ない……。

やはりリアンが言っていた通り、ドラゴンの事はトップシークレット扱いになっているらしい。

「どうだ、何か見つかったか?」

「こっちは収穫無しよ。流斗達は?」

「俺達の方も駄目だな」

「私も見つからないわ……」


4人は引き続き手分けして文献を集める。と、その時洋子が気になるドアを1枚見つけた。

「あら?」

そのドアの前には立ち入りを制限するロープが張られており、

ロープにぶら下げられた札には「禁書庫」と書かれていた。

(……怪しい……)

職場とかだと「スタッフオンリー」等の看板で関係者以外の立ち入りを

禁止している所があるが、この禁書庫もそう言った類の物らしい。

だが、この事をミアフィンやテトティスに言った所で中に入れてはくれないだろう。

だけどドラゴンの事を調べるのであれば、ここも調べておく必要はありそうだ。


まず洋子は書物を他のメンバーに見せる振りをして、こそこそと小声で

禁書庫のドアの事を3人に1人ずつ間を置いて伝える。

「確かに気になるわね」

「だけど、俺達4人で行ったら怪しまれるだろうよ」

「良し、なら俺と和美であいつ等の注意を引き付ける」

永治は1冊の本を持ってミアフィンとテトティスの元へ。

「すまないが、この文字が俺読めなくて。何て書いてあるんだ?」

「えっとこれはですねー……」


更に永治が文字を読んでもらっているすぐ横で、大量の本を抱えた

和美がわざとバランスを崩して床に大量の本をぶちまける。

「うわっ!! あーあ、やっちゃった……」

急いで本を拾い集める和美と、それをほぼ反射的に手伝う永治とミアフィンとテトティス。

そして一方では流斗が職員に本の場所を聞き、監視の目を完全に無くした所で素早く洋子が禁書庫のドアへ。

鍵が掛かっているかもと懸念したが、意外や意外、そのドアは呆気無くするりと開いてしまった。

(あれ、無用心ねえ……)

この国のセキュリティって大丈夫なのかな? と洋子は思いつつもドアの先に現れた階段をダッシュで下りて行く。

そして階段を下り切ると、そこには黒光りする重そうなドアが。中からは人の気配は感じられない。


「……でやあっ!」

階段を下りた勢いそのままで前蹴りを繰り出し、ドアを蹴り開ける洋子……の筈だったが、引き戸の為に足がジーンとなる。

「oh……!」

気を取り直して禁書庫へと入り、中をさっさと見てみる。

意外とその禁書庫は狭く、これなら資料もすぐ見つかりそうだと思っていたらやはりあった。

(あった……これかしら!)

表紙には「竜の歴史と生態」とあり、3巻とあったので何冊かに分かれている様だ。取り合えずその周辺の同じ題名の本を

幾つか見繕い、長居は無用とばかりに図書館へと戻る。図書館へと戻った洋子はすぐにその辺りの本を幾つか手に取り、

禁書庫で手に入れた本を間に挟む様にして3人と合流。

「どう、見つかった?」

「ええ、バッチリ。でもすぐに出て行くと怪しまれるから、もう少しだけ居ましょう」

「わかった」

その後、世界地図等が載っている本を幾つか手に取って残りは部屋で読むとミアフィンとテトティスに報告して部屋に戻った4人。

「これがその禁書庫から持って来た本ね」

「確かにドラゴンの事が書いてありそうだ。早速読もう」

「何か少しでも手掛かりになる物があれば良いけど」

「無かったら私達が困るわ」


4人でドラゴンの事について書かれている本を読むと、色々な事が分かって来た。

人間だけが種族では無く、他にも魔物で色々な種族が居るらしいとの事。それから一部の竜については知能が

発達している為に人間の言葉を話す事が出来るのだと言う事が分かった。

「色々あるのねぇ……」

「魔物も居るって完全にファンタジーじゃん」

「それでも、俺達は行かないと。あいつ等が教えてくれないんじゃあ、自分達で行動するしかないでしょうよ」

「もしあの声の言う事が出任せだったらそれで良いわ。でも、本当だったらドラゴンに会わなきゃ私達は地球に帰れない!」

とにかく、今自分達に出来る事は資料を集めたから出来る限りこの資料の情報を頭に叩き込んだり、備え付けの羽ペンと

紙を使って書き留めて置く事だけだった。


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