Run to the Another World第83話


「ここにドラゴンが居るって話を聞いてな。怪しいのは御前達だ。

俺達と一緒に城まで来て貰うとしよう」

「はい?」

騎士団員達を率いるリーダー格らしい茶髪の男が発した突拍子も

無い言葉に、思わず間の抜けた声を岸があげる。

「いやあの、状況がまるで飲み込めないんだけど」

「何で俺達が城に行かなきゃいけないんだよ? それ説明してくれないと俺等は行かねぇからな?」

弘樹と真由美が若干イライラした口調でそう答えるが、そんな4人の元に

もう1人……緑髪の男が茶髪の男と同じく黒い軍服を着込んで歩み出て来た。


「貴方達と一緒に青いドラゴンが居たと言う情報が多くもたらされていましてね。しかもその

ドラゴンにもたれかかる様にして貴方達は寝ていたそうじゃないですか。

普通、ドラゴンがそこまで人間と仲良くすると言う事は有り得ない事なのです。

本来ドラゴンは気性が荒い肉食の生物ですし、人間にとっての天敵とも言える

でしょうか……。ですから、そのドラゴンをどうやって手なずけたのかと言う事を私達は

知りたいが為にここまでやって来ました」

物腰が柔らかそうだがその口調は有無を言わせないと言う力強いその男。しかし、今ここで

シュヴィリスの事をばらすと何だかまずい事になりそうな気がしてしょうがない。


「ドラゴン? 何の事だよ? 俺達がドラゴンと一緒に居ただと?」

「そーだよ、そんなの人違いかも知れないだろ。僕等がドラゴンと一緒に居るんだったら、この辺り

一帯をくまなく探し回ってみなよ」

明と岸はシラを切り通す作戦に出たが、そんな2人に茶髪の男が呆れた様子で口を開く。

「ドラゴンは空を飛ぶ事も出来るから、御前達が指示を出してドラゴンを一旦何処かに飛んで行かせておいて、

俺達が帰った後で合流するつもりだろう。それに御前達のその格好はこの辺りいたちでは見かけない様な

珍しい物だな。それと……何故御前達には魔力が存在していないのだ?」

「…………!!」

「何言ってるんだよ……」

何とか平静を保とうとする明と岸だったが、目が泳いだのは紛れも無い事実だった。


そんな2人の様子を見て、そこに弘樹と真由美が割って入った。

「おいおいおい、ちょっと待てよ。魔力が無い人間なんてこの世界に他にも居る筈だろ?」

「そうだ。人間は時としてびっくりする位の特異体質の奴が生まれて来る事だってあるだろうに」

もっともらしい事を言い出す弘樹と真由美だったが、それに対して口を開いたのは緑髪の男だった。

「それはありえませんよ」

「は?」

「この世界の人間……いや、この世界の生物が多かれ少なかれ必ず魔力を持っていると言う事は

子供でも知っている事です。だからこそ、魔力を持たない人間と言う物は私達は見た事がありません。

非常に興味がありますし、それに……」

そこまで言って、懐からガサゴソと男は1枚の紙を取り出した。


「この紙に書かれている文章が、貴方達を私達が探していた証拠です」

「何ですか、それは?」

何時の間にか後ろから出て来ていた令次が、目を丸くしてその紙を見つめる。

「これはファルス帝国から伝書鳩を使って送り込まれて来た通達文です。この文書によれば、

大きな灰色のドラゴンと白いドラゴンが魔力を持たない人間達を引き連れてアーエリヴァ帝国方面へ

飛んで行ったと書いてあります。ですが、念の為にこちらにもこの通達文が送られて来ました」

「そして、今俺達の目の前に居る人間も色は違えど大きなドラゴンと仲が良さそうだし、魔力を持たない

人間でもある。それと……その眼鏡の男に黒の長い髪の男、後ろの金髪の男はこの通達文の手紙に

書いてある服装や特徴と一致するんだ。さぁ、これでこちらからの理由付けは終わった。その他の人間も

全員纏めて一緒に王都クリストールのルチャード城まで来て貰う!!」


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