Run to the Another World第82話


「昼間に俺達が王都に向かった時には、確かに厳重な警備体制でした。

しかし今はもうすでに日が沈みかけています。人間は夜の時間帯が気は緩み易いですし、

あの王都が眠らない場所でもない限り警備体制にも隙は出て来る筈です。それに

夜が生み出す暗闇ともなれば俺達の姿もある程度近付いていかないと見えませんでしょうから、

逆に考えれば今から王都の別荘に向かった方が良いんじゃないですかね?」

「……それもそうか」

その理論を展開する令次の横で、アゴに手を当て真由美が考え込む素振りを見せる。


しかし、人間の姿に戻ったシュヴィリスが呆れた口調で令次の意見を真っ向から否定した。

『考え方は良いんだけどさぁ、僕の話聞いてた? 戦争があったんだよ? しかも戦争が

終わってからそんなに時間が経ってないんだよ? 昼夜を問わずに警備体制が強化

されたんだし、入るのが難しい事位分かるでしょ?』

「ああ……」

そう言われてみるとシュヴィリスの言う事にも一利無いとも言えない。

「まぁまぁ……とにかく、王都に行ってみれば分かるんじゃないか? 話はそれからでも

遅くは無いだろ?」


その岸の一言で会話が終了し、一同はまず目の前のシュヴィリスの別荘に入る。

中はクモの巣やホコリ等が到る所にあり、朽ち果てていると言っても過言では無かった。

「うわっ、きったな〜い!!」

「15年も帰ってなきゃこうなるよなぁ」

率直な感想を岸と明が漏らし、別荘の中をくまなく探し回った結果シュヴィリスがアクセサリーを持って

6人の異世界人の元へとやって来た。

『はいこれ』

「これがあんたのアクセサリーか」


シュヴィリスが差し出して来た物は青いスカーフだった。

「だったら真由美、落とさない様につけててくれないか?」

「俺が? まぁ構わないけどよ」

受け取った明が真由美にそう言うが、いざ真由美がそのスカーフを身につけようとした時だった。

「……何か表の方が騒がしくないか?」

「え?」

別荘の外の異変に気がついた弘樹に気がついた岸も一緒になって窓の外を見てみると、そこには

信じられない光景が広がっていた。

「ええっ、何だありゃあ!?」


その2人の異変に気がついた他の異世界人達とシュヴィリスも窓の外を見てみると、窓の外には

何時の間にか大量の馬とその馬の持ち主であろう完全武装をした人間達がこの別荘を包囲

していたのであった。

「うわっ、何だよこいつ等!?」

「お、おい……シュヴィリス、こりゃあ一体……」

明も驚きを隠せない上に、呆然とした口調でハリドがシュヴィリスに問い掛けるとそのシュヴィリスは

この謎の集団の正体を口にした。


『……騎士団だ』

「騎士団?」

思わず聞き返す令次に、シュヴィリスが訳が分からないと言った顔つきで頷く。

『そうだよ、間違い無い。これはこのヴィルトディン王国騎士団だ。でも何でこんな場所を包囲しているんだ?

ここは僕の別荘なのに、何で……?』

とにもかくにもこの状況は別荘の外に居る当事者達にしか分からない事であるので、意を決して6人と

ドラゴンは別荘の外へと出て行く。


「おーい、あんた等一体何なんだよ、この騒ぎは?」

1番最初に別荘の外に出た岸が一同に問い掛けるが、その瞬間まさに問答無用とばかりに

一斉に武器を構えて臨戦態勢を騎士団員達が取る。

「えっ、ちょっと待……!!」

「な、何なんだよ一体!?」

同じ様な事を明も騎士団員達に問い掛けるものの、相変わらず構えた武器を下ろそうとしない騎士団員達。

「ざっと見積もっても300人は居るって話だぜ……」

呆然とした口調で真由美が呟くと、ようやく当事者達の中から2人の男が姿を現わす。

しかし、そこで一同は驚愕の事実を知る事になってしまうのであった!!


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