Run to the Another World第81話
ヴィルトディン王国へとドラゴンの輸送手段を使って辿り着いたスピードプロデュースの
5人とハリドはまず1つ目の遺跡になっているシュヴィリスの別荘へ向かう事にする。
何故かと言えば、この国に向かっている途中にとんでもない事をシュヴィリスが言い出したからであった。
「2つの内、1つのアクセサリーはあの王都の中にあるって事か」
「で、この国の王都ってあれか?」
『ああ、そうだよ』
6人とドラゴンの視線の先には、高い城壁に囲まれている街の先にそびえ立つ大きな城の存在があった。
あそこがどうやらヴィルトディンの王都クリストールであるらしい。
しかしながら、今街に入るのは危険な様だ。
「と言っても何だか物々しい雰囲気だぜ。何かあったのかな?」
「やけに警備が頑丈と言うか」
明と岸がそんな事をポツリと漏らすと、傍で聞いていたシュヴィリスがこんな事を話してくれた。
『ここは半年前位からあんな感じだよ。さっきも言ったけど隣のエスヴェテレスって国と戦争が
半年前に起こって、その戦争自体はすぐに終結したんだけれどもそれ以降はやっぱり警備体制も強化されたらしいよ」
「戦争ね……警備体制がそこ迄強化されたんなら、当然入り口で検問とかやってたりするのか? ここは王都なんだろ?」
真由美の問い掛けにシュヴィリスもうなずく。
『ああ。身体検査は勿論されるし、この国に来た理由も問われるし持ち物検査もされるし。
2ヶ月前に絵を描く為にこの王都に来た時には、それ位の事をされたから……』
「そうか。なら正面突破は危険そうだな」
弘樹も腕を組んで王都の入り口を遠くから見つめる。
その様子を傍らで見ていたハリドがこんな事を言い出した。
「だったら、先にもう1つの遺跡に行ってみたらどうだ? 今この王都に入る事が出来ないなら
ただ時間を無駄にするだけだし、もう1つの遺跡で先にアクセサリーを回収しちまう方が効率的だろ?」
「あ、ナイスアイディア」
「だったらそれで行きましょう」
明が指を鳴らしてその意見に賛同し、令次も納得してまずは王都を離れてそのもう1つの遺跡へ向かう事になった。
とは言え修羅場が続いたので流石にメンバー達も限界が近い。と言う事で一旦遺跡に行ったら休憩する事にした。
「その遺跡って何処にあるんだ?」
『もう少し西の方だった筈だ。何せ帰るのも15年ぶり位だしな、こっち側の別荘は。王都の方は良く行くけど』
遺跡の主であるシュヴィリスが何だか曖昧な返事をする。
そうして飛び続けているとシュヴィリスが高度を下げ始める。
『見えたぞ、あれだ』
高度を下げると、そこは一見遺跡には見えない様なボロボロの普通の一軒屋であった。
「へ? あれってただの民家じゃないの?」
岸が最もな疑問を口にするが、シュヴィリスがその質問に答える。
『だから別荘なんでしょ』
「あ、そうだね……」
その民家もとい遺跡の前に降り立つ一同。
「よっし、少し休憩しようか」
その弘樹の意見で、この遺跡の周りで一同は休息を取る事に。食事を摂った後に各自睡眠に入り、
ドラゴンも元の姿のまま寝息を立てて眠る。やはりドラゴンも睡眠をとらなければいけないのだ。
人間6人の何人かはドラゴンの身体を枕代わりにして眠るものも居たが、その理由は割と気持ち良いからと言う物らしい。
そうしてある程度の睡眠を取った6人だったが、気がついてみればすでに日は沈みかけている。
「……って、やべぇ!!」
1番最初に目覚めたハリドが素早く反応し、急いでスピードプロデュースのメンバー達とドラゴンを
文字通り叩き起こして行く。
「でーっ!! 寝過ごした!!」
「うわまずい!!」
明と弘樹が凄くびっくりした口調で目覚めるが、そこに冷静沈着な令次が一言。
「……でも、考えて見れば好都合ですね、これは」
「えっ?」
令次がいきなりそんな事を言い出した理由とは、この先の事を見越した物であった。