Run to the Another World第80話


更にさっきのお返しで左ハイキックをラルソンの右側頭部に食らわせ、そこから跳び膝蹴りで追い討ちをかけようとした

博人の横からジアルが重いキックを放って来て文字通り空中で叩き落とされてしまう。

「ぐほっ……!!」

地面に叩きつけられたがさっきのセルフォンの背中の時と同じく低い位置から落ちたのが幸いし、立ち上がる事が

出来た博人の腹に今度はラルソンの左キックが入る。

「ぐっ!」

怯んだ博人に対してラルソンは追い討ちをかけようとしたが、それをジアルが彼の肩を掴んでストップさせる。

「俺に任せろ」

ジアルがまた槍を振り回して来たので博人は前に転がってその槍をかわし、器械体操仕込みの強靭な足のバネで

そこから後ろにバック宙してジアルの頭に足を振り下ろした。

「がっ!?」


頭に博人の足がクリーンヒットしてどさっと地面にうつ伏せに倒れ込んだジアルを見たラルソンは、まだ体勢を

立て直し切れていない博人が完全に立ち上がって来る前にタックルを仕掛けて素早く転ばせる。

「ぐう!」

その間に元兵士部隊の隊長であったジアルも体勢を立て直して再び向かって来る。博人はなるべくどちらかと

密着するようにして、迂闊に武器を振り回せばどちらかもう一方が巻き添えになる様に仕向けて戦う。

案の定、ジアルになるべく密着する様に戦う博人に迂闊にロングソードで攻撃を繰り出せないラルソンと、

密着して来られては槍もロングソードも上手く使えないジアルに板挟みにされつつ戦っているのだ。

上手く攻撃を受け流してブロックし、ちょっと食らいつつも博人は後ろから攻撃をして来るラルソンを後ろ蹴りで

腹を蹴ってぶっ飛ばし、前に居る槍を持っているジアルの攻撃をブロックしてからそのジアルの右腕を左腕で挟み、

攻撃出来ない様にしてから空いている右腕で全力の肘落としを彼の頭に入れた。


「ぐお!!」

怯んだジアルに今度は膝蹴りを入れ、後ろから立ち直って来たラルソンに向けて突き飛ばして2人を纏めて

ミドルキックでぶっ飛ばす。

「うぐぅ……」

ラルソンは倒れ込んだがジアルは何とか持ち堪える。博人はそんなジアルに接近して右の肘を頭に何度も

何発も気絶する迄ジアルの頭に落とし続けるのであった。

「がっ!」

どさっと倒れ込んだジアルを見てラルソンが再び向かって来たが、今度は自分からラルソンの腹目掛けて

飛び込みつつ腹に膝蹴り。更に頭を掴んでから3発膝蹴りを入れ、3発目でラルソンが後ろによろけた所に

器械体操の応用で捻り回転蹴りを右足で彼の側頭部へ。

「ぐふっ!」


その衝撃で思わず地面に四つん這いになったラルソンの背中に、博人は再びそこから空中捻り回転膝落としで

このバトルにフィニッシュを決めた。

「博人が!」

『分かっている!!』

大塚の声にセルフォンが反応し、風速45メートルはあろうかと言う突風の魔法を屋上の兵士達に

浴びせて兵士達が怯んだ所で博人に接近する。

それを見た博人は素早く近付いて来たセルフォンの背中に飛び乗り、一同は空へと飛び上がって行った。



「絶対にその魔力が無い人物達を探し出して下さい。私達も他の国とは伝書鷹で

連絡を取り合いますので、目撃情報等の続報があればすぐに伝書鷹で報告致します」

謁見の間でリュシュターが、口調は落ち着いているが怒りのオーラが存分に発揮された状態で

玉座に座っていた。それを片膝を地面につきながら見上げるジアル、ラルソン、ローレン、ジャックスの

4人は物凄い威圧感を感じざるを得なかった。

「私達は帝都の警備と他の国からの連絡伝達係だ。それから王宮騎士団はその謎の人物達を

追い掛けて世界中に進軍。兵士部隊はその補佐だ。我がイディリーク帝国騎士団の名に掛けて

絶対に何としても捕まえるのだ。良いな!」

「「「はっ!!」」」

ジアル、ラルソン、ジャックスは声を揃えてローレンに返事と敬礼をして、

各自部隊の編成に取り掛かって行った。


モールティは謁見の間を出て行く騎士団員達の背中を見つめつつ考える。

(魔力が感じられない人間……そんな存在は初めて聞いた。だがもしそうだとしたら

その侵入者達の身体から魔力が感じられなかったと言うのも納得は出来る。となれば

目撃情報は結構簡単に集まりそうだ。待っていろよ、異世界人……イディリーク帝国

騎士団を敵に回すとどうなるか、たっぷり思い知るが良い)

城に侵入して来た奴等は絶対に逃がさない、とモールティはこの時自分のその心に固く誓う。

その為にもまずは、自分達の役目である情報伝達の係もしっかりこなさなければいけないと言う

気持ちを強く持たなければいけないと考えるのであった。



Run to the Another World イディリーク帝国編 完


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