Run to the Another World第8話


それで、問題は誰と誰が戦うのかと言う事になるのだが。

「そうだな……それではルザロに行って貰うとしよう」

「はっ」

帝国騎士団の中でもエリートの存在と言われている精鋭騎士団の

団長を若くして務めているルザロ・ファラウスにその白羽の矢が立った。

対する地球人チームからはと言うと……。

「それじゃあ……その2色の髪の毛の……グレイルだったか」

「え、俺ですか?」

「ああ、やってみてくれ」

まさか自分が指名されると思っていなかったグレイルはきょとんとした顔つきに

なりながらも、皇帝陛下の頼みなら断れないと言う事で前へ出る。


こうしてグレイルとルザロがそれぞれ向かい合う形になり、審判はラシェンが勤める。

「手合わせと言えば手合わせだが、そっちも本気で来いよ?」

「ほう? なら遠慮は要らないと言う事だな」

挑発的なグレイルの発言に、ルザロは口元に薄く笑みを浮かべつつ腰のロングソードを抜いた。

対するグレイルは上着を着たままカンフーの様なしなやかなポーズで構えを取り、両者の間に

緊迫した空気が流れる。

「では、始めっ!!」

ラシェンの合図と共に、まずはルザロがロングソードを振り被ってグレイルに向かう。

グレイルはそんなルザロに対して上着を脱ぎ、振り回してルザロの斬撃を避ける。

そのまま間合いを詰めて行き、上着を投げつけて一瞬ルザロの動きを止めてその隙に一気に

ルザロの懐へと飛び込む。こうなれば幾らリーチの差があったとしても、ロングソードなら取り回しが

利き難くなるので必ずしも武器が有利とは言えなくなる。


「くっ! ほっ!」

ルザロが懸命にロングソードを振り回して来るが、それを習得したムエタイの技術と接近戦で

両手で受け止め、勢い余ったルザロが自分に背を向けた所で後ろからぎゅっと羽交い絞めにする。

「ぐ、ぐぐ……!!」

「おらあああ!」

絶対に離すまいと力を込めるグレイルだが、ルザロは渾身の力を込めてその拘束を振りほどいて

再びロングソードを振るうもまたグレイルの両手にギリギリでブロックされる。

そして左腕でルザロのロングソードを持つ右手首を掴み、右の二の腕でルザロの首を押さえ付けて

前へと押し込んで行く。

「ぬうおおおおお!!」


ザザザザと2人の両足が土の地面の上を滑って行くが、ルザロも踏ん張ってその勢いを止めようとする。

だが勢いがつきすぎたグレイルにそのまま押し倒され、マウントポジションを取られた。

「らぁ、おら、うらあ!!」

ロングソードを持っているルザロの右手を左手で押さえ付けつつ、マウントポジションから右手で何度もルザロを殴りつける。

手が物凄く痛くなるが、それでも今まで人を殴って来た事は何回もあるのでこれ位の事は全然我慢出来るグレイルは

痛みを我慢して殴り続ける。しかしルザロもやられっ放しでは無く、グレイルの右手を空いている左手で受け止めて力任せに

逆にマウントポジションを取ろうとする。

「ぬぐううう!!」

ルザロは起き上がりかけて来るので、グレイルは力を振り絞って何とか自分とルザロ2人が上手いポジションで立ち上がる

方向に試合の展開を持って行く。

今度はそのままルザロの首を両腕で抱え込み、ムエタイ名物の首相撲に持ち込んで行く。

てこの原理を利用して肘を支点にルザロの首を押さえ込み、思いっ切り鎧をつけたままの

ルザロの腹に右膝を叩き込む。


「ぐっ……?」

しかし余りルザロは痛みを感じていない様である。だがそんな事はお構い無しに何度も

何度も両膝を叩き付けて行けば、余り痛みを感じて無くてもそれはチリも積もれば

山となるの精神でルザロの顔が苦痛に歪んで行く。

「あが、おがぁ!?」

グレイルはそこから更に10発膝を叩き込み、首を押さえたまま飛び上がって両膝を

揃えた状態で思いっ切りルザロの腹をど突く。そこから今度は一旦ルザロの身体を

突き飛ばし、腹への衝撃から立ち直り切れていないルザロの胸目掛けて全力のドロップキック。

「がはぁ!」

倒れこんだルザロは胸を抑えて悶絶するも、そこに立ち上がったグレイルは追い討ちの連続ローキックを

5発ルザロの脇腹に。

「ぐぅ……」


胸と脇腹を片手ずつそれぞれで押さえてうめくルザロは仰向けになり、それをチャンスと見たグレイルは

最後に思いっ切り足のバネを使ってジャンプし、そこから今度は両膝を抱えて上から膝をルザロの腹に落とす。

「ぐふっ……」

「そこまでっ!!」

その衝撃で試合続行不可能と判断されてラシェンから試合終了の声が掛かる。まだ倒れている

ルザロを見下ろし、グレイルはホッと息を吐いてそんな将軍を介抱した。

「大丈夫か?」

「ああ、俺はまだまだ大丈夫だが、勝負は御前の勝ちだ」

「一応、俺達はこう言う事をやっています。それでここの許可なんですけれども……」

「ああ、構わない。だが見張りはつけさせてもらうぞ」

セヴィストが11人に条件付きで使用しても良い事を告げ、その日はもう色々と疲れたので部屋で休む事にした。


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