Run to the Another World第74話
と言う訳で、男が纏っていたマントを外してそれを使って男を縛り上げ、博人が男の口を塞ぎつつ
栗山と岩村が担ぎ上げて、洋子と大塚が通路の先がクリアになっているかをチェックする。
「ん……ダメね、見張りが先の扉の両側に1人ずつ居るわ」
「なら洋子と大塚にそいつ等は頼むぜ」
その博人の指示に従って、それぞれの技を駆使して見張りを気絶させて進む。
こう言うステルスミッションでは隠密行動が常識中の常識だ。
そのまま兵士を気絶させながら城内を進んで行くと、地下1階に続く階段が現れた。
それを見てジェイノリーが一言。
「どうやら宝物庫らしいな……」
螺旋階段になっており、ここから下りて行けば恐らくは地下の宝物庫に辿り着く事が出来るのであろう。
「おい、この先にバングルがあるのか? 首を振って答えろ」
博人が男に詰問すると、ゆっくりと男は首を縦に振った。
「だ、そうだ。だけど油断禁物だぜ」
「分かってるさ……」
「ああ。でも見張りが居る可能性が高い。慎重にな」
宝物庫共なれば、絶対に見張りが居るだろうと言う予想は簡単につく物である。
しかし、岩村はそこでとある事実に気が付いて疑問の声を上げる。
「おかしい……」
「えっ?」
岩村の呟きに思わず彼の方を見る他の5人とセルフォン。
「それって如何言う事?」
洋子が尋ねると、岩村はアゴに指を当てて考える。
「ここ迄は確かに順調に来たんだが……何か、妙に城内の警備が薄いと言うか……
簡単過ぎて張り合いが無いと言うか、手応えが無いと言うか。仮に皇帝が住んでいる城であれば、
ここ迄来るのにこんなに簡単には行かない気もするのだがな。上手く行き過ぎてて逆に不安になって来た」
そう言われてみれば……と他の5人も考える。
「ああ、確かに上手く行き過ぎてる。でも夜だから結構油断しているのもあるんじゃないか?」
「そうだと良いけどな」
「とにかくこの階段を下り切れば宝物庫に続いている筈なんだし、今は行くしか無いわよ」
「こっちには人質も居るしな」
「とか言っている内にもう階段が終わろうとしているぜ」
5人は階段を下りながらそんな話をしていたので、目の前には地下1階の通路が見えていた。
「……どうだ?」
「兵士が居るな……」
壁の陰から通路の先を栗山が窺うと、やはりここにも兵士が居る。
ここは迅速に兵士を気絶させるしか無さそうだ。
「少し距離があるな……だったら!」
栗山はそう呟いて、博人の上着を借りて通路に向かって投げ捨てる。
そうするとそれに気がついた兵士が、歩いて一同の方に近寄って来るのが見えた。
「1人来た……良し、大塚と博人に奥の奴を任せるぜ」
役割を分担して円滑にミッションを進めて行きたい所なので、ここで身軽な
動きを得意とする大塚と博人に白羽の矢が立つ事になった。
「ふっ!!」
栗山が素早く近寄って来た兵士を倒すと同時に、大塚と博人がもう1人の
兵士の下へと駆け寄って行く。
ここは走るのが速かった大塚がまず兵士に飛び掛かって押さえつけ、次に博人が
喉にチョップを強く叩き込んで何とか気絶させる事に成功した。
「ふ〜〜〜、危なかった……」
「そっちの通路はどうだ?」
「いや……こっちの通路は誰も居ないな。と言うよりも牢屋が沢山だ」
今2人の兵士が見張っていた通路の先はどうやら地下牢になっているらしい。
となれば、この扉の先が……。
「開くか……?」
「うーん、ダメだ。……あ、そいつ等鍵を持ってないか?」
「お、これだな」
兵士の1人の腰についている、2本の鍵を纏めている輪っかを取り外してその内の1本で
扉の鍵を開ける。そうして中に入ると、そこは……。
「おおー!」
「あれかな?」
「そうらしいな」
5人の目の前に現れた物は大量の財宝と、その財宝の更に奥に厳重に保管されている
セルフォンの持ち物のアクセサリーであるバングルだった。