Run to the Another World第72話


「俺達はこの辺りに来るのは初めてなんだが、バーサークグラップルと聞けば分かるか?」

赤髪の男の問いかけに、今度は槍の男が反応した。

「……ああ、確か世界を股にかける傭兵集団だったな。色々な所で功績を残して

いるのは聞いている。今回はこの6人を捕まえてくれたと言う事か」

「そうだ。俺達も一緒に城まで行くから、こいつ等を捕まえてくれ!!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

どんどん話が変な方向に進んで行く状況に耐えられなくなった洋子が声をあげる。

「傭兵とかは分からないけど、逆に……私達がやったって言う証拠でもあるの?」


しかし、オレンジ頭の男は冷静な口調で問いかける。

「逆に聞こう。貴様等がやっていないと言う証拠を出せ」

「え、そ、それは……」

確かに遺跡の入り口でこの傭兵集団のメンバーを倒し敵に縛り付けたのは事実なので、

思わずその先を言う事が出来ずに洋子は口ごもってしまう。

「答えられないと言う事はますます確定した様なもんだな。おい御前達、こいつ等を捕らえろ!!」

「ちっきしょおおおおおっ!!」

そのまま、1つだけ自分達の無実を証明出来る重大な証拠があるのに、それを今のこの

切羽詰まった状況下の中で思い出す事も出来ずに騎士団員達に捕らえられてしまった6人。


そしてふと見てみるとセルフォンの姿が無い。

「……あれ、セルフォンは?」

「そう言えば居ない……え、まさか逃げたの!?」

「くっそおおおおおおっ!!」

ジェイノリーの疑問に洋子も気がつき、2度目の咆哮を博人が上げた。

「バーサークの皆さんにも城までとりあえず来て頂きますよ、良いですね?」

「ああ、勿論だ」

こうして、遺跡の中で思いもよらぬ形で冤罪をかけられる事になってしまった6人の

異世界人達は城に連行される事になってしまったのであった。



「……はぁ……」

「溜め息つくなよ……気持ちは分かるけどさ」

そうしてあの転送装置を使って一瞬でイディリーク帝国の帝都の城までやって来た6人の

異世界人達は一旦牢屋へと入れられ、これから尋問される事になってしまった。

「セルフォンは姿を消してしまうし、俺達は冤罪をかけられるし、あの真犯人達は今頃

賞賛を浴びているのかな……?」

溜め息をつく博人、そんな博人に声をかける大塚、そして遠い目をする岩村。

「…………」

そんな中でジェイノリーは黙ったまま何かを考え込んでいた。

「どうしたのジェイノリー?」

「何か、引っかかるんだ」

「引っかかる?」


意味深な事を言い出したジェイノリーに栗山が疑問の声を上げた。

「ああ、セルフォンって捕まっていないんだよな? 捕まらない様に逃げたとしたら、一体

何の目的があってあの遺跡から居なくなったんだろうってずっと考えていた。あの遺跡に

なっている別荘に置いてあるって言うアクセサリーを回収する前にあの変な奴等と戦う事に

なったんだから、もしかしたらアクセサリーを回収する為に一旦隙を突いて逃げて何処かに

隠れたのかもしれないな」

「でもなー、そうだとしても俺達見捨てられちまったんじゃねぇの?」

ジェイノリーの淡々とした冷静な分析に、博人が諦めの感情の入った声でぼやいた。


そんな時、牢屋に向かってやって来る足音に6人が起き上がる。

「誰か来るわね」

「ああ……誰だ?」

だが、その近付いて来る足音の主は意外な人物だった。

『……皆、無事か?』

「せっ……」

「セルフォン!?」

『しっ! 静かに!!』

何と、牢屋の前にやって来たのは人間の姿のセルフォンだった!!


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