Run to the Another World第70話


最深部のドアの向こうには、ざっと見る限りで大体30人程の武装した人間達が居た。

どいつもみんな黒ずくめの人間で男女関係無い。

「何だ御前等は? どうやってここに入った?」

その中のリーダー格らしき赤い髪の毛の剣士が、グルグルと自分の愛用のロングソードを

回しながら6人とセルフォンの元へと歩み寄って来る。

「俺等はここに忘れ物を取りに来たんだよ。御前等こそ何なんだ? それにさっき沢山

人が倒れてただろ、あいつ等は一体誰なんだよ?」

そう博人が赤髪の男に問いかけると、彼は口で答えずにロングソードを博人に向ける。


すると次の瞬間、とんでもない事が起こった。

「……!?」

何とそのロングソードの刀身が一瞬にして炎に包まれ、燃え盛る武器と化した。

「何にせよ、俺達がここに居たと言う事実を知る者には消えて貰わねーとな。ここに来た

自分達の迂闊さを呪うんだなっ!!」

そう言いつつ突っ込んで来た赤い髪の男だったが、その横から思いっ切りドロップキックを

傭兵の栗山祐二が彼の側頭部にぶちかました。

「そっちこそ迂闊だった様だな」

「ぐっ……やっちまええええっ!!」


頭を抑えて悶絶する剣士がそう声を張り上げ、一気に最深部のこの部屋は

バトルフィールドと化す。セルフォンがここで変身してしまうと天井に背が届いてしまうので

彼は仕方無く腰にぶら下げていたロングソードを引き抜いて応戦する。

『某の別荘で、よくもやりたい放題してくれたものだな……』

呆れた口調で呟きながら、向かって来る敵をその風属性の如く速い剣裁きで斬り伏せる。

その他にも強大な魔力から繰り出される風の魔法を使おうとしたのだが、この混戦状態では

異世界人達を巻き込んでしまう危険性があると踏んで今は使う事を止めていた。


そうしながらセルフォンが人間の姿で戦っている頃、部屋の中ではまだまだ謎の集団とのバトルが続けられていた。

その中で寄せ集めサーティンデビルズのリーダーである小野田博人も喧嘩戦法を駆使して頑張って戦っていた。

「らっ、だっ!」

向かってくる敵の顔面に頭突き、喉目掛けてパンチ、ドロップキック、ジャイアントスイングで他の敵を巻き込みながら

投げると言う様なえぐい技も荒っぽい技も何でもありだった。

だってこれは格闘技の大会では無い。なのでルールなんて無用なのだ。その為にはこっちだって大勢の武装した敵に

対抗する為に他のメンバーに元の姿で頑張って貰うし、自分だって死ぬ気でやらなければいけないのである。

「ぬおりゃあ!」

向かって来た敵にタックルをかましてぶっ飛ばし、更にその先に居る赤髪の男に掴み掛かって思いっ切り膝蹴り。


「ぐっ!?」

博人に蹴り飛ばされた赤髪の男は燃え盛るロングソードを持っている。そのロングソードが振られる前に懐に

飛び込んだ博人は思いっ切り前蹴りを食らわして更に回し蹴りも繰り出すが、回し蹴りをくぐった赤髪の男は

何と博人の身体をグイッと持ち上げて、思いっ切りそのまま地面に叩き付けた。

「ぐおぅ!?」

叩き付けられた衝撃が結構強く、博人は自分の戦いのペースが乱れてしまう。

男は更にロングソードを振り下ろして来るが、これは転がって博人も回避して立ち上がってから男を見据える。

「らっ、らっ!」

男に2発右のキックを繰り出すが、男は何と防御をせずに身体で受け止める。それに何だか博人の足にも衝撃が伝わって来た。

(か、硬い!)

ボディを蹴っても余りダメージが無い様だ。もしかしたら男はこの周りで戦っている他の敵達とは一線を画しているのでは無いだろうか?

「のやろぉ!」

バシバシとキックを放ち、更にパンチも入れるが男は平気そうである。

「らっ!」

続いて放った右のパンチは男の左手に掴まれ、思いっ切りさっきのお返しとばかりに前蹴りで博人は吹っ飛ばされた。


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