Run to the Another World第69話


「おい……あれって入れるのか?」

「いやー、結構厳しそうだぞ」

ドラゴンの背中に乗って6人はもう1つの遺跡の前に辿り着いたが、目の前には

駐屯地となっているテントが幾つも上だけ見えるのでなかなか入るだけでも難しそうである。

セルフォンが自分の背中に乗る前にもう1度話してくれたのだが、こっちの

遺跡はまだ見つかってからそんなに時間が経っていないらしく、帝国の

兵士部隊によって駐屯地が作られて調査に当たっているのだ。


しかも、ファルス帝国等と同じでこのイディリーク帝国だけで無く他の国にも

転送装置が作られているらしく、この遺跡の駐屯地から帝都や

他の町に行く事の出来る転送装置があるらしいのだ。

とは言っても、緊急事態の時だけしか使えないと言う事らしいのでその辺りは不明確。

憶測でしか物を言えない状況だ。

「転送装置があるとすれば、下手に騒ぎを起こせばすぐ帝都から軍が飛んで来るな」


冷静なジェイノリーがどう行動するかを考え、そう予想を立てる。

「ああ……。遺跡の入り口は目の前なのに、入れないのが辛い所だぜ」

横でそれを聞いていた栗山が苦々しい表情になる。

地図で見てみるとこの遺跡は国内の右側にある森の中に存在しており、ドラゴンの

姿のままでは降下しても遺跡には近付けないので仕方無くその手前で降下し、

そこから10分程歩いてここ迄やって来た。

が、駐屯地がある為に迂闊に近づく事も出来なければ入る事は到底無理だ。


「どうするかな……」

岩村がアゴに手を当てて考えるが、横からこんな意見を大塚が出して来た。

「んー、誰かが気を逸らすとか?」

「それは良いけど、こんな大人数だと怪しまれそうだぜ」

博人は若干否定的な意見だ。しかしここで立ち止まって居てもどうしようも無い。

どうするか……と考えて一同が出した結論はこんな物になった。

駐屯地迄は実を言えば少し距離があるので、そこから増援がやって来る前に

飛竜に会ってしまえば良いと言う事になる。結論を言えば強行突破であった。

なので手早く遺跡の前に居る見張りの兵士を倒し、そいつが目を覚ます前に兵士の服を

脱がせて近くの木に縛り上げ、口も兵士達が持っていた布で塞いでおく。

そうして6人とセルフォンは遺跡の中へと足早に進んで行く。


……筈だったが、最初に洋子が異変に気がついた。

「さっきから思ってたんだけど……やけに静かね?」

「ああ……これが普通なのか?」

洋子のぼやきに大塚も同意する。

こっちの遺跡は見張りが居たせいで外からでは内部の事情は分からなかったのだが、駐屯地であれば

もっと兵士でざわめいていても不思議では無い。


そしてこの後、一同は衝撃的な光景を目撃する事になる!!

とにかく実際に遺跡の前に進んで行くと、そこには多数の兵士が息絶えて倒れ込んでいた。

「な……!?」

「う、うお!?」

「えっ、えっ!?」

博人、岩村、ジェイノリーも驚かない訳が無い。この状況は明らかにおかしい。

そしてさっき見張りをしていた兵士達とは服装が違うのも気になる所だった。

『ダメだ、もう死んでる』

「こっちもだ、息が無い……」

「こいつもそうだ。恐らくここの奴等は皆……」

医者のセルフォン、大塚、ジェイノリーがそれぞれ安否を確認するが、既にこの駐屯地は

無残に襲われた後だった様だ。

「とにかく中に入ってみようぜ。何か分かるかも知れねぇ」

「ああ、そうだな」

博人の提案に岩村も同意して、一同は遺跡の中へ。


遺跡の中はさっきのもう1つの遺跡と違い、風も無ければ人気も無いやけに静かな内部環境であった。

「内部も不気味な程静まってるな」

「ああ。嫌な予感がするぜ」

大塚と博人のそんな会話も岩の壁に吸い込まれて行く。

広さで言えば1つ目の遺跡と変わり無く、こっちも最深部に辿り着くのに1階層下りるだけで済んだのであった。

『んー、やっぱり人の気配がしないな』

「分かるのか?」

この遺跡となっている別荘の持ち主であるセルフォンの発言に、冷静な岩村が食いついた。

『ああ、竜族はそう言った気配とか感覚においては人間よりも遥かに優れているからな。だから某もそれは同じだ。

この先には人間の気配がする。けど……』

「けど何だ?」

先を急かす様な岩村の問い掛けに、セルフォンはとんでもない発言を。


『結構な数の人間が居る。恐らくさっきの見張りの奴等と同じ類かもしれない』

「本当か!?」

博人が今度はセルフォンに食いついて来る。

『ああ。だから警戒して進んだ方が良いと思う。危なくなったら何時でも逃げられる様にしろ』

「分かった、それならそうやって進むだけだ」

セルフォンの言葉を信じて、一同は目の前に現れた大きな扉の奥へと進んで行った。


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